
Photo by
satomigoro
ぺい
えー、最近はスマホでなんでもできますね。
できない事がないくらいじゃないですか?
お金も持たなくなりました。
あの人みたいに、買い物しようと町まで出掛けて、財布を忘れても陽気になれます。
---
閑静な町のとある銀行。
閉店間際、お客様はもういないと思っていたら、2人組の目出し帽の男入って来た。
1人は目出し帽の縁が赤で、もう1人は青だ。
赤の右手に大きなナイフを持っている。
「ここに1億円入れろ!」
と怒鳴り、カウンターの上に叩きつけるように置いた。
青はキョロキョロと周りを気にしている。
「すいません、コレに入れるんですか?」
私はカウンターの上に置いてあるスマホをつまみ上げた。
赤がナイフをこちらに向けたまま、左手で壁のポスターを指差した。
「あそこに書いてるじゃねえか!」
ポスターには『4/1から電子マネー、チャージできます』と書いてあった。
この4月から始めた事業の一つである。
青が甲高い声で「さっさっとしやがれ」と大声を出した。
私は恐る恐る震える声で「では、アプリを開いてもらえますか?」とスマホを赤に手渡した。
ナイフを置き手袋を脱いでスマホを操作しはじめた。
「おい、コレどうするんだっけ?」と青と話始めた。「え?確かココを押して、コレじゃなかったですか?」
その間に、ナイフを取り上げて通報。
あっけなく捕まった。
了