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小島聡と拳王〜彼らが彼らであるために〜7.16日本武道館プレビュー

トップ画像は@shun064さんの作品です。
※今回の記事はこちらの動画を視聴していただくとよりニュアンスが伝わると思います。

7.16プロレスリングノアの日本武道館大会。メインイベントは王者小島聡と挑戦者拳王によるGHCヘビー級王座戦です。6.12CFFで潮崎豪からGHCヘビーのベルトを奪い取った小島。彼はその後もしっかりとノアの大会にも参加し、ノア内で存在感を高めてきました。その小島にいち早く挑戦表明をしたのは拳王。この二人のやりとりはコミカルな部分がフォーカスされますが、今回の動画を見ると少し印象が変わります。

小島と拳王は強欲な選手である。これが私の考えです。この動画でもわかるように小島は王者として活き活きとした姿を見せています。拳王が「あいつは若手の踏み台だ」と言っている姿は、少なくともノアでの小島の姿から感じられません。そして小島の躍動を支えているのは、他ならぬノアのファンだと私は思います。

ファンが小島に熱い期待をかけ、小島がそれに応える。そのサイクルがものすごい速度でなされている。元々ファンの声援を己の力に変えることに長けている小島が、この状況に乗らないわけがありません。今の状況に満足しているからこそ、その場を奪う人物=拳王に対してライバル視しているとも言えるでしょう。「お前みたいなベテランにノアの未来は任せられない」という拳王の言葉に対して「年齢で線引きするのか?」とノアの未来に自分があるかのように振る舞う小島。ファンから声援を得たい。それを力に変えたい。おそらくプロレスラーの性であるその欲を未だに持ち続け、それ発揮できる場を目指す小島はまさに強欲です。

一方の拳王は?拳王はこの動画で渡嘉敷ボクシングジムを訪れています。日本拳法の後輩と共に表敬訪問をしていますが、そこでの拳王のとある姿に私は強く目を引かれました。それは拳王がボクシンググローブを着用してサンドバッグへ打ち込みを行っているシーンです。

当然ながらプロレスで拳を固めた打撃は反則です。5カウント以内であれば許されますが、他の技のように多用はできません。そもそも拳王の武器は蹴りであり、取材用の練習で見せるなら蹴りのシーンの方がしっくりくるでしょう。

しかしこの日拳王が見せたのはパンチの練習でした。拳王のパンチは素人目に見てもシャープかつ威力のあるモノでした。この日だけではなく定期的に練習していることがわかる。そんなシーンです。

プロレスそのものに関係なくともグローブを着けたパンチの練習をする。もしかするとクロストレーニングの一環かもしれません。ですが私はそこに拳王の美学(プロレスラーは強さを目指さなければならない)を感じました。最高であれば最強は求めなくてもよい。そんな風潮もある中で、敢えて強さを追い求める。もちろんこの日の取材が渡嘉敷ボクシングジムだったことは偶然かもしれません。しかしその一瞬に垣間見ることができたのが。最高だけではなく最強を求める拳王の強欲さだと私は思います。

大ベテランになってもファンの声援を追い求める小島の強欲さ。令和の時代でも強さを追い求める拳王の強欲さ。動画にあったようにこの試合はノア対新日本ではなく拳王と小島のお互いの欲を掛けた。彼らのアイデンティティを掛けた。そんな試合なのかもしれません。




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