バツイチレズビアン母は息子にカミングアウトがしたい
(注)この記事は、中止が発表された「アカルク文学部」応募の為に書きました。情報をきちんと追えていなかったため、書き上げて投稿しようとした瞬間に、既に中止になっていたことを知りました。
今回はこの作品で応募はできませんが、いつかの次回の為にこの作品を取っておくこともしたくなく、執筆の趣旨をここに記載しておきます。
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いきなりですが、私はバツイチで子持ちでレズビアンです。
女性を恋愛・性的欲求を対象とするレズビアンとひとくくりに言っても、そのライフスタイルはさまざまです。
バリバリと音がしそうなキャリアウーマンから、パートナーと暮らしていて専業主婦的な役割をしている方とか、もちろん学生さんとか…でも既婚者って人もいるし、私のように母ビアンもいるわけです。最近は同性同士のカップルで子供を作る選択をする人たちも増えてきているみたいですしね。
そんなビアン界でも多様性がある中で、私の「バツイチ子持ちレズビアン」っていう肩書きは、結構キャッチーで気に入っています。
男性との子供を産んだレズビアンに対して、業界ではややほんのり風当たりを感じるような気もしないでもないですが、気のせいってことにしてます。
「生活の最小コミュニティ=家族」でいいんじゃないの?
私には2人の男の子の子どもと、少し遠いところに住んでいる、同性パートナーがいます。私にとっての現在の核家族は、私を含めてこの4人です。
子供たちは、彼女と私の関係を知りません。でも、今のところそれを伝えるつもりはありません。子供たちは彼女のことが大好きで、なんなら私が彼女のことを好きなのよりも好きなんじゃないかってくらい、彼女のことが好きなようで。
元ダンには気の毒な話ですが、この4人でどこかに出かけているときの方が家族らしいし、子供たちがイキイキとしている。笑顔が絶えなくて、楽しいことがたくさん待ってる。
だからと言って、現段階で言葉に出して「家族に~♪なろ~うよ~♪」と某有名俳優バリに形づくっちゃおうとすると、それはそれでかえってイビツな形になりそうで、少なからずそれは今やることじゃないって思ってます。
4人でキャンプに行ったり、旅行に行ったり、スシローに行ったり、公園に行ったり、次男と彼女が一緒にお風呂に入ったり、私が仕事している横で彼女と次男が遊んでたり、次男が寝た後で長男がお茶会を提案してきて3人でお茶を飲みながらYouTubeを観て笑ったり。
なんか、そういう、生活を共にするときの空気感によっては、法律とかそういうの抜きにして「家族」って思っちゃっていいんじゃないのって思ってしまいます。
彼女は一緒に住んでるわけじゃないし、月に数回ウチで過ごすだけだけど、どれくらいの長さ一緒にいるかとか、そういうのもどうでもいい。結局はメンバーそれぞれがどれだけ楽しく過ごしてるか、自然といられてるか、協力しようって思えるか、そこが大事なんじゃないかなって。
私はちょっと変わったものが好き。誰にも真似できないような、どこにも売ってないような、ここにしかないものが好き。
だから、ウチはウチって、この自由な感じがすごく気に入ってます。お父さんがいて、お母さんがいて、とかでもなく、お母さんがふたりいて、とかでもなく、それぞれがどういった肩書なのかはあまり関係なく。ウチにしかない空気感が楽しいし、おもしろいかなって思っています。
子供にカミングアウトするかどうか
そんな風に、楽しく過ごしている我が家。
それでも、カミングアウト出来たら楽になるのかな、とか考えることもあります。「これを家族って呼んでもいいんじゃないの」っていう考えを、私だけでなく子供たちにも共有したいと思ってしまうわけです。
だけど、子供たちはどう思うか、何を感じるか、真実を知った後どのようにその真実を受け止めて生きていくのか…彼らが周りに自分の家族の事をどう説明するか、周囲の人たちはそれをどのように感じるのか。彼らの人生にもきっと何らかの影響を与えると思うと、そう簡単に口にできるものでもないというね。
小学校高学年の長男は、私と元ダンの離婚の話を知った時こう言いました。
「パパとママの人生やから、好きにしたらいいと思うよ。二人の話やし、僕が口を挟むことじゃないしな。二人とも、人生第2章スタートって感じで、いいんちゃう?」
そんな風にサラリと言ってくれました。当時小学校4年生でした。
長男の事を赤ちゃんの頃から良く知る私の親友は、「母親のセクシャリティを受け止めるどころか、まったく気にしない可能性を秘めた子」と言いますが、こればかりは言ってみないとわからないのでね…。
次男はまだ小さく、「ママと結婚する」とか「彼女ちゃんと結婚する」とか言ってるくらいなので、いずれにしてもよく理解はできないのかなぁ。
プレカミングアウト:長男にカマをかけてみた
4人で過ごす頻度は以前よりも増え、最近LGBTQ団体の活動のお手伝いを始めたりもして、その場に子供を連れていくことも考えられるので、子供に知れるのは時間の問題か…。
いざカミングアウトをすることになった時のために、子供たちがLGBTQを受け入れられる理解を身に着けさせておきたいと考えています。
そんなことを考えている中で、一度長男がLGBTQに対してどういった考えを持っているのか、探ってみることにしました。
私「この間、足立区の区議会委員さんが、同性愛者に結婚の権利を与えたら足立区が滅びるって言うた人がおるんやけど、その発言に関してどう思う?」
長男「おじいちゃんやから考え方が古いんちゃう?男と女でしか結婚できひんとか、そんなんおかしいやろ。好きなのは同じやねんから」
ほぉ。なかなか柔軟な考えを持っているようです。
私「ほな、もし長男くんのクラスの男の子の友達が、「僕男の子が好きやねん」って言ってきたらどう思う?」
長男「へー。そうなんやって言う。まぁ、そういう人もおるからなぁ」
なるほど。身近な人が同性愛者だったとしても、特に問題がなさそうだ。
私「ほなさぁ、長男くんのパパが女性になりたいねんって言うてきたらどない思う?」
長男「せやろなって思う」
実はうちの元ダンはわりと女装をするのが好きで、部屋にこもってはガチでメイクをすることが多かったです。見せてはもらえなかったけど、服装までレディースを着て写真に撮ったりしていたようなんですね…彼がどういったセクシャリティなのかは結局最後までわからずじまいでしたが。
そんなパパの姿を見ていたから、「パパは女性になりたい」と言い出しても、長男は驚かないということなんでしょう。しかも、パパが女性になることに関してもネガティブなイメージがなさそうです。
よし、これはいける…コイツはなかなか理解があるぞ。最後にドキドキながら聞いてみました。
私「じゃあ、やで。ママが女の人と結婚する言うたらどうする?」
聞いてしまった。どうしよう、「それは嫌やなぁ」って言われたら。単純にショック。パパが女性になるのは良くても、ママが女性と結婚するのはNGって言われたら…。
長男「彼女ちゃんのこと?」
えっ…。なぜその名前を。お主は何も知らぬはずだろうが。動揺していることを悟られてはならんと、平静を装う母。
私「ほな彼女ちゃんと結婚するて言うたらどないするん」
長男「車持ってるから、いいよ!」
車…?私と彼女が結婚して良いかどうかの判断材料そこ!?性別のところスルー!?ちゃんと話聞いてた!?
友達が同性愛者でも、父親が女性になったとしても問題なさそうという情報からいけば母が女性と結婚することもさほど問題とはしなさそうであると推測できるはずですが、我がごととなると途端にドキドキするもんです。
いつか「家族」と呼んでもらえる日のために
人間って欲深いなといつも思うのですが、ひとつの願いが実現するともう一段階上の願いが叶って欲しいと望み、それも実現すると更にもう一段階上の願いの実現を願う。
4人で過ごす時間が貴重だと思えていたのが、過ごす時間が増えると子供にも理解してほしいと願ってしまいます。でも、子供の理解が得られたら今度は周囲の人たちの理解が欲しいと願うんだと思います。私たちが「家族」と呼ぶだけでなく、周りの人たちから、社会からも「家族」と呼ばれたいと願うようになるのでしょう。
もっとも、パパとママがいる家族にはない、セクシャルマイノリティ家族ならではの悩みだし、ヘテロ家族と同等の権利が得られないからこそのジレンマですが…。
そんな悩みはやはりあるけれど、それでも私たちは今楽しく過ごしているし、私たち家族はまだ始まったばかりです。
「車もってるから、ママが女の人と結婚してもいいよ!!」
そんな風に、性別は関係なく親のパートナーシップを受け入れてくれる。そんな子供たちが増えていけば、5年後10年後の社会はガラッと変わるはずです。
彼女が車を手放したとしたら「彼女ちゃん、車持ってないから結婚はちょっとなぁ」って息子たちに言われないよう、今はパートナーシップを深める時、家族としての時間を積み重ねる時なのでしょう。
そうしてそのうち、社会がもっと広く、誰に対しても温かな世界になりますように。