日記(高密度)
今日は、隣の部屋に住んでいるおばちゃんからおすそ分けをもらった。
「作りすぎちゃったの」
とのこと。
おばちゃんは、ずっしりとしたひと瓶を手渡してくる。
何であれおすそ分けはありがたいが、内容物がよく分からない。
赤いドロドロした感じのものだったので、
「いちごジャムとかですか?」
と聞くと、
「ううん」
と首を振るおばちゃん。
違うらしい。
じゃあ何なのか尋ねると、
「もみじジャム」
とのこと。
初めて聞いた。
「もみじジャム?」
と聞き返すと、
「ええ」
と返ってきた。
なんか言葉の響きも含めて怖い。
おばちゃんが当たり前の顔をしているのも怖い。
でもジャムはジャムなのだろうか。
「食べられるんですか?」
と聞くと、
「食べられはしないね」
とのこと。
じゃあジャムじゃない。
ちゃんと聞くと、おばちゃんは秋が大好き。
それで高密度の秋を飾りたいと思うようになり、
今年はもみじを煮詰めてパッケージングしてみたのだとのこと。
煮詰めることでもっと嵩が減るかと思いきや、もみじの嵩は思ったより減らず、それで溢れた分を持ってきてくれたらしい。
それは知らなかった。おばちゃんのモチベーションも、あともみじを煮詰めても嵩があまり減らない、ということも。
高密度の余剰分を受け取った私は、
「ありがとうございます」
と、丁寧にお礼をして扉を閉めた。
「こちらこそ」
とおばちゃん。
部屋に持ち帰って置く場所が微妙だったので、もらった高密度の秋は、いったん玄関の下駄箱の上に飾ることに。
しかし玄関に置いているものの、じわじわリビングの方まで秋めいてきている。
良い。
また作りすぎたら持ってきてもろて、と思っている。
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