N-1 VICTORY【DAY1 9.12】武藤敬司VS杉浦貴〜相手を消さずに己の色を出す
※トップ画像は@shun064さんの作品です。
いよいよ開幕したプロレスリングリングノアのヘビー級リング戦N-1 VICTORY。
以前書いたように今回のN-1で私は、レスラー同士の領域争いに注目して試合を追っていこうと思いました。
さて開幕戦となった9.12後楽園ホール大会。この日の試合でその領域争いが一番面白かったのが武藤敬司VS杉浦貴です。独自の世界観を持ち「勝っても負けても武藤敬司の試合にしてしまう武藤」。対するはハードな技に目が行きがちながらも実はノアで1、2を争う懐の深さを持つ杉浦。私の感想でいえば杉浦が武藤の領域に足を踏み入れて自分の良さを出したという印象です。杉浦は序盤の速攻で一旦自分のリズムを掴み、そこから武藤得意のグラウンドの攻防に持ち込みます。両者ともにアマチュア競技ので高い戦績を持つ選手同士。すぐさま上のポジションをとり、自身の体重で相手の体力を奪い。そしてそこから腕と足をサブミッションで攻める武藤。杉浦は武藤の形で攻められ苦しい状態が続きます。特に試合中盤の足4の字地獄は厳しいものでした。技をかける側の武藤が「もうリーグ戦できなくなるぞ」とレフェリーと杉浦に言葉を発する程です。
武藤の足4の字地獄を耐えきった杉浦はフロントネックロックで一旦形勢逆転。さらに投げっぱなしジャーマンとランニングニー、コーナーでのエルボー連打と反撃を続けます。27分過ぎの五輪予選スラムこそ不発でしたが、試合終了間際までフロントネックロックで締め上げ、もう一度五輪予選スラムにトライ。これは武藤が必死にキックアウトしますがここで無念の試合終了。
武藤の戦略によるドローという意見もありましたが、杉浦は武藤の土俵であるグラウンドの攻撃を耐え続けました。相手の攻撃に耐え続け、そこから反撃に転ずるというのは杉浦の持ち味の一つです。また武藤は勝てなくてもグラウンドで相手を圧倒することで「武藤敬司強し」を見せつけることが多いです。しかし杉浦が試合終盤スパートをかけてドローだったことで「あと10分あれば杉浦が勝っていたかも」という印象を植え付けることはできました。色んな視点はありますが、杉浦が武藤の領域に足を入れつつも己の良さを出した試合だと私は感じました。杉浦の懐の深さを知らしめた試合とも言えるでしょう。相手の良さを消さずに光らせる。そのうえで自分の良さを出す。このあたりの杉浦の深みはあの三沢光晴に通づるものがありますね。
Aブロック優勝候補同士が勝ち点を分け合うこととなり、今後の清宮海斗や征矢学の動向にもより注目が集まります。またその他のブロックも優勝候補同士の試合や怪物のぶつかり合い、相手をいなし化かす試合なども面白い試合が沢山ありました。
次は9.18_19_20の無観客配信試合になります。WRESTLE-UNIVERSEでの生配信もありますので、是非ご覧ください!