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中嶋勝彦〜プロレスリングノアの王が持つ引力

プロレスリングノアのフラッグシップタイトルであるGHCヘビー級王座。2022年1月6日時点でそのベルトを腰に巻いているのは中嶋勝彦です。1月5日の新日本プロレス東京ドーム大会に「殴り込み」を仕掛けたプロレスリングノア。そこでマイクを持ったのはノアの現在の王である中嶋ではなく、清宮海斗と拳王でした。

個人的にはこの場で中嶋に言葉を発してほしかったし、ベルトを持って「俺が王だ」とPRしてほしかったところはあります。しかしふと思い返してみると、いつものようにコーナーポストに座り、リングを上から見下ろす。そんな俯瞰的なスタンスこそ中嶋の得体のしれない魅力を最も表現しているかもしれません。では中嶋の魅力は一体どんなところなのか?今回はそれについて考えてみたいと思います。私が考えた中嶋の主な魅力は次の3つです。

1.どんな相手の土俵にも乗れるスキルの高さ

トップレスラーにおいて必須なスキルである「誰とでも好試合ができる能力」。それを高い次元で有しているのが中嶋です。ここで特徴的な2つの試合をご紹介します。

上段が2020年6月に行われた井上雅央とのGHCナショナル王座防衛戦。下段が2021年10月に行われた拳王とのN-1決勝(ノアのヘビー級シングルリーグ戦)です。方やコミカルな魅力が持ち味の井上。方やハードな打撃が持ち味の拳王。中嶋は全く異なる長所を持つ相手と試合を行い、どちらも相手の魅力を引き出しつつ好試合を行っています。相手を一方的に潰して自分の良さを出すという選手もいます。しかし中嶋の場合そうはならず、しっかりと相手の土俵に乗ります。だからこそ相手の魅力を引き出し、好試合を連発することに繋がるのです。これはひとえに中嶋の持つスキルの高さ(どんな相手のやることでも対応できる点)を示しています。ちなみにそれが最も発揮されたのはこの試合だと思います。


2.身体能力の高さ

中嶋といえばキックというイメージが強いと思われがちですが、その打撃を支える身体能力にも魅力があります。あまり飛び跳ねる技を使わないので目立ちづらいですが、コーナートップロープからのミサイルキックの高さ。リング上や場外を駆けるスピード。このあたりは実際に試合を見ると凄さを体感できると思います。上記の試合でもこれらの技は放たれているので、ぜひご覧ください。また受身におけるキレも身体能力の高さで為せる部分です。

この試合で拳王が雪崩式のドラゴンスープレックスを放ちますが、中嶋は視線でしっかりリングを捉え己の体を反転させて受身を取っています。また下記の試合の受身も同じです。視線を切らず己の体を空中でしっかりコントロールして大ダメージを避ける。もちろん技術もありますが、自分の体を自在に制御できる高い身体能力(身体感覚と言ってもいい)を中嶋は持っています。


3.観客の目を追いかけさせる引力

これは「この試合」と挙げることが難しいです。というのは中嶋のおおよその試合で共通している、そして私が中嶋の魅力の根幹だと考える部分だからです。有観客無観客関係なく、常に自分に対してファンが視線を集めていることを自覚し。視線に対して反応する。

具体的に言うとカメラの動きを確実に捉えているところですね。どこにカメラ(観客の視線)があるか?どうすれば自分がカメラに映るか?カメラ目線でのアピール過多かと思いきや、終盤のラッシュでは視線を外す。しかしフィニッシュ時には再び視線を送る。観客の視線を追いかけるでなく。気まぐれな視線によって観客に己を追わせる。このあたりのバランスが絶妙ですね。またSNS全盛時代でも己の内面を簡単に出さないことで「何を考えているかわからない」。だかこそファンが中嶋を知りたくなる=中嶋に引き寄せられる。こうした要素が重なり中嶋の引力に多くのファンが集まっています。

誰にでも対応できる。そのためジョーカー的な立ち位置に甘んじることが多かった中嶋ですが、2021年下半期の激闘(N-1優勝→GHCヘビー戴冠→GHCナショナルとの統一戦60分ドロー)。そして2022年1月1日の潮崎豪戦勝利。そうした経験を積み中嶋はノアのジョーカーからついにキングへと化けた。私はそんな感覚を持っています。

王であるからこそ常に上から見下ろす。最初に述べた「コーナートップロープから全員を見下ろす姿」はまさしく王の姿だったのかもしれません。そして王が纏う不思議な引力によってファンが吸い寄せられます。

2022年はノアと新日本の対抗戦が行われる歴史的なタイミングです。その時期に王として中嶋が君臨する。中嶋が王として新日本とどのように戦うのか?ノアファンだけではなく、新日本そして多くのプロレスファンの目に王者中嶋の姿を焼き付けてほしいです。

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