韓国モバイルゲーム業界の動向:2020年版
オスカーを受賞した「パラサイト」、ドラマ「愛の不時着」、そしてBTS。過去数年の間に、韓国は世界のエンターテインメント業界における焦点として地位を、サムスンやヒュンダイに代表されるハイテクの国という評判に付け加えました。
そして、ゲームもまたエンターテインメントとテクノロジーの交差点に位置する業界であり、韓国が世界中でカジュアルゲーマーとハードコアゲーマーの両方に愛されるゲームを多く排出し続けていることは不思議ではありません。
北東アジアは私たちMOLOCOにとって重要な市場であり、それはAppsFlyer社が発表するパフォーマンスインデックスにおいて、日本・韓国地域でMOLOCOが5位以内にランクインしていることからも明らかです。
MOLOCOはアジア最初のオフィスを2014年、韓国のソウルに設立しました。それ以降、韓国の多くのトップゲームパブリッシャーとデベロッパーを含む、主要なテクノロジーおよびエンターテインメント業界のマーケターに対し、高いクオリティのオーディエンスを獲得する手助けを行ってきました。
今回の投稿では、世界でもっとも大きくかつもっとも早く成長しているモバイルゲーム市場のうちの1つである韓国の業界について、どれほど大きいのか、どのように成長しているのか、トップのゲームやパブリッシャーは何か、消費者の特徴は何か、といった概要を簡単に理解できるよう、さまざまなデータをご紹介します。
韓国モバイルゲーム業界の市場規模
韓国の行政機関である文化体育観光庁が発表した「2019 韓国ゲーム白書」(*)によれば、モバイルを含む韓国の全ゲーム市場の市場規模は2018年に14.2兆ウォン(日本円で約1兆4,000億円、2018年末の為替レート)に達し、世界4位の規模となりました。またそのうちモバイルはデバイスカテゴリとして最大の46.6%(約6,524億円、同上)を占めています。
アプリのストアにおいては、全売上の79.6%がGoogle Playからもたらされた一方、AppleのApp Store経由の売上は8.3%にとどまっています。App Storeよりも高いシェアを記録したのがOneStoreで、全売上の12.1%を占めました。OneStoreは、韓国の主要携帯キャリアであるKT、SKテレコム、LGユープラスがタッグを組み、2016年に設立したAndroidのシェルストアです。Google PlayとApp Storeがともに30%の手数料を取る中、OneStoreは料率を20%に抑えることにより、韓国内でのシェアを伸ばしています。
フォーマットにおいては最大のモバイルにPCが続いており、コンソールのシェアが非常に小さい点は、日本と大きく異なります。
また「その他」にカテゴライズされる売上の大半は、ゲームルームと呼ばれる、高速インターネット接続と、最新のゲームがインストールされたハイパフォーマンスのコンピュータを備える、韓国特有のPCゲームカフェの売上に占められます。
こうしたゲームルームでは、若いゲームユーザーが最新のゲームをプレイしたり、また友人と一緒に人気のゲームをプレイしたりするために集まり、韓国におけるゲーム文化の重要な要素となっています。ゲームルームの料金は、マシンやゲームタイトルに関係なく、1時間単位で請求されるのが一般的です。
* ゲームルームのお店:Peak PC
https://www.yna.co.kr/view/AKR20200107057800005
またゲームは、韓国にとって貿易黒字を稼いでくれる重要な輸出産業でもあります。2018年の1年間でゲームの輸出額は6.4兆ウォン(日本円で約6,300億円、同上)に上り、最大の輸出先は輸出総額の30.8%を占める中国でした。また日本も韓国ゲームの輸出先として全体の14.2%を占め、4位に入っています。
韓国ゲームの主要な輸出相手国、2018年
- 中国 : 30.8%
- アメリカ : 15.9%
- 香港/台湾 : 15.7%
- 日本 : 14.2%
トップゲームとパブリッシャー
KOCCA(韓国コンテンツ振興院)が2020年4月に行った定期調査(*)によると、調査時点でモバイルゲームユーザーの間で最も人気のあるゲームタイトルは、ネクソンの”KartRider Rush+”で、全ユーザーの11.7%がプレイしていました。次に続いたのはNeowizの”Pmang Gostop”で、4.2%のユーザーがプレイしていました。
なおこの定期調査のレポートは248ページに及び、モバイルだけでなくデスクトップPCゲーム、アーケードゲーム、コンソールゲームなどあらゆるジャンルをカバーしています。行政機関がこれほど力の入った調査を定期的に行っている点からも、韓国の国を挙げてゲーム産業の国際的な成功を支援しようとする姿勢が伺えます。
もっとも多くのユーザーにプレイされたモバイルゲーム、2020年4月、KOCCA調べ
また同調査によれば、ジャンル別ではパズルゲームと、PCゲームのIPをモバイルに移植したゲームが全年代を通じてもっとも人気であり、10代ユーザーに絞るとシューティングが、20代ではシミュレーションが、30代ではパズルが最も人気がありました。
続いてパブリッシャーのランキングを見てみましょう。韓国で最大規模のモバイル広告テクノロジー企業であるIGAWorksが行った調査(**)に寄れば、”Lineage M”、”Lineage 2M”などのタイトルを擁するNCソフトが売上において最大のゲームパブリッシャーとなりました。NCソフトの売上は、2020年前半のモバイルゲーム業界全売上2.83兆ウォン(2,500億円、2020年6月末時点の為替レート)のうち、なんと34.8%を占めるとされています。
2020年上半期のモバイルゲームパブリッシャー売上ランキング、2020年8月、IGAWorks調べ
* http://www.kocca.kr/cop/bbs/view/B0000147/1842858.do
** https://www.hankyung.com/it/article/202008036163i
利用動態とARPU
上述のIGAWorksの調査(*)に寄れば、韓国モバイルゲームユーザーの平均月間ARPUは2020年上半期には16,828ウォン(1,504円、2020年6月末の為替レート)に上り、2019年の13,566ウォン(1,277円、2019年末の為替レート)から大幅な上昇を見せました。これにより2020年年間のARPUはアメリカドル換算で$170.28となり、世界一である日本の$200.9(2019年)に大きく近づきます。
同調査は韓国のモバイルゲーム人口を合計で2,100万人と見積もっており、全人口の16.7%にすぎない40代(**)が、全モバイルゲームユーザーの28.9%を占める最大の年齢セグメントとなっています。また次に大きなセグメントは30代で全体の25%を占め、次に全体の18.8%を占める20代、15.9%を占める50代、6.2%を占める10代、5.3%を占める60代以上が続きました。
KOCCA(韓国コンテンツ振興院)に話を戻すと、調査回答者の平均モバイルゲームプレイ時間は平日で96.3分/日、週末で121.7分/日に上りました。回答者の半数近い44.5%は週に6-7回はモバイルゲームをプレイすると答え、改めてモバイルゲームが日常の重要な一部分になっていることを浮き彫りにしています。
課金コンテンツについては、調査回答者の36.8%がゲーム内通貨やゲーム内アイテムの購入経験があり、課金額によるセグメント分けにおいては、年間で10,000ウォンから30,000ウォンを使うと答えた層が最大となりました。
さらに興味深いことに、調査回答者の22.7%はゲーム内コンテンツを実際の法定通過に交換した経験があり、そのような回答者の間で最もメジャーな交換サイトはItem Mania (http://www.itemmania.com/ ) でした。
* https://www.yna.co.kr/view/AKR20200611162400017
**United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population Division. World Population Prospects: The 2019 Revision. (Medium variant)
まとめ
これまでご紹介した様々な統計が示すように、韓国のゲーム業界は強力な国産パブリッシャーを多数抱え、課金を厭わない若者から壮年までの多くのユーザーに支えられており、また韓国にとってもゲームは重要な輸出産業となっていることが伺えました。
次回の投稿では、韓国の主要なパブリッシャーに焦点を当て、彼らが世界中のゲームプレイヤーをどうやって虜にしながら事業を拡大しているのかを、より詳しくご紹介します。