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Vol.8 高齢者と障害者とともにつくる新しい働き方・生き方への挑戦 by 北海道光生舎 <もみ・あおスクール抜粋>

今回の  もみ・あおFACESは、新たにはじめたプロジェクト学生の企業訪問「もみ・あおスクール」から、現地の視察とヒアリングから学びをその講師の方の生き方、その会社の社会の取り組みに学生が感じたポイントでご紹介させていただきます。12月20日に実施した「もみ・あおスクール」には、札幌学院大学から2名、北星学園大学から1名参加してくれました。この中で、北星学園の村瀬さん(大学院 社会福祉学研究科社会福祉学専攻) に代表して記事をまとめていただきました。

参加してくれた学生たち
座学の風景

社会福祉法人北海道光生舎、光生舎ゆいま〜る・もみじ台、光生舎く・る・る
係長 高田 光さん

光生舎の成り立ち
光生舎は、北海道の赤平市を拠点とする社会福祉法人です。現在は赤平市をはじめとして、札幌市、歌志内市、芦別市、滝川市で事業を展開しています。

創業者である高江常男さんは、小学生のときに右目を失明し、17歳のときに送電工事で感電し、両腕を失っています。そのような状態の中で、口にペンを咥えて取材を行う新聞記者として職を得ています。

高江さんが赤平市で取材を行う中で、炭鉱事故で身体に障がいを抱え、職がない人たちの存在を知り、障がいを持つ方も働ける場所を作ろうと「赤平ドライクリーニング工場」を立ち上げています。この赤平ドライクリーニング工場では、企業授産という手法に基づき、身体に障がいを抱えた方が自らの力で働くことができ、障がいを持つ方への雇用を生み出していました。

このようにして、1956年に障がいのある方も働ける場所を自らの手で作ろうという創業者の想いをのせて、クリーニング工場が創業され、現在の社会福祉法人北海道光生舎へと発展を遂げてきました。

光生舎紹介のプレゼン資料

光生舎の理念
光生舎の理念は、誠心誠意、努力敢闘、創造実践が舎是として掲げられています。経営理念は、【わたしたちは、「働く喜び」「誇りある人生」「きれいと快適」を追求し、地域社会に貢献します】と掲げられています。

「働く喜び」「誇りある人生」「きれいと快適」とは具体的には次のように示されています。
·○「働く喜び」とは、利用者・職員共に全員がいきいきと活躍することができる職場づくりを続けること。
○「誇りある人生」とは、法人に関わる1人ひとりの個性を尊重し、皆が充実して誇りある人生を送ることを目指すこと。
○「きれいと快適」とは、職場においてきれいと安全を徹底し、お客様に清潔で快適な環境を提供すること。

光生舎は、職員や利用者がいきいきと働き、活動することを通じて、個性が尊重された誇りのある人生を送ることを目指しています。

喫茶く・る・る で働くみなさん
光生舎ゆいま〜る 障害福祉サービス事業所の業務風景

光生舎でいきいきと働くことができる事業モデル
光生舎には、赤平でのクリーニング工場からスタートし、社会福祉法人へと発展してきた歴史があります。そのため、時間や物品、働き方の管理を徹底し、生産性を向上させることに注力しており、それによって作り出された時間でサービスの質も上げていくという取り組みを行っています。

生産現場においては、時間を管理するために、職員が歩く歩数は時間に直接的につながっているという視点に立ち、歩く歩数を減らして生産性を上げるという考えに基づいて万歩計を持ちながら職員が仕事を行う取り組みがあります。

物品の管理については、物品の管理は費用を管理することにもつながるため、物品が置いてある棚には、1日単位で必要とされる物品の数や量が明確に記されています。

働き方も管理していくために、光生舎全体で改善提案を積極的に行う取り組みがなされています。職員が日頃業務を行っている中で不便だと感じている部分について随時提案できるようなシステムを構築しています。また、改善甲子園という改善内容の提案をプレゼンする大会が開催されています。

このように経営者と現場の職員のコミュニケーションが取りやすいような仕掛けがされているため、働きやすい職場が作られています。また、このような職場では職員のモチベーションの向上や生産性の向上が見込まれるため、結果的にサービスの質も良くなっていき、入居者にとっても職員にとっても良い循環となっています。

このような生産性の向上を上げるための企業努力の結果、光生舎は、社会福祉法人でありながらも国内上場企業レベルの昇給率を維持し続けており、長く勤めるほどに職員の方々の待遇も良くなっていきます。

光生舎のカイゼンの取り組みも詳しくご紹介いただきました
学生みなさん真剣に聞いてくれました

ゆいま~る・もみじ台の施設の特徴
ゆいま~る・もみじ台は、閉校になった旧もみじ台南小学校の1階を改修し、2012年に高齢者・障がい者福祉の多機能事業所としてスタートしています。

特別養護老人ホームや短期入所生活介護(ショートステイ)を利用する方々が生活する空間は約10部屋ごとに1つの「ユニット」が形成されています。そのユニットごとに大きなテレビや椅子、キッチンが設置されており、リビングルームのような空間になっていました。

この開放的な空間の中で、入居者さんはテレビを観たり、本を読んだり、キッチンでお茶をいれたりなど、各々が自由に好きなことを行うことができるようになっていました。

ゆいま~る・もみじ台での施設見学を経て、施設内のどの居室や空間にも光が差し込んでおり、明るくそして暖かみがあったことが非常に印象的でした。

このように入居者さんが暖かみのある空間で自由な時間を過ごしている様子は、家庭の生活空間でリラックスしているように見受けられ、光生舎の理念が現れているように感じられました。

ゆいま~る・もみじ台の外観
特別養護老人ホーム施設内の居住エリア

地域への貢献とつながり
光生舎の施設は、その多くがまちの中心部に建設されています。光生舎の拠点である赤平市では、人口減少が加速していますが、施設がその場所にあり続けることによって多くの雇用や人の流れを生み出しています。

ゆいま〜るもみじ台では、施設内に地域開放スペースがあり、地域の方々の交流の場としての役割を担っています。また、地域交流スペース喫茶もあり、そこには地域の方々、入居者さんの家族など様々な人が利用されているようです。

また、喫茶では、ゆいま〜る・もみじ台の就労継続支援を利用する方がいきいきと働かれている様子が印象的でした。

光生舎では、地域に広く開放している施設としてそこに在り続け、高齢者や障がい者の地域の方々との交流や社会とのつながりを大切にし、雇用や関係人口を生み出すという側面からも地域に貢献しています。

交流スペース喫茶く・る・る 
講師をつとめてくれた高田さん

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スチューデントアンバサダー編集後記
村瀬 未奈(北星学園大学大学院 社会福祉学研究科社会福祉学専攻)
 

 今回、光生舎の高田さんへのインタビューや施設見学を通じて、光生舎創業時に掲げた理念が、継承され続けていることがわかりました。
光生舎では、毎月1回の経営報告会を行い、経営者と現場の擦り合わせを行う機会があります。また、月の初めの理事長からのメッセージでは、毎月の経営状態の報告と、創業の理念についてわかりやすく職員全体に向けて発信されているそうです。
 このセッションでは、高田さんの職歴や光生舎に惹かれた理由、どのような想いをもって光生舎で働いているのかについてのお話をお聞きしました。
高田さんは、転職されて光生舎に入られたと伺いました。前職は東京で同じく社会福祉の職場に従事されていたが、地域や社会とのつながりを実感することが少なく、職員だけで入居者さんの生活やつながりを決めてしまうことの窮屈さに違和感を持っていたそうです。
 そのような思いを抱える中で高田さんは光生舎に出会い、光生舎の地域に対する開放的な姿勢や、地域や社会につながりを作っていくことができること、様々な事業を展開しているその自由度の高さに惹かれたそうです。また、光生舎の理念についても「すごい会社だな」と強く惹かれたことによって入社を決意されたという経緯があったそうです。
 光生舎では、職員一人ひとりがその理念に惹かれており、会社で重要な決断を下す際の判断基準とすることで、経営における理想と現場における実践の現実を擦り合わせているため、理念を継承し続けることができているのだと思います。創業当時、障がいを持つ方々の働ける場所を作るためにクリーニング工場としてスタートした光生舎は、入居者も職員も日々働くことや活動することを通じて、誇りを持った人生にするという理念を掲げました。その理念が今も尚、光生舎で働いている職員の皆さんに受け継がれていることで、入居者も職員も1人ひとりの個性が尊重され、いきいきと日々の生活を送っているのだと思います。

スチュ-デントアンバサダ-コ-ディネ-タ- 鳥本 優至


「私たちにとって、幸福とはどのようなものだろうか?そして、何が人々を本当に幸せにしてくれるのだろうか。安全に、健康に過ごすこと。生活が充実していること。良好な家族関係や友人関係に恵まれること。やりがいがある仕事を持つこと。さまざまなことが幸福をもたらす要素として思い浮かぶだろう。しかしどれか一つ欠けていては幸せになれないのか。逆に何か一つでも大切なものがあればよいのか。幸せな生活を手に入れるには自分の努力が必要なのか、あるいは社会のあり方がそれを可能にしてくれるのか。幸福にまつわることには実にはよくわからないことが数多くある。」(「これからの幸福について 」内田由紀子著から抜粋)

 光生舎の経営理念には「働く喜び」が明示されている。この「働く喜び」が「誇りある人生」を築き、自発的な「職場の改善提案」を生み出し、そこで働く社員の方々の積極的な仕事に対する意欲を引き出している。労働に対する処遇面において「国内上場企業並みの昇給率」であることも「働く喜び」を助勢している。光生舎で働く社員の方々の喜んで働く姿は、施設はご利用される方々にも伝達され「幸福感」をもたらしている。
経営者(創業者)の哲学や信念、価値観を基に示される「経営理念」。
昭和~平成~令和と時代が変わり、人々の価値観も変遷する中、光生舎の創業者である高江常男氏の経営理念の根幹にある「幸福感」はこれからも光生舎で脈々と生き続けると思う。

もみ・あお FACES ディレクター 山屋 恵嗣


今回のもみ・あおFACESは、新しくはじめた学生の企業訪問プログラム「もみ・あおスクール」で展開された内容を、学生の視点でまとめてみなさんと共有することを目的で記事化させていただきました。

「もみ・あおスクール」は、就活等忙しく活動する学生にとって、企業活動の裏側や、働く価値といった、働いた後に直面することを、企業の方にご協力いただきながら学べる機会を提供できればと思っております。

今回は、「日本でいちばん大切にしたい会社」でも紹介されているもみじ台に事業所が北海道光生舎さんにご協力いただきました。光生舎さんは、自らが右目も両腕も失った創業者が、『障がい者の働く場の機会』をつくるために創業された法人です。私は、このような法人の背景も知らずに、何度かこちらに訪問しスタッフの方と接する中で、この会社にはスタッフの共通項があると感じはじめました。1つ目は、スタッフの方が目を見てしっかり挨拶される方が多い。2つ目は、施設が常に明るく、綺麗。3つ目は、サービス業と感じられる社会福祉法人といったところでした。こんなことを感じさせてくれるのも、お会いしている高田さん自体が、光生舎のそんなポジティブな印象を体現をされている方で、相談したところすぐにご準備いただき、当日は会社の考え方、運営方法など奇譚なく学生の視点にも配慮いただきお話していただきました。誠にありがとうございました。
当日の詳細は、上にあるように北星学園大学院の村瀬さんが素敵にまとめてくれました。そして、中澤さん、武部さんも率直な疑問を高田さんに投げかけることで内容が深まった気がしております。参加してくれた学生が、組織で理念をどう伝えていくのか?、事業の課題をどう日々カイゼンさせていくのか? といった企業の取り組み内容に対して、大学との勉強とは違い刺激があったと言ってくれたのが、嬉しかったです。「もみ・あおスクール」は、大学の研究・勉強、インターンとは違い、より企業や組織の実像を学び、就職活動に別視点での付加価値となるプログラムとして継続していきたいと思います。
今後とも、もみ・あおFACESをよろしくお願いいたします。

以上



 


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