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第十九話

 「弥幸は意識飛んだりしねーんだな」
弥幸の上からベッドに降りたばかりの星陽が、転がるように身を寄せて来た。呼吸を整え一息つきながらちょっと考えてみる。
「そういやそうだな」
弥幸の胸にモゾモゾっと顎をのっけた星陽は伺うように見上げた。
「俺、ちゃんとできてる?」
そして
「お前と同じようにやってるんだけどなあ」
言いながら、胸にコロンと頬をつけた。
「なんで俺は飛ぶのにお前は飛ばないんだろ」
自分を参考にしてると言われ複雑な気分になりながら、それは自分のせいもあるかもなと弥幸は思った。星陽と付き合ってなければ一生なることはなかっただろうこっち側に、正直全然慣れていない。変な話、自分のされ方はこれで合っているのだろうかと不安なぐらいだ。

 浮気だ何だと疑ってしまうのは弥幸への関わりが足りないからではないか。そう考えた星陽は、空知に会いに行った後、弥幸を抱く計画を実行に移した。押し倒すタイミングを伺うまではドキドキしたのだが、始めると夢中になり、気づくと終わっていたという感じだ。
 大体、弥幸は今まで抱かれたことはないというではないか。
どの顔も全部、自分しか知らない顔だと思うだけで興奮してしまい、何回か回数を重ねた今ですら、初めての時と同じくらい余裕がない。
 弥幸と同じようにしてるというのも、思えばちょっと盛っているかもしれない。最後辺は常に何が何だかわからなくなり意識が飛んで終わっているのだから、一番大事なところは全然覚えていないのだ。
 それか?
 星陽は思った。
自分が抱いても弥幸が飛ばないのは、肝心なところを全て逃しているからなのか?

 「おい星陽。大丈夫か?」
ペチペチと頬を叩かれて目が覚めた。弥幸が覗き込んで様子を伺っているという、いつもと変わらない光景だ。
「…っわーっ!またかよ。手加減してくれって言ったじゃん!」
「したって。…多分、それなりには」
 前回の気づき以降、手加減してくれと頼んでは頑張っている星陽なのだが、どうしても意識を明瞭に保っていられず、やっぱり最後は覚えていない。
「大体、どこをどう手加減すればいいんだよ。これやりすぎかなとかいちいち気になって、こっちは全然集中できないんだけど」
 弥幸は星陽が何をしたいのかさっぱりわからない。手加減しろと言うくらいだからしたくないのかと思いきや向こうから誘って来るし、行為が進むにつれ、もっととか言って来るわけだ。
「体辛いなら別に毎日しなくてもいいし…てか俺の方は全然欲求解消できてないから、してないのと同じだしな」
なにしろここ二週間ほど、弥幸の方はちゃんと最後まで終われていないのだ。欲求不満が募れば少し言葉尻がキツくもなる。
 だが、結局最後には夢現になってしまっている星陽はそんなこと全然気づいていなかった。誘ってるくせに自分だけ満足して終わっていたことが申し訳なくて、正直に答える。
「…俺はいつも飛ぶのに弥幸飛ばないじゃん?でもよく考えたら、飛ぶ前って何されてるか全然覚えてないからさ。それ覚えてれば、弥幸もちゃんと気持ち良くなれるのかなと思ったんだよ」

 …努力の方向性は違う気がするが、その頑張りはただただ可愛い。
 ちょっとキツい言い方になってしまったことを後悔し、弥幸は星陽を抱きしめてゴロンと仰向けになる。普段恥ずかしくてなかなか言えないことをちゃんと言うことにした。
「それな、多分体質とか癖とか、後は体力とかの問題だと思うよ。…だから…うん、星陽が俺より下手とかそういうことではなくて、その…ちゃんと気持ち良いから気にするな」
そして、星陽に関することだけとして話し納めるのもズルい気がして続けた。
「後は俺も、抱かれる方になるのは初めてだから。それもあるかもしれない。お前の方こそ、なんて言うか…俺の反応で大丈夫なのか?」
撫でられていた頭を上げ、星陽は弥幸を見た。
「すっげえ満足。思わず声抑えちゃう所もそれが我慢できずに漏れちゃう瞬間も、ずっと恥ずかしそうなくせに、だんだん夢中になってくとこも。世界一可愛い」
ヘラっと無邪気に笑う。
 …そっか。
それを聞き、思った以上に安心している自分がいることに弥幸は気づいた。

 「あれ?そうするともしかして弥幸、二週間ご無沙汰みたいになってる?」
不意に言った星陽が半身を起こす。
「…まあ?言われればそんな感じだな」
「うっわぁぁ…それいい…」
言うが早いか、弥幸の両手首を片手で拘束し頭上に持ってゆく。髪が頬を撫でるほど耳元に近づいて、熱い吐息と共に囁いた。
「焦らして、いじめたい」
瞬間、弥幸の腰から脳天までゾゾっと何かが走り、目がチカチカした。
 待てって。これはヤバい。
 その予感はガッツリ当たった。
 結果的に指一つ動かせない状態になったのに意識は飛ばず、やっぱり飛ぶのは体質か癖か体力なんだと、自らの体で理解を深めることになったのだった。

大満足星陽くん

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第二十話〜弥幸✖️星陽

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