【架空小説#6】桜と泥棒
桜の花びらが舞い散る夜、
僕は生涯で初めて財布を盗んだ。
深夜、春の夜風に吹かれて、
咲き誇る桜の下でふらりと散歩していた時だった。
目の前には酔いつぶれて眠る男性がいて、
そのポケットから少しだけ財布が覗いていた。
好奇心が勝ち、気づけば手が伸びていたのだ。
ところが、財布を手にした瞬間、ふいに目が合った。
薄暗がりの中、目をこすりながら彼がこちらを見上げていた。
驚いた顔のまま彼が発した名前は、
僕の幼なじみのものだった。
何年も会っていなかったはずなのに、
運命のようにこの場所で再会してしまった。
あの一瞬がすべてを変え、
ただの夜は心に焼き付く特別な夜となった。
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それではおやすみなさい。