File.3 部員になりませんか?【部員図鑑:秘書】
いくらなんでも、誰彼構わず「ぼく、秘密結社つくったんだ!」なんて、いい大人がそうそうに言えるわけもない。
SNSで部員募集しても効果はないだろう。それならとりあえず、話を聞いてくれそうな人に声をかけようと思った。
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彼のあだ名は、秘書。
ぼくの中学からの友だちで、今は市役所で働いている。見た目はかっこよくて、仕事もできるし気遣いもできる良いやつだが、ゲームに捧ぐ時間がえげつないオタクである。
話が早くて大変助かる。
ちなみに秘書というあだ名は、もくもく部の有能な秘書的存在という意味でつけた。
色々作ったり動いたりするのはぼくで、話を聞いてアイデアを膨らませてくれたり、良し悪しのチェックも信頼できる、お願いしたことへの仕事も早いからだ。
そして、何事も楽しんでくれる人だ。
「まあ…フリーメイソンになりたいっていうのは半分冗談ね」
「半分は本気じゃん。そういや君、中学のときも秘密組織が〜とか言ってたな」
「…言ってたね。たしか、北朝鮮のミサイル発射がニュースになってた時ね。ベランダでみんなで妄想してたっけな。楽しかった」
「鹿嶋市には巨大な地下組織があったんだっけな?」
「そうそう。で、非常事態のときには鹿島中のプールが開いて、こう、戦闘機が出てくる。あと上空は見えないバリアーで…」
「それで秘密結社つくるとか、昔と変わらないな」
人間、根っこにあるものはそう変わらない。
「で、もくもくのそのふざけた設定はあれにしても」
「ふざけてはいない…」
「地域活動とか、まちづくりとか、おれからしたら全く興味ないけど。もくもく部みたいにふわっとしてて、気負わなくてもいいならいいんじゃない?って思う。何かしなきゃダメ!とか、まじか〜って冷めるし」
彼の感覚を全面的に信頼しているので
秘書がいうなら間違い!と、ぼくは喜んだ。
「部員になってくれる?」
「ゾンビ部員かな〜」
「いい!ありがとう!」
二人目の部員の誕生だ。
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数日後、秘書とご飯を食べにいったとき、またぼくの「もくもく」について聞いてもらった。
「部員になった人に何か会員証みたいなの、あったらよくない?」
「また何か言い出した」
秘書は猫みたいな丸い目を細めた。
そんな視線を送りつつ、秘書が話に乗っかってくれることは分かっている。
「カードかピンバッジがいいと思うんだけどさ!」
「それならピンバッジだな。君は選ばれたーー、って封筒で渡されるやつな」
「その封筒、箔押しだったらかっこよくない…え、つくる」
「デザインとしては表は何もなくて、裏面だけとか?」
「…さすが秘書!」
さすがにピンバッジを作るのは色々躊躇して、とりあえず封筒だけが完成した。
黒封筒に金の箔押しだ。個人的にかなり満足で、気分はわくわく!
もちろん秘書にも写真を送った。
秘書がいたからこそ、できたことだ。
しかし部員数はたったの4名。
しかも活動らしいことは何もしていない。
冷静に考えなくても、この100部の封筒が無くなる日は来ないのでは……いや、いつか無くなるかもしれないと信じよう。(ピンバッジもそのうち作ろう)
もしかしたら、想像を楽しむあなたの所に、もくもく部封筒が届くかも?