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デュアルモメンタム投資と相関係数の重要性 #9

デュアルモメンタム投資を成功させるには、相関係数の深い理解が欠かせません。本記事では、デュアルモメンタム戦略において相関係数がどのような役割を果たすのか、また相関係数の基礎知識を具体例を交えながら分かりやすく解説します。投資の安定性とリターン最大化に不可欠な相関係数の重要性を理解することで、より効果的な投資判断が可能になるでしょう。

相関係数とは?

相関係数は、2つの資産の価格動向がどれだけ連動しているかを示す指標で、-1から1の間で表されます。

  • 1に近い値:2つの資産が非常に似た動きをすることを示しています。例えば、同じ業界のA社とB社の株価は似た動きをすることが多く、相関係数は1に近くなる傾向があります。

  • 0に近い値:2つの資産が全く関係のない動きをすることを示します。例えば、株式と金(ゴールド)の価格が互いに影響を与えない場合です。

  • -1に近い値:2つの資産が逆の動きをすることを示します。例えば、株式市場が下落する際に債券市場が上昇する場合です。

相関係数を理解することで、異なる資産の価格変動の連動具合を把握し、ポートフォリオ全体のリスクを抑えることが可能になります。

デュアルモメンタムと相関係数の役割

デュアルモメンタム戦略において相関係数が重要である理由は、リスク軽減とリターン最大化の両方に役立つためです。絶対モメンタムが下落傾向にある場合、相関係数の低い、または負の相関を持つ資産に資金を移すことで、ポートフォリオ全体の安定性を保つことができます。これにより、リスクを抑えながら損失を最小限にとどめることが可能です。

一方で、市場が上昇傾向にある場合は、相関係数が高く、リターンが期待できる資産に集中することで、利益を最大化することが戦略の狙いとなります。つまり、パフォーマンスの良い資産に資金を集約させることで、上昇局面での利益を大きくすることを目指します。

このように、相関係数は市場の状況に応じて資産選定を行うための指針となり、デュアルモメンタム戦略において柔軟かつ効果的なポートフォリオ管理をサポートする重要な役割を果たしています。

具体例:相関係数を活用したポートフォリオ構築

デュアルモメンタム戦略において、相関係数をどのように活用するか具体的に見てみましょう。

例えば、あなたが株式Aと債券Bに投資を考えているとします。過去のデータから、株式Aと債券Bの相関係数が-0.3であることがわかったとします。この場合、株式Aと債券Bはある程度逆の動きをしやすいことを示しており、これらを組み合わせることでリスクを抑えられます。

さらに、相対モメンタムを使ってどちらの資産がより好調かを判断し、絶対モメンタムでそれぞれのパフォーマンスがプラスであることを確認したうえで投資を行います。これにより、相関係数を用いてリスクを減らしながら、よりパフォーマンスの良い資産に集中することが可能です。

相関係数を活用する際の注意点

相関係数は過去のデータに基づいて計算されるため、将来的に同じ相関関係が続くという保証はありません。市場環境が変われば、資産間の相関関係も変わる可能性があるため、定期的に相関係数を見直し、ポートフォリオを調整することが重要です。

相関係数が変化する要因について

相関係数は固定されたものではなく、様々な要因に応じて変化します。過去には相関が低かった資産が、現在では強く連動するようになるケースもあります。

例えば、かつては新興国株式と先進国株式は相関関係が低く、異なる動きをしていました。しかし、グローバル化や経済の相互依存が進むにつれて、現在ではこれらの資産は非常に似た値動きをするようになっています。これは新興国の経済がアメリカなどの先進国経済の動向に強く影響を受けるようになったためであり、結果として相関係数が高まっています。

他の例としては、リーマンショック後の金融危機の際に、通常は相関が低いとされていた株式と債券の間でも、一時的に相関が高まったことがあります。これは、全世界の投資家が一斉にリスク回避行動(現金の比率を高めたなど)を取った結果、さまざまな資産が同じように売られたためです。

このように、相関係数は市場の状況や投資家の行動に応じて大きく変化することがあります。

市場の動向に大きな影響を与える要因として、次のようなものがあります。

  • グローバル化と経済の相互依存:近年、グローバル化が進むにつれて、新興国経済と先進国経済の間の相関が強まる傾向にあります。例えば、かつては新興国株式と先進国株式の相関は低く、異なる動きをしていました。しかし、現在では新興国経済が先進国経済に依存する度合いが強くなり、その結果、両者の相関が高まり、ほぼ同じような値動きを見せることが増えています。経済の相互依存が進むことで、株式市場同士の相関が高まることは、投資判断において非常に重要なポイントとなります。

  • 経済政策や金利の変動:中央銀行の金融政策や金利の変動は、資産間の相関に大きく影響を与えます。例えば、金利が引き上げられると、株式市場から債券市場に資金が流れる傾向があり、結果として株式と債券の相関関係が低くなることがあります。逆に、低金利環境が長期にわたると、株式と債券の相関が高くなることもあります。

  • 政治的不安定:政治的な出来事や不安定な状況(例えば、選挙や地政学的リスク)は、投資家のリスク回避行動を引き起こし、資産クラス間の相関に影響を与えることがあります。こうした要因により、安全資産である金(ゴールド)などが買われることで、株式との相関が低くなることがよくあります。

  • 市場のボラティリティ:市場のボラティリティが高まると、投資家はリスクを避けるために異なる資産クラスに資金を移すことがあり、それが相関関係に変化をもたらします。例えば、リーマンショックのような金融危機時には、通常は相関の低いとされる資産間でも相関が高まることが見られました。全世界の投資家がリスク回避行動を取ったことで、多くの資産が同じような動きをすることになりました。

  • 特定の業界やセクターの影響:特定の業界やセクターが注目されると、同業の企業同士で相関が高くなることがあります。例えば、エネルギー価格の変動がエネルギー関連企業に影響を与えると、これらの企業の株価同士の相関が高まります。

これらの要因を理解し、相関係数が変化する可能性を把握する事はとても重要です。
但し、私が目指しているデュアルモメンタム戦略は、短期的な相関関係の変化に対して柔軟に対応することは目指していなく、経済の構造的な変化やグローバル化による長期的な相関関係の強化に焦点を当てています。

そのため、短期的な変動には必ずしも対応せず、大きな市場のトレンドを捉えることを私は重視しています。

過去10年の相関係数

過去10年間の相関係数の確認表

portfolio Visualizerで過去10年分相関関係を確認してみた結果です。

例えば、SPYを軸で確認した場合、金や債券は相関係数が0に近く相関関係が低い事が解り絶対モメンタムが下落傾向の際の逃避先としての候補になりそうだという事がわかるかと思います。
逆に、QQQやACWIなどといったETFはSPYとの相関係数が高い為に逃避先としては適切ではないと判断できるでしょう。

但し、実際の活用時には相関係数だけではなくリターンはその銘柄の特性なども考慮する事で、より高いパフォーマンスを発揮出来ず筈です。

この辺りの深掘りは次回以降の記事で解説して行きます。

尚、各銘柄がどのようなものか解らないという場合には、以下の記事を合わせて読んでみて下さいね。

まとめ

相関係数はデュアルモメンタム戦略の成功にとって欠かせないツールであり、異なる資産クラス間のリスク管理を効果的に行うために活用されます。リスクを抑えつつ、絶対・相対モメンタムを活用してパフォーマンスの高い資産に投資することで、より安定したリターンを目指すことが可能です。

相関係数を理解し、皆さんの投資戦略にどのように役立てられるかを考えながら、次のステップに進んでみましょう。シンプルで効果的な戦略を駆使して、目標達成を目指してください。

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