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デュアルモメンタム投資|セクターローテーションの実践と改善策 #11

今回の記事では、デュアルモメンタム投資の解説をより実践に近づけ、米国株のセクター別のETFを利用しその実用性を確認して行きたいと思います。

デュアルモメンタム戦略を活用したセクターローテーションは、市場のサイクルに合わせてポートフォリオを最適化するための強力な手法です。デュアルモメンタム戦略、セクターローテーション、そして投資最適化といったキーワードを通じて、市場の動きに応じた柔軟な投資を実現できます。

絶えず、経済環境が変化する中で、異なるセクターのパフォーマンスも変化しますので、それに適応していく事でパフォーマンスの向上を目指します。

尚、過去の記事を読んで貰っている事を前提としていますので、まだ読んでいないという方は、以下の記事を事前に確認して理解しておいて下さいね。

セクターローテーションが投資に有効な理由

セクターローテーション戦略は、主には相対モメンタムを活用して市場の波に乗り、トレンドに合わせて銘柄を入れ替えます。

例えば、皆さんも市場は常に変化している事は知ってるかと思いますが、あるときはテクノロジーが強かったり、また別のときにはヘルスケアや消費安定セクターが強くなったりしますよね。

その波にうまく乗ってセクターを切り替える事で、パフォーマンスの向上を狙います。

セクターローテーションの実例とパフォーマンスの比較

米国株のセクターETFはバンガード社、ステート・ストリート社の2社が存在していますが、今回はより期間の長いヴァンガード社のETFを利用してシミュレーションを実施して行きます。尚、実際にセクターローテーションのトレードを行う場合には、日本の証券会社で取り扱いのあるETFを選択する必要があります。

参考:バンガード社の取り扱う各セクター別ETF11種類一覧
情報技術:VGT(XLK)
一般消費財:VCR(XLY)
ヘルスケア:VHT(XLV)
生活必需品:VDC(XLP)
素材:VAW(XLB)
公益:VPU(XLU)
資本財:VIS(XLI)
通信:VOX(XLC)
不動産:VNQ(XLRE)
金融:VFH(XLF)
エネルギー:VDE(XLE)
尚、一部のセクターETFは日本の証券会社では取り扱いがない場合があるので、その際にはステート・ストリート社のETFを活用すると良いでしょう。
*()内は、ステート・ストリート社のETF

セクターローテションのシミュレーション結果にて有効性を確認

デュアルモメンタム戦略で全セクター別ETFにてシミュレーションしたパフォーマンスグラフ

上記はPortfolio Visualizerデュアルモメンタム戦略にて、米国株の全セクターETFとなる11種類のETFを利用してシミュレーションをした結果で、ベンチマークはSPDR S&P 500 ETF Trust (SPY)となり、設定値は以下の通りです。

  • ticker:VGT VCR VHT VDC VAW VPU VIS VOX VNQ VFH VDE

  • Absolute momentum asset:SPDR S&P 500 ETF Trust (SPY)

  • Specify out of market asset:SPDR Gold Shares (GLD)

  • Lookback Period:12 manths

  • Exclude Previous Month:YES(ノイズ対策)

  • Assets to hold:1

  • Trading Frequency:monthly

その他の詳細な設定値とシミュレーション結果は、こちらのリンクより確認して下さい。

無料版の方はtickerが10個まで、期間10年に制限されますので、VOX(通信)などを除外してシミュレーションしてみると良いでしょう。

デュアルモメンタム戦略で全セクター別ETFにてシミュレーションした結果
  1. End Balance:最終的な資金はSPY$67,585に対し、デュアルモメンタムモデルでは$123,594

  2. Annualized Return (CAGR):SPY10.53%に対し、デュアルモメンタムモデルでは14.08%

  3. Best Year:SPY32.31%に対し、デュアルモメンタムモデルでは57.99%

  4. Worst Year:SPY-36.81%に対し、デュアルモメンタムモデルでは-14.17%

  5. Maximum Drawdown:SPY-50.80%に対し、デュアルモメンタムモデルでは-30.31%

  6. Standard Deviatio:SPYよりリスクが上がっていますが、情報や通信セクターが入ってますので、仕方のない結果だと考えます。

特段、何も考える事なく全てのセクターETFにてシミュレーションしたにも関わらず、圧倒的に優れた結果であり、市場のトレンドという波に乗れた事が確認できた筈です。

尚、絶対モメンタムをゴールドを選択した理由は、市場が下落傾向と判断した際には、株式と相関係数の低いゴールドに資金をシフトする事で下落を回避する為ですが、債券などのassetを選択しても良いかと思います。

相関係数については、以下の記事で解説していますので参考にして下さい。

更にセクターローテーションを改善した結果

デュアルモメンタムのセクターローテーションを改善した結果のグラフ

先ほどのシミュレーション結果を元として一箇所のみ変更していますが、グラフの結果のみでもその有効性を確認出来たかと思います。

デュアルモメンタムのセクターローテーションを改善した結果のパフォーマンスサマリ
  1. End Balance:最終的な資金はSPY$70,276に対し、デュアルモメンタムモデルでは$224,809

  2. Annualized Return (CAGR):SPY10.32%に対し、デュアルモメンタムモデルでは16.99%

  3. Best Year:SPY32.31%に対し、デュアルモメンタムモデルでは43.95%

  4. Worst Year:SPY-36.81%に対し、デュアルモメンタムモデルでは-19.24%

  5. Maximum Drawdown:SPY-50.80%に対し、デュアルモメンタムモデルでは-42.91%

また、Sharpe Ratioや、Sortino Ratioについても優れた結果となっている事が確認出来たかと思います。尚、前回のシミュレーションを比較すると、Worst Yearや最大ドローダウンは共に悪化となってはいますが、それでもSPYと比較しても良好な結果だと言えるでしょう。

ここから先は有料記事です。Portfolio Visualizerのリンクで結果を確認出来ます。(注意:Portfolio Visualizerの無料プランの方は、10銘柄、過去10年に制限があります。)

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