9.1三冠戦青柳優馬vs宮原健斗〜黄金ではなく赤と青そして虹〜
※今回はアディショナルタイムとして有料部分を追加してあります。基本的に無料部分で話は完結しておりますのでご安心ください。尚アディショナルタイム部分はメタ的な要素が多分に含まれておりますので、そうした話題が苦手な方は避けたほうがよいです。
「台風一過の福岡の空に色鮮やかな虹が映し出された」。これが9.1福岡大会を全日本プロレスTVで視聴し終えたぼくの感想でした。三冠王者青柳優馬と挑戦者宮原健斗による三冠戦。このカードは23年の10月にも同じ立ち位置で行われ、その時は青柳優馬が防衛を果たしました。
今回の試合は昨年の試合をさらに現代プロレスにアジャストさせモノだとぼくは感じました。現代プロレスでは攻守交代(いわゆるトランジション)が大事です。トランジションをいかにして行うか?身体能力を活かしたスピードなのか?それともパワーなのか?テクニックなのか?
いずれにせよ説得力のあるトランジションがなければ、その試合は単なるぶつかり合いになってしまい、クオリティが上がりきりません。またトランジションをどう行うか?は選手の個性にも繋がります。小川良成なんかはまさにそうですね。曲者臍曲がり(褒めてますよ)だからこそのテクニカルなトランジションが活きているように。
そこから考えると今回の試合ではトランジションの部分に2人のらしさ(2人にしかできない部分)がありました。序盤の場外戦や単なるロープワークの中でも。お互いが相手の先を読もうとして動き、あくまでも読み合いからのトランジションが多くありました。このあたりは青柳の「陰湿さという何をしてくるかわからない不気味な要素」というキャラクターが活きてきたところからも。試合を支配したのは王者青柳の方だったかもしれません。宮原の世界観を技術で打ち消すという匂いも感じました。
では宮原の世界観は青柳に飲まれたのか?いやいやそうではありません。試合終盤に青柳のエンドゲームで捕獲された宮原。四方のロープも遠い。万事休すか!と思われた中。満員のケントコールを受けて捕獲されたまま立ち上がり抜け出す宮原。これはもう技術や論理ではないです。宮原だからこそできるトランジションであり。こうした部分を出せた以上、宮原が青柳に完全に飲まれたとまでは言えません。
そうした個々のキャラクター性を活かしたトランジションに加えて。お互いが一発づつフィニッシュホールドを繰り出しても耐え抜くという「限界の向こう側」を見せてくれた試合でした。
勝負を分けたのは「ブラックアウトを狙い走り込む宮原をラリアットで迎撃する青柳」でした。青柳がラリアットという普段使わない(というか使ったことあるのか?)切り札=宮原の頭にない方法をここで抜いたことで。勝利を掴む二発目のザ・フールへ繋げることができました。
余談ですがラリアットといえばそれこそ青柳が若手の頃から諏訪魔に喰らい続けたもので。トランジション合戦の果てに咄嗟に出たのがラリアットだったのは趣が深いです。
試合前から青柳はこの青柳vs宮原というカードを黄金カード呼ばれるようにさせたいと発言していました。このカードは黄金ではなかったかもしれません。しかし両者、そして全日本プロレスのイメージカラーである赤と青として鮮やかにその色を見せつけてくれました。
「黄金のほうが上じゃないか?」と思われるかもしれません。しかし黄金は眩しすぎます。今の全日本プロレスは黄金という一つの色ではなく。赤、青、黒、紫、黄と様々な色が束になって鮮やかになっており、それが魅力でもあります。奇しくも虹は赤系が上段、青系が下段に配色されるようです。赤と青(宮原健斗と青柳優馬)が包み込み様々な色を内包する虹だからこそ、今の全日本プロレスは鮮やかなのだとぼくは思います。
だからこそこのカードは黄金ではない。赤と青のカードなのです!
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