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実例に学ぶ「アプリマーケティングにおけるCTV広告の活用法」―ad:tech tokyo 2024参加レポート(1)

皆さまこんにちは! Molocoです。昨年に引き続き、Molocoはアドテク業界の普及と発展に向けて「ad:tech tokyo 2024」のプラチナスポンサーとして協賛し、アドテク事情の最前線がわかる独自セッションを開催しました。今回はそんなセッションのなかから、実際の施策事例を基にした「アプリマーケティングにおけるコネクテッドテレビ(CTV)の活用法」の内容をご紹介いたします。


なぜ今CTV広告が注目されているのか

幅広い層へリーチでき、スマートフォン(スマホ)やタブレットとのクロスデバイス体験を促進できるCTV。アプリマーケティングにおいてもその活用法が注目されています。今回Molocoブースの最初のセッションとして、日本事業責任者の豊福 直紀が、アプリ計測・アナリティクスプラットフォームのAdjust日本ゼネラルマネージャーの佐々直紀氏と共に、CTV施策に取り組むエアトリ マーケティング部の泉淳氏、フジテレビ ビジネス推進局 コンテンツビジネスセンター プラットフォーム事業部長の野村和生氏を招き、アプリマーケティングにおけるCTVの効果と活用法について語り合いました。

Adjustの佐々氏は、CTVについて「2024年現在、約57%に当たる国内3200万世帯に導入されており、今後さらに普及していくと思われます」と述べ、アプリマーケティングにおけるCTV広告の利点を次のように説明します。

CTV広告市場の拡大

2023年から2027年までの期間、動画広告市場全体は164%の成長が予想されているのに対し、CTV広告は190%とより大きな成長が見込まれています。またCTVは今後も普及していくため、デジタル/テレビ視聴者を合わせた膨大なオーディエンスを獲得できます。

マスへのアピールが可能

スマホと異なり1画面平均1.7人と共視聴が可能で、2人以上で視聴する割合は35.4%に上ります。そのため一度に多数のユーザーにアピールできます。

広告効果の高さ

CTVは大画面のため訴求力が強く、視聴完了率が高いという特徴があります。またスマホと親和性が高いためスマホのアクションを促しやすい点も大きなメリットです。

エアトリが考えるCTV広告の価値:「アシスト力」と「ユーザーの質の高さ」

そんなCTV広告施策を半年前からスタートしたのが、総合旅行サービスのエアトリです。エアトリはホテルも含め、航空券の一括比較・予約ができるサービスで、いかにユーザーに予約購入を促すかがマーケティングのポイントでした。サービス自体の認知向上に向けたテレビCMも展開していますが、「テレビCMは実際の効果が把握しにくいため、CTVであれば認知と予約購入の両方を計測できるのではと期待し、CTV広告をスタートしました」(泉氏)と話します。

当初、Adjustの計測ソリューションでCTV広告の成果を測ったところ、他媒体と比べてCPI・CPA・CPMすべてにおいて「同等か高い」という結果が出たそうです。しかし細かく計測データを分析するなかで貴重なインサイトが得られました。

まず「CTV広告で獲得したユーザーの継続率」です。CTV広告で獲得した新規ユーザーの継続率は他媒体と大きく変わらなかったものの、復帰した休眠ユーザーの継続率は他5〜6媒体と比べ「最も継続率が高い」という結果が出ました。泉氏は「旅行の熱量が高いユーザーにしっかり訴求できたと考えています」と述べています。

またAdjustの「アシスト分析機能」でデータを深堀りしたところ、CTV広告は「他社のインストールのラストアトリビューションをアシストする」力が高いことがわかりました。1つの媒体だけでなく、さまざまな媒体に対してアシストしている点が大きな特徴で、アシスト力はトップだそうです。

さらにCTV広告によって復帰した休眠ユーザーを分析したところ、約8割が離反30日以上の長期離反ユーザーであることが判明しました。一口に離反ユーザーと言っても、やはり短期離脱層へのアプローチの方が成果が高くなります。なぜCTV広告が長期離脱ユーザーに効果的なのかという理由について泉氏は、「CTV広告はマス広告に近いので、膨大な長期離脱ユーザーに効果的に訴求できたのではないかと考えています」と話します。

エアトリ_事例:CTV広告を実施した感想

泉氏は「今後も成果を計測し続け、アクティブユーザー数の推移を見ていきます」と話し、続けて「CTV広告は他媒体と比べるとアトリビューションがつきにくいため、一見しただけで成果を捉えにくいのですが、計測ツールでインサイトまで分析することで成果を正しく把握できると思います」と活用のヒントを明かしました。

TVer・YouTube・地上波、各広告の“真の実力”を検証したフジテレビ

続くフジテレビは、広告掲載メディア事業を展開しつつ、アプリ運用事業も手掛けており、両領域において深い知見を持っています。今回野村氏には、CTV広告や地上波CMに関する2つの実証施策の成果を発表いただきました。

1つは、フジテレビの配信サービスであるFOD広告とTVer広告について、CTVとスマホのどちらが効果的か、広告素材の違いがアプリインストール数にどれだけ影響があるかを比較したものです。広告の挿入箇所(番組中の広告か、番組終了後の広告か)についても比較しました。

結果は、スマホミッドロール広告(番組中の広告)を1とすると、CTVポストロール(番組終了後に配信したCTV広告)のインストール数は3.5倍、CTVミッドロール(番組中に配信するCTV広告)は5.5倍でした。スマホよりもCTVの方が効果は高いようです。

野村氏が発表したもう1つの事例は、地上波CM・TVer広告・YouTube広告の成果の違いです。これは2021〜2023年の期間において、この3つの広告を展開した9業界23法人36ブランドの成果を測定した結果だそうです。

獲得コンバージョン効率では、YouTube広告とTVerは同等で、地上波CMが最も低いという結果が出ました。またTVer広告/YouTube広告は検索効果も高く出ました。

ただし地上波CMは、効率性こそ低く見えるものの、投下量が大きいので獲得量も膨大という特徴があります。またユーザーへの影響力も、3つの広告中最も長期間残ることがわかりました。地上波CMを活用すれば、新規獲得や休眠復帰へのアシスト力向上が期待できそうです。

残像効果

なおTVer広告の効率性は、CTV広告の配信割合と連動していることがわかりました。TVer広告の効率が上がると、それに応じてCTV広告が増えているからです。「TVer広告はコンテンツ内容からも地上波CMと同質性の担保ができますし、また事前考査も行っているため、安心・安全性の高い広告枠です。最近はCTVの割合が4割超えているので、TVer広告の効率はさらに上がっていると思います」と野村氏は話します。

CTV広告をアプリマーケティングで活用するコツ

以上の実例紹介を受け、CTV広告の成果をツールで検証しながら効果的なマーケティングを進めるポイントを紹介しました。

第1に、CTV広告の成果に基づいて地上波CMを展開すること。Adjustとビデオリサーチの共同検証によると、インストールやアシストで成果のあったCTV広告を地上波CMとして展開すると、ほぼ似た成果が得られるとのことで、「地上波CMのテストとしてCTV広告を活用できます」と話します。

第2に、CTV広告の成果は単純なインストール数ではなく流入元の継続率やLTVにフォーカスして検証すること。泉氏の実例にあったとおり、検証ツールではラストクリックをアトリビューションとして捉えるため、CPIベースでは成果が出にくい傾向があります。質に焦点を当てて成果を検証することが大切です。

第3に、アシスト分析でCTV広告のアシスト力を評価すると共に、メディア自体のコンバージョンも確認すること。頻繁に広告が表示されると、メディア自身が自分をアシストする現象が発生するからです。純粋にメディア自体がどれほどコンバージョンしているのか、そして他媒体の広告がどれくらいアシストしているのかを見ることで、正しくメディアを評価することができます。

また「CTV広告ではぜひQRコードを活用してください。米国では広告でQRコードを表示しインストールを促していますが、QRコードが画面に現れることで『スマホをかざしたい』と一時停止を促すことができます。今後、日本においても一時停止が可能となったり、QRコードを表示するL字型表示など広告商材が広がっていくことを期待しています」と佐々氏は話します。

最後にエアトリの泉氏は「これからも計測ツールを活用して媒体効果を正しく評価しながらCTV広告を展開したいです」と述べ、フジテレビの野村氏は「CTV広告でABテストを実施して地上波CMを出稿するという新しい手法が今後普及していくと思います」と展望を示し、セッションは終了しました。