自己満足のコストと、モバイルアドフラウドに対抗する方法
モバイル業界では、アドフラウドを、ビジネスを行う上での必要悪と捉えている人もいますが、そのコストがどれほど深刻なものであるかを認識している人はほとんどいません。2019年上半期だけでも、モバイルアプリマーケターたちはアプリインストールのフラウドで23億ドルを失いました。
マーケターの中には、アドネットワーク事業者から無駄な広告予算に対して毎月返金等を受けているため、フラウドによる損害からは無縁だと信じている人もいます。しかし実際には、不正行為がビジネス慣行として見逃されている以上、これらのアドネットワークや媒体は、失われた金額の全てを返金しているわけではないのです。また、日常的にオーガニックインストールを自前のインストールに見立てて課金しようとするアドネットワークに出稿するという機会費用とその損失も忘れてはなりません。
アドフラウドは至るところで起きていますが、だからといって私たちは戦いを諦めるべきではありません。
フラウドが少ない・皆無であるという評判を持つモバイル広告パートナーを慎重に選ぶことで、広告主は捏造された指標ではなく、ビジネスの成長に投資することができます。そのために、最も一般的なフラウドの手口やその防止方法、アドネットワーク等に出稿する際の注意点をまとめました。
一般的な戦術
フラウド業者は、パフォーマンスが向上しているように見せかけて自らの利益を増大させるという共通の目標を、様々な手口で達成しようと試みます。これらの手法の多くは、ユーザーのクリックやインストールを偽装あるいは捏造する一方で、より技術的に高度な機構を用いる手法もあります。
一部の不正に手を染める事業者は、これをさらに押し進めてインストールファームを作り上げ、デバイスからアプリを大規模にインストール、初期起動、削除を繰り返しています。このような詐欺行為は、インターネットと同じくらい昔から存在しています。ウェブサイトは長い間、クリックファームを利用して順位やトラフィックを操作し、広告価格を引き上げる事に成功してきました。
現在のモバイルの世界では、この種のファーミング行為はテクノロジーを用いて効率化することができ、アプリが実際よりも、はるかに多く真っ当にインストールされているように錯覚させることも可能なのです。
SDKスプーフィング(別名トラフィックスプーフィング)は、新たに登場した、より洗練された不正行為の手口です。
この方法では、実際のデバイスにアプリがインストールされることはないにも関わらず、正規のインストールが発生しているかのように見せかける事象を作り出します。この手法には多くのバックエンド操作が含まれるため、実施するには技術に精通している必要があります。SDKスプーフィングの結果、インストールやアクションでの成果報酬で支払いを行う広告主は、これらの偽の成果で予算を使い果たしてしまうのです。
モバイルユーザー獲得の世界では、オーガニックポーチングと呼ばれる広告詐欺によく遭遇します。これは、悪質なアドネットワークが、広告がなくても発生していたであろうインストールの手柄を横取りし、広告主に課金する詐欺行為のことを指します。オーガニックポーチングが他のタイプの広告詐欺と異なるのは、正規のインストールが発生しているという点です。しかしそのインストールはオーガニックで発生しているのであり、アドネットワークの成果ではありません。
現実の問題として、これらの手口に気づくことができなければ、あなたはアドフラウドにお金を払うことになるのです。悪質なアドネットワークの一定割合の不正インストールを認めて返金をしたとしても、おそらく水面下にはそれ以上の不正インストールが存在している可能性が高いのです。これは広告費の無駄遣いにつながるだけでなく、質の高いユーザーの獲得に必要な実際のコストを見えなくしてしまいます。
広告主は自らアドフラウドを特定し、その存在を明らかにする必要があります。その方法をここで説明します。
モバイル広告のフラウドに関しては、実際は多くの場合そのようなフラウド行為を行っていないにも関わらず、個別のアプリ媒体が批判の矛先となることがよくあります。疑わしいほど多くのクリック数を出したパブリッシャーは、ネットワークやDSPから 排除される可能性があり、また十分な違反があれば、完全にブラックリストに登録される可能性があります。
ここでも鍵となるのは透明性です。アプリ媒体は、アドネットワークやMMPなどのモバイル計測パートナーと協力して、ユーザーレベルでの不正行為を特定する必要があります。これは、複数のデバイスID、疑わしい平均インストール所要時間、繰り返されるクリックパターンを見つけることかも知れません。アドフラウドの方法がどのようなものであれ、アプリ媒体は収益を守るために対策を講じなければなりません。同様に、アドネットワークやDSPも、悪質な行為者を積極的に特定することで、絶え間なく続くアドフラウドとの戦いにおいて、より大きな役割を果たすことができます。
とはいえ、広告主は、同じ業界の別のプレイヤーたちが、自分たち広告主の利益を最優先に考えてくれるという願望に頼るべきではありません。今日のモバイル業界では、多くのアドネットワークやDSPがアドフラウドの存在を必要悪として受け入れてしまい、それと戦うための十分な投資や施策を行っていません。
さらに、マーケターの中には、データの整合性を疑うことなく、耳障りの良いレポートを単純に受け入れる人もいます。
しかし、真に成長を最大化し、業界の習慣を変えるためには、広告主は様々なアドフラウドに対して常に自ら主張し対策を練らなければなりません。
犯人の見分け方
広告主は、自社の予算を守るために、以下に挙げるアドフラウド防止策を徹底する必要があります。最初のステップは、アプリ媒体、アドネットワーク、DSPと協力して、ジェイルブレイク*されたデバイス、エミュレータ、またはルート化されたデバイスなどの上に配信されている広告を検出することです。その後、広告主は、不正行為が確認されたアプリ、IPアドレス、地域を除外リストに登録する必要があります。
*ジェイルブレイク: スマートフォン等の電子機器に施されている制限を不正に除去すること。特にAppleが販売するスマートフォンにおいて公式アプリケーションストアで流通しないアプリを動作させるために行う不正操作。
オーガニックポーチング(オーガニックインストールの盗難)は少し厄介です。ここでは、広告主が取るべきいくつかの追加の対処法を紹介します。
● インクリメンタリティのテスト:良いDSP&アドネットワーク は、これを 実施するための準備ができているはずです。これらのテストにより、アドネットワークやDSPがオーガニックインストール以外の真のインクリメンタルな成長をもたらしているかどうかをより明確に把握することができます。
● アプリ媒体の奇妙なパターンの検出:例えば、懐中電灯アプリのインストール数が全体の20%を占めているとしたら、それは少しおかしいですよね?アプリ媒体のレポートを見て、もし直感的に怪しいと感じたら、躊躇せずにより深く調べてみましょう。
● アトリビューションカーブの確認:通常のカーブでは、アトリビューション対象のインストールの大半は、ユーザーが広告を見てから3時間以内に発生しています。それよりも後にインストールが急増する場合や、時間の経過とともに直線的にインストール数が上昇する場合、それは不正行為である可能性が高いです。
● ユーザーレベルのデータの確認:デバイスID、不審な平均インストール所要時間、繰り返されるクリックパターンなど、調べるべき項目は多く存在します。
広告主とパブリッシャーの双方にとって、完全な透明性を持って協業することは、それぞれのキャンペーンやアプリにおけるアドフラウドを排除するために必要不可欠です。しかしそれだけでなく、適切なDSPやアドネットワークパートナーを選ぶことの重要性は解き尽くせません。
DSP:最後の防衛線
アドフラウドを防止し、それに対抗するために、実際には誰が責任を負うのでしょうか?広告主と媒体はどちらがより重い責任を取るべきなのでしょうか?実際には、どの当事者も自分たちだけで不正を排除することは出来ません。共同作業が重要であることはすでに述べましたが、広告主が取ることのできるもう一つのステップは、信頼できるプログラマティックパートナーの選択です。
アドネットワークとは異なり、DSPは、RTBのエコシステムに参加しているすべての参加者を自ら調べることはできません。このためDSPは、積極的にに低品質のトラフィックを監視し、ブロックに注力することになります。このため、DSPは不正なインプレッションからの収益を失うことになりますが、その一方で広告主にとってはより良い結果をもたらします。適切なパートナーは、不正行為の一部を返金するのではなく、ビジネス慣行としてアドフラウドを排除に尽力します。
優れた、かつ積極的な対策が講じられている場合でも、DSPは疑わしいアトリビューションパターンの監視を継続する必要があります。これにより、フェイクのクリック、インプレッション発生に対して非常に遅く生じるクリック、単一インプレッションからの複数クリック、その他モバイル広告のアドフラウドに関連すると思われるシグナルの検出に貢献します。問題は、DSPにはそれぞれ違いがあり、アドフラウドを防ぐために必要な措置を講じていないDSPもあるという点です。
MOLOCOのアプローチ
MOLOCOでは、モバイルアドフラウドとの戦いに積極的に取り組んでいます。私たちは、自らのプラットフォーム上でのアドフラウド行為を排除するために、可能な限りの対策を講じています。私たちはMMPなどのモバイル計測パートナーと継続的に協力し、クリック検証などの方法で広告主を保護しています。また、私たちは機械学習を使用して疑わしいパターンを特定し、Apple App StoreやGoogle Playに掲載されていないアプリを回避しています。
私たちの発見を広告主と共有することで、不正トラフィックとの戦いで広告主を支援し続けています。さらに、GAID、IDFA、SSP名、掲載先アプリ情報に至るまでのインプレッションログをすべてのパートナーと共有しており、それは疑わしいシグナルを特定するための必要不可欠なツールとなっています。
究極的には、アドフラウドとの戦いの責任は、モバイル広告に携わる全ての人と企業が負っています。しかし、全ての企業がそのように考えているわけではありません。モバイル業界に何らかの大きな変化が起こるまでは、アドフラウドは日常の現実として存在し続けるでしょう。だからこそ、広告主にとって不正トラフィックを見極める方法を学び、真に成長を支援してくれるパートナーを選ぶことが、とても重要になります。
私たちの言葉を鵜呑みにするのではなく、実際にデータを見てみてください。この記事で紹介した手順を実行に移し、疑わしいパターンが出現しないか確認しましょう。DSPやアドネットワークなどのパートナーを一つ一つテストしてみましょう。全てのパートナーが同じデータにアクセスできる一方で、全てのパートナーが同じ対処を行うわけではありません。MOLOCOは、広告主とモバイル業界全体の利益のために行動することを決意しています。その結果、私たちの広告主は真に意味があり、成長をもたらすところへ広告予算を投下できています。
MOLOCOがどのようにしてモバイルアドフラウドと戦っているのか、詳しく知りたい方は、ぜひ当社の担当へご連絡ください。インクリメンタリティテストの実施および低品質トラフィックを特定し、成長を拡大するためのお手伝いをいたします。またMOLOCOの公式ブログもぜひご一読ください。