お股あったかい
ヨモギ蒸しってしたことあります?
お股温めるやつ。
なに、ないですか?
じゃあ、食洗機の前に立ってたら、ちょうど蒸気がお股を温めてくれて、ア”ー温かいなあって思うことは?
えっ、それもない?
私はつい先日その体験をして、思い出したんです。
5年前、自宅にヨモギ蒸しシステムを導入したときのことを。
*
ヨモギ蒸しって、知らない人も多いのかな。
男性は特に聞き馴染みないですよね。
こういうやつです。
お洒落なサロンでお洒落にリラクゼーション、みたいな雰囲気のアレ。
でも、お洒落と断ずるのはちょっとまって。
説明するから、想像してみてくださいね。
これ、中身は全裸で、煮えたぎる湯 featuaring ヨモギの上にまたがって、ボウボウにお股に湯気を浴びています。
こういうことです。
どうでしょう。思ったよりワイルドでしょう?
ワイルドついでに空気椅子だということも、ごく稀にはあるかも知れないですが、基本的には穴の空いた椅子に座っています。椅子が描かれていないのは、ひとえに私の画力の問題です。
あ、それと、もし読者の中に、「穴の空いた椅子」に反応してセクシーなことを考えた不届き者がいたら、己の業の深さを反省して、近くの河原でヨモギを摘んでヨモギ餅を作って、汚れのない心で「婆ちゃんゴメンな」と謝りながら食べてください。美味しいのが出来るといいですね。
さて、では世の女性たちがなぜ、お洒落を装いながら、こんなにワイルドなことをするのかというと、身体が冷えやすい、ひいては腰回りが冷えやすいからです。だから、ダイレクトにお股から暖を取るのです。
正直、めっちゃ温まります。
私は根っからの冷え性で、生理も重いタイプ。冬場は、貼るカイロを腰に2枚貼り付けていることもしばしば。
そんななか、「よもぎ蒸しは子宮から身体を温めてくれて、女性に嬉しいことが満載!」という触れ込みを見て、友達とサロンへ行ってよもぎ蒸しを初めて体験したのが、約5年前。
ボウボウにお股に湯気を浴びる、5年前の私。
なるほどこれは確かに温まる。身体に良さそうだ。
しかし、ネックなのがそのお値段。
30分〜1時間で、3000円はする。
こういうのは定期的にやらないと意味がない。一回お股が温かくなっただけで冷えが取れたら、世の中警察はいらないしユニクロもいらない。
だけど…
定期的に1時間3000円を払うの?
週一だったら、月12000円?
お股を温めるために?
私の中の関西人が、「もったいない」と大ブーイングする。
その横で、人差し指と人差し指をつんつんして、「でも冷え性治したいよう…」といじける、私の中の冷え性。
聡明かつ豪腕なリーダーであるところの私は考えた。
よし分かった。じゃあ、よもぎ蒸しキットを手作りしよう。
天才。関西人も冷え性も歓喜。ぱちぱちぱち。
と、決めたはいいけれど、早々に問題にぶつかる。
「穴の空いた椅子」
これが意外とない。
お風呂場の椅子が良いかな?穴が開いてるし。
と思って探すも、どうもしっくりこない。
そもそも高さが足りない。
なんせ椅子の下に、煮えたぎる湯 featuaring ヨモギがを置かなくてはならないのだ。風呂場の椅子ごとき高さで、ヨモギ蒸しを敢行しようものなら、私のいたいけなお股が大やけど、アチチのチだ。
この高さ問題が、大いに私を悩ませた。
ある程度高さのある椅子に穴があいていることなんて、まずない。便器ぐらいしかない。普通の椅子にもし穴が空いてたとしたら、それは何ですか?ナニのために空いている穴ですか?
椅子探しが暗礁に乗り上げたので、いっそのことイチから椅子を手作りするか、と考える。
でも、どうやって?私はDIYには興味がない。
ノコギリは握りたくない。
じゃあもう、何かそのへんの椅子に穴を開けて…
いや、そんな簡単に椅子に穴なんか開けられるわけ…
そんな都合の良い椅子持ってるわけ…
持ってるわ。
2年前に会社(アウトドア系)を辞めるときに先輩にもらったキャンプ椅子。それが押し入れに眠っているのを思い出した。
よし決まり。
これでいこう。
と、決めたは良いものの、さすがにハサミを入れるのは緊張した。
座面に穴なんかを開けちゃったら、キャンプ椅子が台無しだ。取り返しがつかない。もうこの子は、キャンプ椅子として陽の光を浴びることは出来ない。
私にも、穴あき椅子を作成してしまったという事実が、今後の人生についてまわることになる。この椅子をひた隠しにして生きる人生が始まってしまう。穴あき椅子なんて、誰の目にも触れさせるわけにはいかない。
え、何で椅子に穴あいてんの?
えっ、もしかしてコレ、自分であけたん?
なんて聞かれたら?終わり。終わりです。
絶対にバレてはいけない。秘匿せねばならんのです。
かといって、ヨモギ蒸しを志す私のハートは誰にも止められない。
それらのリスクを背負う覚悟ができたところで、意を決してザクッと椅子に切り込みを入れた。
大きい穴を開けちゃったらリカバーのしようがないし、布が裂けて私の可憐なお尻がまるごと嵌ってしまう可能性だって出てくる。灼熱のヨモギ湯でお尻が茹でられてしまう。そんなことになって、得をする人間がこの世にいますか?いないでしょう?だから、極力小さめの穴をあけた。
チョキチョキチョキ。
できた。
穴あき椅子さえ出来てしまえば、あとは割に簡単だ。
電気屋に行って、一人用の電気鍋を2000円ほどで購入する。安い。
世界のお茶を並べているタイプのお店で、ヨモギをゲットする。一袋1000円くらい。ちょっと高い。
ポンチョは、下半身用に100均で風呂用カーテンを買う。上半身には持ってるレインコートをかぶろう。
はいみんな集合〜
完成。
うん。椅子の高さも、穴の大きさも丁度いい。
これにて、北風吹きすさぶ一人暮らしの我がワンルームに、ヨモギ蒸し機能が完備されました。冷えるな、辛いなと思ったら、いつでもヨモギ蒸しにアクセス出来る。最高。最高とはまさにこのこと。
使用方法は、至って簡単。
鍋にヨモギと水を入れてぐつぐつにし、パンツをポイして椅子にダイブ。風呂用カーテンとレインコートで、温かさが逃げないように体を覆い、遭難者のような格好になるだけ。
あとは優雅にYoutubeでも眺めていればいい。
たまに、鍋がグツグツに煮えたぎりすぎて本当にお股がアチチになることもあったけれど、ここはサロンではないので、お股をおさえながらぴょんぴょん飛び跳ねて、「すいませーん、熱すぎてお股がカチカチ山です!」なんてスタッフに助けを求める必要はない。
静かにお股をおさえながら、静かに鍋の火力を調整すればよい。ああなんと素晴らしき自由かな。
これで、一回あたりに掛かる費用は、消耗するヨモギ分の数百円のみ。
サロンとは違い、自分が納得するまでお股を温め続けることも出来る(良い子のみんなは短めで切り上げよう)。
最高。パラダイスじゃないですか。
探し求めていた桃源郷が、こんなに近くにあったなんて。
それからしばらく、私は自宅でヨモギ蒸し天国を満喫したのでした。
*
…というわけで、今から約5年前。
日本のどこかで、入籍前の妙齢の女性が、一人暮らしの部屋でよなよなヨモギの蒸気でお股を温めていた話でした。
ちなみにこの椅子と鍋は、ヨモギ蒸し以外の何にも使えず邪魔なだけなので、この5年の間に捨てられ今は手元にありません。
貸してと言われても貸してあげられないので、ごめんなさいね。
いつもありがとうのかたも、はじめましてのかたも、お読みいただきありがとうございます。 数多の情報の中で、大切な時間を割いて読んでくださったこと、とてもとても嬉しいです。 あなたの今日が良い日でありますように!!