拳王【引き金を引いた始まりの男】〜プロレスリングノア
来週Abemaで放送するノアTVマッチ。
https://www.noah.co.jp/schedule/207/
清宮海斗を推す番組ですね。
なので清宮について書こうかと思いました。「ノアの新時代を築いた」「新エース」。確かに今のノアの勢いを語るには、清宮について触れるのが一番でしょう。しかし今のノアの勢いの源流が何かと考えたら、真に語るべき選手は別にいます。弾丸として飛び出たのが清宮であるとすれば、「引き金を引いた始まりの男」。その男の名は「拳王」。
そのために、まずは時計の針を2017年まで巻き戻しましょう。2017年のノアは鈴木軍を撃退し、新たな門出を迎えたかに見えました。確かに前年までは、鈴木軍登場によって不透明決着が増え、悪く言えば「観客が笑顔で会場を帰れない」状態が続いていました。鈴木軍さえ撃退すればノアに良い流れが来るのでは?という淡い期待もファンの中にはありました。
しかし鈴木軍という劇薬を失ったノアは苦しい状態に置かれます。若きGHC王者中嶋が連勝を重ねるも、戦いのテーマが見えづらく、集客も中々改善しませんでした。鈴木軍という劇薬に慣れてしまった観客は去り、劇薬に嫌気をさした観客を戻すに至らぬという厳しい流れでした。私自身「そんなに大きな大きな期待はしないから」「とりあえず団体として生き残ってくれればいい」と感じてしまう状態でした。
GHC王座は中嶋が長期政権を築くも、夏にエディエドワーズに破れ、タイトルを海外に流出させることとなります。エディはノアで修行を積み、緑のタイツに代表されるように、三沢の匂いを感じさせるレスラーです。酷な言い方をすれば「新時代が過去に負けた」と言える図式ですね。
今年もこのまま終わるのかなあと、なんとなく上を向けない感情を抱いていた私でした。しかし11月にそれを一変させる事態が発生しました。ノアのヘビー級のリーグ戦であるグローバルリーグ。この年は王者エディ不在ということで、次期挑戦者決定戦の側面が強かったシリーズです。ここで凄みを出したのが他でもない拳王です。
拳王はこの年からヘビー級に転向し、GHCタッグ王座を獲得するなど、勢いに乗っていました。日本拳法の猛者であり打撃を武器にする一方、飛び技を頻繁にくりだす現代的な華麗な試合運びはできない。しかし無骨に受け、愚直に激しい打撃を繰り出すという試合で白星を重ねていきます。そして決勝では潮崎を降し、ノアのヘビー級頂点に君臨します。さらに優勝後のリングである言葉を発します。
「てめえらクソ野郎共を武道館まで連れてってやるからな」
その瞬間、映像でもわかるくらい後楽園ホールが爆発しました。
「三沢がいないから仕方ないよね…」
「小橋も引退したし仕方ないよね…」
「団体が残っていればいいよね…」
「ノアのファンが調子乗ってるとか言われたくないなあ…」
これは私の当時の感情でした。恐らくこれに近い感情を抱いていた方も多いでしょう。いつしか私は周りの目を気にして下ばかり見ていました。
そんな私に拳王が言いました。「お前らの本当の望みは武道館だろ?」「無茶だのなんだのじゃねぇ」「お前らがホントに行きたいなら下向くな、周りの目なんて気にするな、前だけを見ろ」。このときばかりは自分が後楽園ホールにいなかったことを心から後悔しました。
拳王のこの言葉があったからこそ、ようやく私は前だけを見て進めるようになりました。他の団体ファンの目がどうとか関係ない。自分たちがホントに行きたい場所を目指そう。そんな気持ちにさせてくれました。
その後拳王は勢いのまま12月にエディからGHC王座を奪還し、名実ともにノアの頂点に君臨しました。拳王は言いました「三沢光晴を知らない人間がGHCヘビーを初めて取った」「これからが新時代だ」。そしてその言葉に呼応するがが如く、試合後のリングに、清宮海斗が海外から帰還。拳王に挑戦表明し、時代が進み始めました。
もちろん今のノアの勢いは「潮崎の目覚め」「狂乱の貴公子中嶋」「復活した強さの象徴杉浦」「真の自由を得た丸藤」「新エース清宮」といった多くの選手の奮闘。また元親会社のリデット社、長年スポンサードしているザ・リーヴ、サイバーエージェント社の尽力など、様々な要素で成り立っています。
しかし、ファンの意識を変え、この流れを呼び込んだ始まりの男はやはり拳王だと言えるでしょう。大げさではなく、今のノアの躍進は拳王の言葉から始まったのです。
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