潮崎豪の300分6秒 第四章.8.5「 I am real noah」 VS丸藤正道〜30分56秒
※トップ画像はTwitterのフォローをさせて頂いている@TACK59089236さんの描いた絵です。
第一章.1.4「新しい景色は俺にしか創れない」 VS清宮海斗〜27分42秒
第二章.3.29「潮崎選手は漢です」 VS藤田和之〜57分47秒
第三章.6.14「これで負けたけどさ、俺次に進むよ」 VS齋藤彰俊〜29分22秒
第四章.8.5「 I am real noah」 VS丸藤正道〜30分56秒
第五章.8.10「正真正銘1番強いやつを決めようぜ!」 VS拳王〜60分00秒
第六章.11.22「出戻りチャンピオン!」VS中嶋勝彦〜42分35秒
第七章.12.6「I am noahは俺に勝ってから言え!」VS杉浦貴51分44秒
第四章.8.5「 I am real noah」 VS丸藤正道〜30分56秒
「俺のいる場所がノア」。丸藤正道はノアの経営母体が変わるたびに、その言葉を発してした。ノアに経営危機が訪れ、ファンに動揺が走ることはあった。しかし丸藤は「俺がいる限りノアはノアである」と言い続け、ファンの心をノアに繋ぎ止めてきた。そうした彼をいつしか「ノアの象徴」と呼ぶ声も出てきた。あるときは王者。あるときは副社長。丸藤はあらゆる役目をもってノアに関わり続けてきた。思えばあまりにも多くの役目を彼に求め過ぎていたのかもしれない。いつしか丸藤はレスラーとしては、ノアの最前線から少しずつ距離を置くようになってきた。
もう丸藤がシングルに向かうことは無いのか?私がそう思いつつあった、ちょうどそのときである。潮崎豪が「I am noah」と叫ぶようになったのは。潮崎はその言葉通りにノアを背負い、GHCヘビーの防衛戦を重ねていった。長い無観客試合の期間を経て、ようやく7月になりノアでも有観客試合が解禁となった。そのまさしく最初の試合。武藤とタッグを組んだ丸藤は、新兵器真・虎王で潮崎から完璧な形のフォールを奪った。
そして潮崎の王者としての凄さを讃えた上で「I am real noah」と叫び、潮崎のベルト挑戦を宣言した。お前は凄い選手になったよ。だけど「ノアを背負う」ということはそんな簡単なもんじゃねえぞ?!お前にそれができるのか?あらゆる面でノアを背負ってきた丸藤だからこその言葉である。その試合がノアの旗揚げ記念日に行われる。二人の年齢差を考えれば世代交代とは言えない。単純な世代交代ではく、そこに掛けられたのは「ノアの重さ」だったかもしれない。
前哨戦から様々な手段で潮崎の肩を攻めつづけた丸藤。この日もそこに照準を絞り、攻撃を続ける。シリーズを通して相手の一部を痛めつけるという古典を紐解いたかと思えば、フロムコーナートゥコーナーで大空を駆ける。そして更には不知火、そして新兵器の真・虎王。丸藤はこの20年積み重ねてきた全てを潮崎にぶつけてきた。
リング中央の真・虎王で勝負あったかに思えた。しかし丸藤の全てを受けきって、潮崎はなおも立ち上がる。それはまるで「お前のノアへの想い、そして未来への願い」「全て受け止めてやる!」と言わんばかりの耐え方であった。
試合の流れを変えたのは潮崎の繰り出したエメラルドフロウジョン。そしてローリングエルボー。この技は丸藤が一度は手にした時代を再び離すこととなった因縁の、そしてノアの象徴たる技だ。丸藤に対してこの技を出す。それはとてつもなく重い行為である。そこに説得力を備えねば。試合に勝っても「ノアを背負うこと」は出来ない。
果たして潮崎の出したその技は丸藤に大きなダメージを与えた。都合2発のエメラルドフロウジョンを受けた丸藤に、最早反撃の力は残されていなかった。渾身の握り拳を握りしめた潮崎がトップロープから宙を舞い、丸藤の意識を完全に断つ。潮崎はreal noahから完璧な形で勝利した。
丸藤に勝利すると同時に「ノアを背負う」という役目も受け継いだ潮崎。その潮崎に対して、初めて「必要なのは過去じゃねえ」「今のノアを賭けて勝負しろ!」と叫んだ男がいた。新しいノアのアイコンである「真紅のベルトの王者」。彼が発した言葉はまさしく「前代未聞の挑戦宣言」であった。