【梅園魚品図正】(29) 柔魚(するめいか)
柔魚 スルメイカ
『閩書』曰 柔魚 スルメイカ ホネナシイカ 『多識』
『和名鈔』 引 『崔禹錫食徑』 曰
小蛸魚 和名 須■女 [■は亚+田]
諸州より乾而遠に送。乾たる者を 名 □ 。其子蝙■ [■は虫+若] と云。『和名抄』に曰、□魚と云。可 考。柔魚の□になしたるを□と云。總て魚の塩に和さす。曝乾し、以て四方に貨るを□と云。干物といわす。□を今國俗スルメと称す。
柔魚、即 スルメイカ也。状 着色、則 見 圖上 色赤色紫点 者亦あり。
各肉骨薄く、骨硝子帋のごとし。風乾するを『閩書』に明府と云。螟■ [■は虫+府] に作る。即、柔魚なり。本朝式、鯣の字を用ゆ。『延喜』の神祗民部主計式に、若狭、丹後、隠岐より 烏賊を貢にすと云ふ者、皆スルメなり。
今、肥前、五島より出すもの最品なり。伊豆の産、亦美味也。丹後、伊豫より出すもの 次 之。古より賀慶の三方には、必 スルメ、昆布を用ゆ。今猶然り。
予曰、長州より出す者、大にして風乾になせども、胎肉長さ一尺余、其足常のスルメより短し。肉厚うして、其味渋氣なくして、甘香味あり。賣買に非らず。
※ 「賀慶」の読み「しうぎ」は、祝儀。
※ 「三方」は、供物や食器をのせるのに用いる檜製の膳のこと。三方。
蝙■ [■は虫+若]
『和名鈔』云 蝙■ [■は虫+若] 和名 井
『七巻經』云、其貌 似 蚓 而大 者也。此者、海中沙中に居す。魚の餌に用ゆる。海中の魚、何れも是を□と云。漁父なぞは、又煮て菜とす。味、烏賊に似たりと云。腹中に沙ある。故に、こきて沙をさらざれば、食ひ難しと云。案ずるに、海中の蚯蚓也と。『屋代魚譜巻』に出す。
元壽、又按るに、井はスルメの苗子にして、ブヨ/\して又硬し。水母に似たり。始柔魚、其卵沙地にすると云れば、蚯蚓、海蠶の類に非らず。魚友 飼にて釣る者 不 少。漁夫、煮食ひ、味イカの如しと云るを以て知るべし。
※ 「沙」は、砂のこと。
※ 「苗子」は、稚魚、幼魚のこと。
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筆者注 『梅園魚品図正』は、江戸時代後期の博物家、毛利梅園による魚図鑑です。説明文書は漢文体が中心でのためパソコンで表示できない漢字が多く、漢文の返り点と送りがあります。読みやすさを考え、パソコンで表示できない漢字は □ とし、名称の場合はできるだけ [■は〇+〇] の形で示すようにしました。
また、漢文の返り点と送りはカタカナと漢数字、振り仮名と送り仮名はひらがなで記載しています。
この作品に引用されている文献については、こちらの note を参照してください。 → 【梅園魚品図正】文献まとめ
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