英語以外のコミュニケーションの在り方 〖BEFORE 木曜会 #7〗
昨夜、起業を志すディエゴが企画した『英会話で世界支援を OSAKA KITAHAMA ESL Meet Up!』が、コロマンサにて開催された。
オーガナイザーのディエゴが用意してくれた自己紹介のフォーマットやその日の議題。それに沿ってスムーズに進行する90分間は、あっという間に過ぎ去った。
ヒゲの総帥も普段考えていることを英語に置き換えて話してみたが、こんな稚拙で平坦な表現でしか自分のことを伝えられないのかと、自分の不自由さに驚いた。自分のことを英語で語るのは、手足を縛られたまま日常生活を強いられているような窮屈さだ。
自分自身を語る言葉を持たないと、こんなにも自分の存在があやふやになってしまうのか。
ディエゴ企画の交流会が終盤に差し掛かった頃、コロマンサのボロの扉が開き、ハイタッチの男が黒の作務衣姿で現れた。
彼は、グフフと笑いながらその場にいた自称300歳のギャラリーの女にハイタッチを求めたが、「どうして私があなたとハイタッチしなくちゃいけないんですか、嫌ですよ、絶対に嫌!」と即座に拒否されていた。
イベントの時間が過ぎても談笑は続いたが、イベントの参加者である神戸の女はバスの時間があると言って先に帰り、アイルランドへ留学する女、北陸から亡命してきた男、ギャラリーの女も夜更けとともに帰途についた。
残ったのは、ハイタッチの男、途中参加の会計事務所の男、ディエゴ、総帥、そして万作。
ハイタッチの男が周囲を見回し、穏やかな口調でディエゴに言う。
「僕を、どついて、ください。」
また始まった。ここ最近、男同士のくんずほぐれつばかりを見せられている原因のすべてはこの男だ。
「ええっ?殴れませんよ。そんなことしていいんですか?僕は人を殴ったことがありません」と戸惑うディエゴ。
すると会計事務所の男が、「それなら自分が殴ってみたい」と名乗りを上げる。
「どうぞ」と腹を差し出すハイタッチの男。会計事務所の男の強烈なパンチが決まり、思わぬ格闘技経験者の動き。
その時、階段を上がる足音が聞こえる。入ってきたのは、北浜でIT会社を経営する男。タイミングの悪い入店だと感じたのか万作は、「別に殴り合いに参加せなあかんわけやないですから」と新規客へ遠慮がちに伝える。
経営者の男は目の前の殴り合いを眺めながら、静かにハイボールを飲む。
2分後――。
「すいません」と経営者の男が口を開く。
「僕の腹も殴ってくれませんか。」
「近大節」が響く中、北浜の夜は静かに、更けていく。