Vol.4 由仁町から青葉町のために
寺澤 繁昌さん
52歳。 シティマ-ケットてらさわ厚別青葉店、由仁町に本店を構える “株式会社てらさわ商店” の社長。会社員を5年程務めた後、30代の手前に家業である明治35年(1902年)創業の “てらさわ商店” 四代目となる。その後約11年前に全日食チェーンが運営していた店舗で「シティマ-ケットてらさわ厚別青葉店」をオープンする。由仁町商工会理事も務める。
シティマ-ケットてらさわ厚別青葉店の様子
まず大手のスーパーと違って、店舗は小さいので買い物がしやすくなっています。客単価は低いけれども、やはり近隣住民が必要なものをすぐに買いに来られるというとことはコンセプトになっていますね。私が由仁町に住んでいるので、由仁町や近郊の有機野菜を店頭に置くということも心がけています。また店舗で調理されたお惣菜なんかもありますが、よく売れますね。由仁町から持ってきたお刺身も販売しています。
由仁町と青葉町で店舗を運営していて違いはそこまで感じないです。口コミを見てみると “昔ながらの田舎の商店のような感じがする“ なんていう意見がありますが、私たちは逆にそれを狙っています。道の駅風のローカルな店舗運営なんかもイメージしています。大手のように価格だけでやっていたら競えないので、地元中心としてここでしか買えないものを売れるように力を入れています。
由仁町と同じように、青葉町でも買い物に来て下さった方々に対して、自前のスタッフによる当日配送を行っています。私自身もやりますし、毎日一時頃になったらみんなで行こうみたいな感じでやっています。青葉町だと当日配送の依頼は一日平均して5.6件ぐらいかな。特売の日だと10数件来たりします。去年まではサービスとして配送代金は追加ゼロ円でやっていました。今はガソリン代が高騰しているので、100円でやっています。やっぱり料金をとってしまうのは勇気がいりましたけど、皆さんが受け入れてくれて安心しています。
由仁町では電話注文なんかもやっていますが、青葉だと店長1人とレジ1人でやっているので、なかなか電話を取るのが難しくてやってないですね。
青葉店で働いていただいている方々は地域の方々です。最初の頃は求人サイトに依頼していましたが、今は店に張っている求人広告から応募する人にお願いしています。
由仁町と青葉町の購買行動
一日に来るお客さんの数は青葉町の方が多いですよ。その分、1人のお客さんが買う量は由仁町の方が多いです。由仁町のような田舎は箱買いなんかが多いですよね。冬には、みかんが数百ケースとか売れますね。人口4,000人くらいしかいないのに、袋だとなかなか売れないです(笑)
青葉町は同じ日に何回も来る人が多いという特徴があるかもしれません。冷蔵庫替わりみたいな。またお客さんのバランスがいいなと思います。若い人も来ますし、高齢者も来ますし、病院が近いので妊婦さんなんかも来ますね。田舎だとなかなかない光景ですよ。これは最低限の品揃えを心掛けている理由でもありますね。
地域住民との関わり方
青葉町の方には、週に一回の頻度で折込みチラシを送っています。町内会との関わりなんかもありますよ。夏祭りの寄付とかもそうですし。ただそれぐらいしかなかなか繋がり持てないですね。
一方で由仁町でのお客さんとのコミュニケーションはより深いですね。地域密着で固定客も多いので”最近見なかったけどどうしたの?”なんて会話もよくありますね。
配達していても家の冷蔵庫まで持っていくこともありますし、お茶出しながらお支払いするお客さんもよくいます。“変な電話かかってきたけどどうしたらいいの”とか相談に乗ったりもね。なので由仁町の方が横のつながりだったりコミュニティはしっかりありますね。お客さんや住民に何かが起こった際に気が付くスピードも速いと思います。田舎ならどこに誰が住んでいて何歳かとかもわかりますけど、札幌だとそうはいかないので難しいですよね。
由仁町から見た青葉の地域課題
札幌の街中と比べると、青葉町は買い物に行きにくい地域かもしれません。しかし、北海道を見渡すとスーパーが一軒もない地域が少なくありません。バスに関しても、バスが一時間や30分に一本あるということは恵まれているかもしれません。田舎ではなかなかありません。
由仁町は夕鉄バスの札幌―夕張線が去年無くなり、行政が出しているデマンドバスがあるくらいです。結局は人が乗らないから無くなってしまっていますよね。まずは利用することと、無くなる前に議論をすることが大切だと思います。
これからの厚別青葉店への思い
やはり地域密着でやっているので、基本的にはここの店を残していかないといけないという思いはあります。買い物難民を出さないようにすることは、多くの地域が抱える問題ですね。田舎に行けば、スーパーが1つあるかないかみたいな状態ですし。なので、地域住民のために配達も続けていきたいです。
ネットを使えると、幅が広がるかなと思います。ただ商品などを掲載したりするコストはハードルが高く感じますね。時間的なものも金銭的なものもそうですけど。小規模でも出来るような仕組みがあれば良いなと思っています。
若い人へのメッセージ
地域イベントに参加することですね。青葉町で出来るかどうかはまた別ですけど、小さい頃から地域のイベントに参加することで、それ以降も地域と関わることができたりしますからね。結果として地域を担う人材が育ったりもすると思います。
ステューデントアンバサダー編集後記 田中 寛(北星学園大学 経済学部 経営情報学科 4年)
この企画開始後、はじめて青葉町に居住していない方へのインタビューとなりました。両地域は高齢化に伴う買い物難民や孤立など共通の地域課題を抱えています。青葉町は現在ICTを活用した課題解決に取り組んでいますが、由仁町のような地域住民の横の繋がりによるアプローチの重要性も改めて認識しました。由仁町で生活し続ける寺澤さんならではのアイデアや考え方に触れることが出来たことは、青葉町にとって良い視点となったのではないでしょうか。
燃料費や資材が高騰する中で、地域住民のために100円で配送を行うという試みは、青葉町に無くてはならないものであると同時に、”青葉町の利用者のために!“という地域への思いそのものだと感じました。同商店が経営を続けられるよう、地域からもサポートをしていく必要があります。また、私は由仁町の切干大根と、栗山製菓の”あんドーナッツ”をインタビュー後に購入させていただきました。程よい甘さのあんドーナツが原稿作成を捗らせてくれたことを思い出します(笑)。ぜひ皆さんも訪れた際にはチェックしてみてください!
ステューデントアンバサダー青葉町コーディネータ- 鳥本 優至
現在の「シティマ-ケットてらさわ厚別青葉店」の場所には昭和47年(1972年)1月に「青葉公設市場」がその隣には同年6月に「コンシュマ-ズマートにしむら」が開店し、以降青葉町のみならず、近郊住民の買い物の中心地として栄えていました。
新さっぽろの副都心計画により昭和52年(1977年)「サンピアザ」がオープン、地下鉄「新さっぽろ駅」JR「新札幌駅」が開通し、買い物を含む生活の拠点が「青葉町」から「新さっぽろ」へと変遷し、少子高齢化もありいつからか青葉町にスーパーがなくなり、「買い物難民」と言われるようになりました。その後「コンビニ」から「全日食チェーン」そして現在の「シティマ-ケットてらさわ厚別青葉店」となり、買い物難民が解消されたことはとても嬉しく有難いことであります。
「てらさわ青葉店」はコンパクトでありながら、どこか昭和の時代を感じさせる温かさを感じる店舗。「昭和」的な店舗に心引かれる人が多いのは、懐かしさだけではなく、そこにハートを感じるからではないでしょうか。地域に密着した店舗運営を心掛けており、同店の配達サービスは青葉町の住民にとって欠かせないものとなっています。
寺澤社長は明治35年(1902年)創業の“株式会社てらさわ商店”四代目。
地元の名士として由仁町商工会理事をはじめ数々の地域活動の役職を勤められ、地域社会の発展にご尽力されていらっしゃいます。
行政の力も借りて「自分たちの街は自分たちで作る」寺澤社長の街づくりに対する熱き想い。今回のインタビューを通じてひしひしと伝わってきました。
もみ・あお FACES ディレクター 山屋 恵嗣
今回は、地域唯一の商店の社長である寺澤社長を、経済学部の学生田中さんがインタビューすることで、地域経済の視点が含まれるひと味違った内容となったかと思います。
もみじ台、青葉のシニアの方々へのヒアリングでは、「買い物難民」といった言葉がよくききます。そのなかで、青葉で唯一といった商店主に、商店からみた地域、地域との関わりを、本店の由仁町の様子も交えて伺えました。
商店街がリニューアルされ生まれかわる新さっぽろの軒先で、しっかり地域と向きあい、地域近隣のニーズに答える地域密着へのこだわり、そして、地域の人が働き、手のぬくもりのある商店づくりをする姿勢に強く関心させられました。手作り惣菜、生鮮のお魚にお肉、そして、本拠の由仁町の名産も含む野菜たち。昔あった市場の風合いを大事にして、地域配達もスタッフ総出でされています。この店の人たちは、常に手を動かしています。社長、店長とお話する際も、野菜を磨いていたり、梱包しながらだったりします。
カッコつけず、ありのまま。
そして、今後のお店の展望については「残す」、「なくさない」、「生き残る」といった、経営者としての強い思いと、地域への思いやりが交わっているように聞こえました。もみじ台、青葉の方に、まだご存知ない方もいらっしゃるかもしれません。是非、一度お立ち寄りください。寺澤社長、田中さんありがとうございました!