日記(発光体)

今日は、電車に乗って海へ行く。

ホームドアが開いて乗り込むと、

おばあさんとおばあさん2人組の横しか席が空いていなかったので、そこに座る。

すると、

「そうね」

「そうそう」

「絞って?」

「うんうん」

「ここはそうよね」

「そうそう」

おばあさん1(以降「1番」)と
おばあさん2(以降「2番」)が、
会話をしている。

それは会話もするだろう。

私は読書をする。


「ぼくの真っ赤な血を全部?」

「ああ」

「乾かして汗も涙も血も全部?」

「ああ」

「もう一度頭絞ってにじみ出てきた緑の液体が?」

「…」

「ぼくの全てさ?」

「…」

「バカだろ?」

「…」

「て〜れ〜てれ〜れ」

「てれれれ〜」

「て〜れ〜れれ〜れ」

「てれれれ〜れれれ」

「…」

「…」

「てれれ〜ん?」

「てててててててててて」

「ずくたん?」

「…」

「…」




1番が口を開く。

「…そうそう」

「そんな感じよね」


1番が続ける。

「出てはくるんだけどね、なんだったかしらねこれ」

「なんのやつだったかしらね」

「本当になんのやつだったかしら」

「本当にね」


私は分かったので、

「あの」

と声をかける。

「『発光体』ですそれ」


すると、


2番は

「発光体?クラゲとかみたいな?」

1番は

「クラゲは光らないわよ」

2番は

「そうねえ、たしかに」

光るクラゲもいそうだけどなと思った。

それはそうとして、

私は補足をしてあげる。

「『ゆらゆら帝国』の『発光体』です」


すると

2番は

「ゆら帝?」

1番は

「ゆら帝って何?」

2番は
「ゆら帝ってなんでしょうね」

1番は
「CM?」

2番は
「たしかに」

「ゆら帝」は「CM」ではない。

でもだとしたら「ゆらゆら帝国」を「ゆら帝」と出来ているのが不思議。

すごい。人智を超えている。


赤羽駅に着いたので、

私は、

「降ります、すいません」

と電車を後にする。

いつもの癖で赤羽駅で降りてしまったが、今日は海に行くつもりで出かけてきたのだった。

赤羽に海はない。

残念。

またこんど。

1番も2番も、いきいきと輝き(発光し)ながら長生きしてくれれば良いと思う。

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