地獄絵図、ならぬ恥骨絵図
子どもって、身体の使い方分かってないじゃないですか。
嫌なことがあったからって、いきなり
背筋ビーーーーン!!ってして、色んなとこに頭ぶつけたり。
嬉しい!楽しい!大好き!ガンッ!!!
って母の胸に頭蓋を打ち付けたり。
母の腹に全体重で座り込んできて、母を「ウッ」と唸らせたり。
そんで母が
「痛い!痛いよ娘ちゃん!ねえ」
と訴えるのをじっと見つめ、
「ねえ。ごめんなさいは?なでなでは?」
と言われると、
こんなきゃわいい顔を至近距離にもってきて、きゃわいすぎるおててで母の頭をなでなでしてくれる。
そんなことされちゃったら、母は、「ハア…許す…!好き…!」となって、また身の回りの世話にいそしんじゃうわけです。
…ん?
ちょっと待って。これDVと同じ構造じゃね?
そう。痛い目に遭わされた後、優しく撫でられ、この人には私しかいないんだわと思って関係を維持してしまう。
…なるほどそういうことか。
全ては子育てのため、ひいては子孫繁栄のため。
DNAに組み込まれた適応力なのかも知れない。
だって本当に娘には悪気なんてないし、娘にはある意味で私しかいないし、娘の成長の可能性は無限大だし。
これからも幾度となく娘に対して
「ハア…許す…!好き…!」
を繰り返していくのだろう。
(※もちろん教育の過程で)
*
…という話を、ここ最近書こうと思ってなかなか書けずにいた。
それは、簡単な理由から。
絵がムズい。
そう、プロレス技みたいな絵ばっかりでムズいんです。
ここまでの絵もなかなか酷い仕上がりなんですが、本当はもう一つ描きたいシーンがあって。
それは、娘が私の恥骨に頭蓋を振り下ろすシーン。
それはもう、本当に痛くて、いちおう女だから外付けハードがついてるわけでもないのに、しばらく股間を押さえて呻いた。ヒビ入ったんちゃうかコレと思ったくらい。
あれから5日が経ったけど、まだ痛い。のしかかる娘の肘なんかが当たったら、呻きながら娘の位置をずらしたりする。
と、私としてはなかなか衝撃的な出来事だった、恥骨事件。せっかくだし絵日記にしたいのに、なんせ難しくてうまく描けない。
以下、私の苦闘ぶりです。
まず下描き。
おっ、描けそうか…?
動きを表現するの難しいな。
でも、「ぶつかってる感」だけはちゃんと出したい。
だってもの凄く痛かったから。
よしちゃんと描いてみよう。
…ん?
なんだろう。
なんだろうこれ、怪奇現象?
幽体離脱?
そしてここからドツボに嵌る私。
下描きのような絵を延々描き直す。
あーもうわからん。
わからんくなってきた。
よし、私目線で上から描こう。
なんやこれ。
もうやる気ないやないか。
娘の足どないなっとんのや。
丸に川の字を、誰が頭やと思ってくれるんや。
というわけで、完全に迷子になった私。
やる気を失くして筆を放り投げました。
もうあの恥骨事件は絵日記にされることはないのだろう。永遠に。
そう思われていた。
しかし私は、サラさんのこんな記事を発見する。
すごい。めっちゃ分かりやすい。
成仏しきらなかった私の恥骨事件も、もしかしたらサラさんの手を借りて成仏させられるかも知れない。
と、いうわけで #おえかき教室 を付けてみます。
サラさん、もし題材的に微妙だったらスルーしてくださいね。だって恥骨だし。
*
そんなわけで今なお痛む恥骨。
今日も娘は、ソファで寝そべる私の上にのしかかる。
(そもそもあなたが寝そべらなければ、娘さんにのしかかられたりしないのでは?という、ごもっともかつ私に響かないご意見は、ありがたく頂戴しご意見箱ごと処分します)
恥骨が傷んでいるからだろうか。
ふと、恥骨に娘の鼓動を感じた。
力強く、私よりも速く、脈打っている。
そして思い出した。
この心臓をエコーで見た日を。
ぴこぴこ動くその心拍を、検診ごとに確認するまで、ずっと不安だった日々を。
出産時、発熱した私と呼応するかのように、早鐘を打って医師に心配された娘の鼓動を。
心臓の壁にごく小さな穴が空いていますと医師に報告された、産後の朝のぼやけた病室を。
経過観察で、大丈夫そうですねと言われて胸をなでおろしたあの日を。
いまここで、私の上で脈打っているのは、紛れもなくあの日の娘の心臓だ。
大きくなったね。