つぎはぎ
高速道路バス乗り場。
今、ベンチに座った。
痛いくらいの日差しと蝉の声。
小さなバス停のこもった空気。
色を失ったアジサイ。
僕の世界で変わっていくのは、視野の中で無数の歩き回るアリ。
目の前の高速道路で、自動車は何も変わらずに通り過ぎていく。
翼があるから飛べない。
じゃあ翼はいらない。
この前、考えたことが頭をよぎる。
傷口がふさがると元通りに戻ったと思うのは人間の、いや、僕の悪い癖なんだ。
怖いのは傷つくことよりも、生きていること。死にたさと、消えたくて、生きていく。
僕は運転手ではないけれど、もし運転手になれたとしたら、行く先の決まってない人を乗せたいと思う。例えば、そうだな、家に帰りたくない人、どこか遠くへ行きたい人、止まっているのが嫌な人、なんかもうどうでもいい人。
僕は髪が短いけれど、長くなるとそれはもう生きていると思うんだ。だから髪は短くしておこうと思う。
自分の真上にのぼった太陽を見て、表情をゆるめず次々変わる雲を見て、全部自分のためだとキラキラ笑う。
なんのためらいも、疑いも、形もなく笑う。
有るものを集めようとしたって怖いから。
飛べないカラスのあの子はどこへ帰ったの。
知っている人がいたら教えてください。
地面に青い柿。消えない飛行機雲。
背中のボタンを自分で留めて、想像力で蓋をする。封をして、栓をする。ついでにホッチキス留め。