ぴよぴよ
満月よりも、今日みたいな月の気分だった。
夜は自分のショータイム、自分で光ってます、って顔した、まんまるお月様よりも。
どうせ太陽のおこぼれだよ、って不貞腐れて赤黒い、切れながの目。ほくそ笑んだ口もと。太陽をおっかけてって、気づけば沈んでた。
靴下を履いたままズボンを脱ごうとする。結局、ズボンの裾から靴下がねじれつつ脱げつつ巻き込まれる。脱ぎ終えたズボン。左手で靴下を迎えに行く。
私の人生みたいだ。
だとしたら、未だに靴下が見つからない。
別に意味はない。
何かに例えてわかった気になるのが好きなだけ。
脳内 例え話(にっぽん 昔話、で韻を踏めます…。ません。)は終わって、靴下を履き直す。
ぬくぬくゆるゆるズボンに履き替えるけど、冷やっとする。
これほどに意味のない文章でさえ、公開して良かったなと思うことがある。
その“良かった”と、“良くなかった”は紙一重だから、よかったよかったと刷り込んで、擦り込んで。
リモコンのボタン、真ん中にあるぽっつん。
電柱に貼り付く広告、日に焼けて、読めそうで読めない電話番号。
タイヤが走ると振動を与えるセンターラインの凸と凹と。
崩れたお城、砂場のスコップ。
何気ない半角スペース。
標識のふちで赤く点滅する申し訳ばかりの灯り。誰に向かって光ってんの。
味のないわさびを食べたかな。鼻にツンときて、じきに目に来る。
いつかって、いつだ。私の誕生日は、よっかだぞ。
太陽を必死に追いかけてみたら消えちゃって新月。
元気、元気。
「いなきゃよかった」と吐き捨てたあの子と、吐き捨てさせたあの子。どちらの肩を持つことも、どちらを責めることもできない権力者。なんの権力もなく、誰にも寄り添えず。八方塞がり。ごめんねとも、つらかったねとも、誰が正しいとも言えない。あの子の思いが、すくいあげられて、水で薄く弱くなってしまったポイに、とどまれますように。あの子に言ってるのか、自分に言っているのか。ポイが破れて落ちた金魚は、きっと、すくいあげようとするポイから、命をかけて逃げまどうでしょう。すくわれたって、透明な、いつ裂けるかも分からない安っぽいポリ袋だけどね。
やっぱり次はヒヨコになろうか。あのヒヨコは、ヒヨコで一生を終えるんだ。
また、あの味のないわさびが襲ってくる。
言葉が止まらない日に限って、今から仕事が待っている。仕事という名の自己満足。浸って、溺れて、苦しくなって。いつまで息がもつだろう。息継ぎは面倒だから、えら呼吸を身につけようか。
太陽の後ろの心地よさ。このまま新月でいたいなあ。ぐるぐる回るのだから、とどまれないけど、嫌でも戻る。もっと、自由に生まれたかった?
明日の自分に聞いてみよう。
明日を信じられるまで、明日の自分なんてどこにもいないけど。
未来をあてにできないし、すがれる過去もなければ、今に立ち尽くして、ぴよぴよ。
ぴよれず、ぴよって、ぴよる、ぴよるる、ぴよれたら、ぴよれ。
ぴよぴよ。