金木犀の夜
座椅子はとても心地が良い
人間の骨盤の形や、日常生活で疲れやすい下半身の筋肉の部位、顧客のリラックス状態を究極まで追い求めた、企業努力のかたまり、それが座椅子
座椅子にマイナスイメージがなかった私にとって、つまらないセックスの喩えに座椅子を用いた彼の気持ちは到底推し量ることのできないものだった
確かに座椅子は特に面白くはない
でも「キコキコ…」というリクライニングのときの音や生地の少し痒くなる質感、性的に見てもそこそこ味があるのではないか
ただ私の祖父は我が家に来ると定位置のように座椅子にずっといるくらい、座椅子は祖父のお気に入りだった
座椅子という単語を聞くとちょっとだけ「おじいちゃん」という感じがする、だから私もきっと彼氏が座椅子みたいなセックスしてきたらちょっと嫌かもしれない
マグロは怖いけど1番じゃない、私はサメ映画が好きだから、サメの方がヒト食いって感じがする
蛭子能収についてあんまりちゃんと考えたことがなかった
テレビはSHARPよりも何だかTOSHIBAの方が生々しいことに私はなんでずっと気づけなかったんだろう
判らない
私には水川かたまりの頭の中がどうしても判らない
それなのに考えれば考える程、彼が正しい
彼が自然の摂理そのものだとさえ思う
どんな生き方をすればこんなことが思いつくのかな、私も岡山で生まれればよかったのか?母親が金八先生を観せなければ、父親が喫煙者だったら、サッカーをやっていたら、慶應義塾大学を3ヶ月で中退していれば、高校時代の元カノに裏原で密会していれば、ラジオで号泣しながらプロポーズしていれば、キングオブコントの決勝に出ていれば、私も彼に近づくことができたのだろうか?
先天的な言葉のセンスはないと信じている
環境がきっと彼をそうしたけど、その環境を完璧に辿ることは不可能で、人はその生きた分だけの時間全て、その後の人生に何かをもたらす、だから私は30年足らずを埋めなくてはならない、無理だな
共感して、共鳴するのに、絶対に追いつくことがない、できない、私にはどうしてもこんな文章が書けない、こんなに頭がおかしい人間を見たのは生まれて初めてです
すごい人だ、だからそういうの全部全部込めて推しと呼ぶ、呼ばせてください
推しはあと10日と2時間弱で30歳になるらしい、さっき調べた
何となく秋生まれな気がしていたのはきっと、金木犀の似合う独特な雰囲気と、それから、私が空気階段のラジオを聴き始めたのが秋頃だったから
初夏生まれ、如何にも眩しい属性で、でもそれもまた呑み込むような不思議な存在
今度生まれてくるときは誠司くんか、水川かたまりがいいな。