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岸田奈美さんのエッセイは大道芸
やっぱり岸田奈美さんの文章はおもしろい。
岸田さんの新刊『国道沿いで、だいじょうぶ100回』を読んで、そう思った。
岸田さんのことを知ったのは、かつてバービーさんがパーソナリティをつとめていた「週末ノオト」(TBSラジオ)のゲストコーナーで(ネットで検索してみると、2021年1月16日の放送でした)。
「週末ノオト」は毎回のごとく興味深いゲストの方が多く(それは骨のあるサブカル雑誌のようで)、この日の岸田さんのお話もおもしろかった。
番組のリスナーでもあり、バービーさんの先輩で友人でもある森三中の黒沢かずこさんが、岸田さんの本を読んで、番組のゲストに呼ぶといいんじゃない?と薦めてくれたというエピソードも心にくいことよ。
このとき、岸田さんが初めて出された本、『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』を知って、放送後日、読んでみた。ら、ラジオを聴いていたときのようにおもしろくて、ゴンゴンと読み進んだ。
それからは、『もうあかんわ日記』『傘のさし方がわからない』『飽きっぽいから、愛っぽい』……と、岸田さんの本が出るたび手に取ってきた。
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今回、岸田さんの文章を読んでいて、出版の仕事をしていたとき、ご一緒させていただいたイラストレーターの、おかべりかさんの言葉を思い出した。
「私の仕事は大道芸みたいなものですから」
ゆきずりの人を立ち止まらせるのがどんなに簡単でないことか。その言葉は、ずっと脳に残っています。
数年前、元ミュージシャンで、現在作家活動をしている方のエッセイを読んだときに思ったこと。
いい文章を書く人だな〜と、すいすいと読み進んだ。一方で、その人のファンなら、その人がどんなことを考えて、どんな日常を送り、どんな仕事をしているのか、知ることは楽しいことだろうなと想像できたエッセイでもあった。
言い換えると、ファン以外の方がその本を前に立ち止まるかどうかは、また別の話なんじゃないかと思ったのだ。
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『国道沿いで、だいじょうぶ100回』は、「弟が大金を稼いだので、なにに使うかと思ったら」というお話で始まる。
ある日、大きな仕事が舞い込んだ弟の良太君。良太君と、良太君をとりまく奈美さんとお母さんの様子がそれはもう目に浮かぶようで、何度も読み返してしまった。
夫に、「この最初の話だけでいいから、読んでみて。すぐ読めるから」と、控えめに、でもグイグイと薦めてみた。
そうしたら、「おもしろかったー」と、すぐに言いにきてくれた。
岸田さんのエッセイ(文章)には、岸田さんのことを知らない方をも立ち止まらせて釘付けにするような地力、底力みたいなものを感じます。
夫は「ほかの話も読んでみよう」と、次のお話も読み(そのまた次も読み)、「あの札束の詰まったリュックって、いったい……」と、おもしろがっていました。
それは読んでのお楽しみ。
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