
茶渋
日中、しばらく室内にいた。
1日の大半は室内にいる。
空が見えるところへ出た。
3階からの眺めだったから高い空は見えない代わりに、遠くの空が見える。
明るさに目の奥がぐらっとする。
長い時間、室内にいて、明るさの急な変化に目が慣れていなかった。それだけかもしれないけれど。それにしては、目のもっと奥の奥だった気がする。
どこかなのか医学的に解明するよりも、深くて遠いところだったと思う。
空はそれくらい突き抜けた広さなのかなあ。
階段を降りる。駆け下りる。
この誰もいない階段の折れ曲がった部分の続きには、今まで見たことのない世界が
広がっていない。
そんなこと考えていると、下から見たこともない生物が這い上がって
こない。
見慣れた現実と、はじめましての、にらめっこ。
コーヒーにはちみつを入れると美味しいと聞いて、邪道だ邪道、と思っていたのに、やってみると思いの外、おいしくて。秘密基地の中に、お菓子を持ち込んで、こっそり食べたときの味だよね。
多少の後ろめたさは、ハチミツ。
入れすぎたハチミツ。
コーヒーに溶け込んでもう取り出せないから。
入れすぎたねって、あきれ口調で。
途方に暮れて。
いつか美味しく飲めるかな。
取り返せない苦さと酸味。
くどすぎる甘さ。
錆びた標識。
一方通行。進入禁止。
目の奥が痛い。
はじめましてで、にらめっこ。