コロナワクチンと死亡数
新型コロナワクチン接種の是非に関し、副反応の状況が日々SNSなどを通じてリアルに発信されている中で、ワクチン反対派が注視している指標の一つに「超過死亡」があると感じています。
超過死亡とは、統計的に予測される死亡数に対し、実際の死亡数がどれだけ上回っているかを表す値であり、感染症の流行などが社会に与える影響を評価するための指標ですが、一般的には馴染みがなく取り扱いが難しい数字だと思います。
それでもワクチン接種に反対する立場の方がこの数字に言及するのは、実際のコロナワクチン関連死亡数が、厚生労働省が発表する数字よりも大きいのではないかという懐疑的な認識に基づき、実際の死亡数を炙り出そうとするための試みの間接的な根拠として使われているからです。
死亡数、事実の確認
ワクチンに起因する死亡者数を個人が特定することが難しい中で、誰でも簡単に把握することができる死亡者統計値が「人口動態統計」です。
これは厚生労働省が毎月発表する人口の増減に関わる政府公式統計であり、インターネットに接続すれば誰でも簡単に確認することができます。
その中でも死亡に関する統計値には、「死人に口なし」と言われる中で、亡くなった方から現実世界に生きる者への無言のメッセージが残されており、耳を傾ける者には様々な事実を語りかけてくれます。
このグラフは過去10年間の年間死亡総数を示したものですが、注目すべきは、新型コロナと対峙した2020年(令和2年)に限っては、死亡数が初めて前年マイナスとなったという事実です。その明確な理由は分かりませんが、前年より減少したという事実に特異性があり、これが亡くなった方々から今を生きる者への言葉なきメッセージとなります。
そして今年2021年度については、11月6日現在8月までの統計値が発表されており、それによると1月から8月までの累計死亡数は958,970人。8か月間の死亡割合がそのまま1年間継続すると仮定した場合、
958,970人 × 12/8ヶ月 =1,438,455人/年となり、グラフの破線で結んだ値が2021年度の死亡数となります。この想定値に近い値で死亡数が確定する場合には、継続的なコロナ禍にあって、2021年度は20年度とは対照的に、急激に死亡数が増加したことになります。この特異な死亡数の増加に対し、ワクチン接種反対派の方々がざわついているというわけです。
過去10年死亡数との比較
今見た年間死亡数の推移では、2021年令和3年度の死亡数がどの程度多いのか少ないのかはっきり分かりません。そこで次に、月次単位の死亡数の推移を確認します。
このグラフは過去10年の月別死亡数を表したものです。これを見ると確かに2021年度は、増減の傾向は例年と同じながら、3月以降の死亡数が明らかに増えていることが直感的に理解できます。これを数字で見ると以下のようになります。数字は全て厚生労働省が公表している統計値です。
そして先のグラフにおける令和3年度の特異性を確認するために、別の角度から数字を眺めてみます。専門的にはここで超過死亡という概念が登場するのだと思いますが、ここでは専門的な概念は持ち出さず、誰もがより理解しやすい指標として、平成23年2011年から令和2年2020年までの10年平均値との差数を確認します。
この一覧の数字は、過去10年平均と各年度の死亡数の差を表しています。プラスは10年平均よりも死亡数が多い月、マイナスは少ない月となります。この数字をグラフ化してみると、以下の通り令和3年2021年度の特異性が浮かび上がります。
10年平均との差を取ると、どの年もプラスマイナス双方において、冬場の死亡数の振れ幅は概ね±10,000程度、夏場は±8,000程度の範囲に収まっていることが分かります。このレンジから抜けだした月は、いわゆる超過死亡に該当する月に相当すると考えられます。
その意味で、今年2021年4月以降は例年よりも特異に死亡数が増えていると言うことができると思います。逆に、平成23年の2月は異常に死亡数が減っているということに気づきます。平成23年2011年の2月には死亡を抑えるどのような要因があったのだろうということが気になります。
そして2021年度は、死亡数の顕著な増加について、その原因が気になる方が多いようです。ワクチン反対派の面々です。ちなみに増加の要因を新型コロナ感染による死亡数に求めても、その数は以下の通り、本年度の死亡数増加の要因とするには数が少ないです。
コロナワクチン接種推移
日本国内におけるワクチン接種の開始は2021年2月17日。当初は医療従事者など優先接種を対象に始まったことが当時の報道から確認できます。
新型コロナ ワクチン先行接種始まる 医療従事者 約4万人対象
(2021年2月17日 20時01分17日 NHKニュース)
17日から医療従事者を対象にした新型コロナウイルスのワクチンの接種が、全国の医療機関で始まりました。
厚生労働省によりますと、17日午後5時までに全国の8か所の病院で合わせて125人の医療従事者が接種を受けたということです。これまでのところ、目立った副反応は報告されていないとしています。
そしてワクチン接種数の推移は、厚生労働省と首相官邸が公表する統計値を整理すると以下の通りとなります。ちなみに接種回数情報は2021年4月9日までは厚生労働省が公表していましたが、4月12日以降は首相官邸が扱う値となり、政治色が強い情報であることが伺い知れます。
接種グラフを見ると、日本人が如何に政府やマスコミを信頼し、誘導に従っているかが理解できるように思います。わずか数ヶ月で一気に接種が進み、2回目も1回目後の最短期間で直ちに接種している状況が理解できます。
接種累計数については、上記統計値の客観性を担保するために、NHK作成のグラフを掲載します。接種1回目および2回目の数字とも一致しています。
以上、政府公認統計数を独自の視点で整理してみました。
令和3年2021年度は、4月以降確かに例年の傾向と比較して死亡数が増えている点と、同時期にコロナワクチン接種が進んでいる状況が確認できました。もちろん、政府や医療関係団体が公表する数字からは、その2つの指標の相関関係は確認できません。一方で、死亡数増加に対する客観的で有力な説明がなされていない以上、ワクチン接種に疑念を抱く方々がその2つの事象を関連付けようとすることも止むを得ない状況ではないかと感じます。
超過死亡とワクチン接種
さてここからは、ワクチン反対派の主張を是とした場合の仮の考察です。
改めて、以後の内容については特定の主張に基づく考察であることをお断りします。一般常識とは異なる見解である点を予めご理解の上ご覧ください。
2021年度の死亡数の増加とコロナワクチン接種の時期が重なることから、仮に超過死亡がワクチン接種に起因するという立場でその2つの数字に相関関係がありそうかどうか確認します。この際これまで同様、正式な超過死亡数は個人での扱いや理解が難しいため、ここでは引き続き過去10年平均との差に基づき検証を行います。
この表は、2021年度の超過死亡とワクチン接種回数の相関関係を疑似的に確認するために、10年平均値と今年の死亡数の差数の内、先に見た夏場の死亡数の想定上限8,000人を超える値に注目し、各月のワクチン接種者との割合を示したものです。
この一覧を見る限りでは、死亡数が増加した4月以降、ワクチン接種数に占める死亡数増加の割合は1回目、2回目共に概ね同じ結果を示しており、特に接種が月1千万人を超える6月以降は割合にばらつきが少なく、平均値として0.02%前後の値に収束していることが伺えます。
この結果は、何か特定の結論を直ちに導くものではありませんが、個人的には、予想外に同じような割合が並んだという印象です。このためワクチン接種と死亡数の増加に全く関係がないとは言い切れない反面、相関関係があると結論付けるにはサンプル数が少ないという状況です。現状ではサンプル数を得るために、3回目接種の結果が待たれることになります。
今回は、接種3回目の開始を前に、是非を含めて様々囁かれることの多いコロナワクチンについて、政府が公表する死亡数が語りかける統計値について確認しました。医学的な因果関係の有無を調べる第一歩として、ワクチン接種後の一定期間内に亡くなった方の数と直接の死因については、公表してほしいと思います。いずれにしても、一日も早くワクチンを必要としない日常が戻ることを願って止みません。
ではまた次回。
<本記事の参照統計情報>
厚生労働省・人口動態調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html
厚生労働省・ワクチン接種状況
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_sesshujisseki.html首相官邸・ワクチン接種状況
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html