「雀人銘々伝」



東紅中 『文芸春秋オール読物号』昭和6年4月号

 昭和初期、特に文壇を中心として一大ブームを巻き起こした娯楽競技・麻雀。当時日本麻雀連盟という組織が結成され、菊池寛が総裁、浜尾四郎が顧問を務めていました。その日本麻雀連盟に所属するお歴々についての紹介記事です。見よこの錚々たるメンバーを。

総裁 菊池寛(六段)
顧問 浜尾四郎(六段)
八段 空閑緑
七段 川崎備寛
六段 佐々木茂索
六段 久米正雄
五段 中戸川吉二
五段 里見弴
五段 菅忠雄
五段 甲賀三郎
五段 田中純
五段 広津和郎
三段 古川緑波
三段 池谷信三郎
三段 南部修太郎
三段 和木清三郎
三段 永井龍男
無段 直木三十五
無段 横光利一
無段 瀧井孝作

(非文壇人)
七段 李天公
六段 長尾克
六段 天忠定
六段 林茂光
六段 寺木定芳
六段 加藤六蔵
五段 武天祐
五段 堀田泰造
五段 中川緑郎

 見よ、とか言っておきながら、非文壇人の方は実はよくわからない方々ばっかりなのですが。こうした面々の実力や打ち筋について筆者があれこれ短いコメントをつけています。おまけで甲賀三郎についてのコメントを引用しておきましょう。

先づ甲賀五段の雀技中の饒舌は天下稀にみる可く、併しなれれば是も愛嬌ありてさう五月蠅なくてよろし。彼の雀風は麻雀学びてより未だ日浅きにも拘らず一種の風格あり斯道の秀才だが少し正道を行きすぎる。だから思はぬ牌が出たりすると無暗に憤慨する。それにしても彼の体力は雀界広しといへどさう見当らない剛健さを持つてゐる。

 最高位八段の空閑緑というのがこの組織のスポンサーだったそうで、八段だが腕の方は初段の学生にも劣ると揶揄されているのはそうした事情でしょうか。大人の世界のお話です。
(記 2003/8/26)

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