日記
今日は、電車立ちをしていると、こういうことがあった。
電車立ちというのは、電車で立っている状態のことである。
吊り革につかまっていてもいなくても、何かにもたれかかっていても、もたれかかっていなくても、とにかく電車で立っている状態であれば、電車立ちと言いたい。
今日は、吊り革につかまった状態で電車立ちをしていたところ、真ん前に人が2人座っている。
1人はおばあさんで、もうひとりもおばあさん。
2人のおばあさんの他に座っているのは、サラリーマンばかりだった。
向かって左のおばあさんを「おばA」、向かって右のおばあさんを「おばB」と呼ぶことにした。
おばAはまず、眠っている。
首が前後にぐわんぐわん振れている。
おばBは、起きている。
それで首にしょわしょわの緑の襟巻きを巻いている。レタス巻いてるのかなあと思った。そんなことはなかった。
ふと、おばAの方をちらりと見るおばB。
そして
「まあ」
と小声でひとこと。
それから、自分の首に巻いていたやつを、しょわしょわいわせながらほどいていく。
顕になったおばBの首元は、まあまあきれいだった。
そして、そのほどいたやつをおばAのぐわんぐわんしている首に手際よく巻いていく。
すると瞬間、
「ちべた!」
と首をふりおこすおばA。
それから、
「ちべたいやんけなんやねんこれ」
と言いながら、
おばAは席を立ってドアの方に歩いて行ってしまった。
おばBは、立ち去りかけるおばBに
「ちょっと待ってよ」
と呼びかける。
「それだいじなレタスやねん」
と続けるおばB。
電車が駅に停車する。
するとおばAは
「レタスならええやんけ、ちべたいし」
と、レタスを首に巻いたままドアを出て電車の外へ。
雑踏に消えていった。
残されたおばB。
おばAの去った座席には、サラリーマンが座る。
おばBは首周りを手でいじりながら、
「あったかいわあ」
と小さくつぶやいた。
寒くなくなったなら、よかった。
季節の変わり目はこれだから難しい!