福田美蘭のまなざし
長距離移動するとだんだん客層変わる、それが電車というもの。
ごきげんよう、もくれんです。
福田美蘭展@千葉市美術館に行ってきました。
福田美蘭はご存命の現代アーティストで、完全オリジナル作品だけではなく名画のオマージュ作品もたくさん作っている。
2013年に開催された東京都美術館の個展で初めて作品を見て、美術作品を見て泣くという経験をしました。
いきなりボロボロ泣き始めた私を見て母が「ちょっとその感受性が羨ましい」と言っていた。ちなみに泣いた作品はこちら。
私が数ある花の中から「もくれん」を名乗っているのもほんのりこの作品に影響を受けている。阪神淡路大震災で瓦礫の街で折れてしまった庭の木蓮の木に「この木を切らないでください」と家主が札をかけている写真。その木の先に満開の木蓮を描いた絵を合成してひとつの作品としている。
この福田美蘭の優しさ、家主の切ない思い、満開に咲いたきれいな木蓮の花、もうすべてすべてが津波のように押し寄せて涙が思わず溢れてしまった。
そんな福田美蘭の個展が久しぶりに開かれるということで、千葉市美術館まで足を伸ばしたわけだが、相変わらず遠いwでも、とても良い美術館なので、行くと素晴らしいなと毎回思わせてくれる素敵な場所である。
今回の展示は千葉市美術館の所蔵品をモチーフにした福田美蘭の再解釈を入れた作品も多く展示されていて、非常に面白かった。特に東京オリンピックをテーマにした作品がいくつかあり、胸に迫るものがあった。痛烈な批判にも思える作品かもしれないが、絶妙な切り口で表現していて8年ぶりに見た福田美蘭は変わらずすごくすごく私の胸をえぐった。アイス屋さんのアイスをすくうスプーンくらいえぐっていった。残念ながら、一番心を揺さぶった作品はネットに絵が落ちていない、今年の作品なのでここにご紹介できないが、本当に素晴らしい作品なので百聞は一見にしかずで、どこかでいつか見てほしい。
福田美蘭自身「今年が薄まって過去になる前に是非見てほしい」という言葉を残していたが、本当に今年見てよかったなと思った。もう半分忘れていたオリンピックの狂騒、コロナをオマージュした作品、どれもが私の心を捉えて離さなかった。2013年の都美術館での個展のときの図録も千葉市美術館の図書館に置いていたので、ぱらぱら開いてみたが「ブッシュに説教をするイエス・キリスト」という図の絵があって、そうそうこういうことをしてる人だったとまた君に恋している状態。
めちゃくちゃいい作品ばかりだったし、千葉市美術館の浮世絵もふんだんに見ることができ場を生かした素晴らしい企画展だったが、最終日にしては非常に閑散としていた。残念である。本当に草間彌生や村上隆、奈良美智より断然、福田美蘭なのに。
福田美蘭のまなざしを通して見た世界は美しくて切ない。おかしみがあるのになんだか悲しい。次、作品を見られるのはいつになるんだろう。私が富豪だったら買いたい作品は、福田美蘭だと思う。