社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)とは?
最近、「社会的企業の法」という本を上梓しました。
社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)について思うところを書いていきます。まず、社会的企業とは何か、ということから始めます。
社会的企業とは、通常の企業の利益の追求と社会的の目的を同時に追求する企業の事です。Dual Purposeの企業形態と言われています。
近年、欧米で盛り上がっていますが、この源流は、17世紀くらいまでに遡ることが出来ます。詳しくは拙著をお読みください。
本の副題が、「英米からみる株主至上主義の終焉」となっており、米国では、株主利益中心主義の脱却というコンテクストで議論されることが多いです。その一方で、英国では、草の根資本主義とも言うべき、コミュニティの再生という観点で議論されることが多いです。
いわゆる新自由主義(この語は、果たして適切なのか疑問を持っていますが)の修正という視点で捉えることも間違いではないです。一方において、コミュニティの自助能力の強化という点では、保守主義の側面があることも否定できないものです。つまり、社会的企業というものが、資本主義の器である株式会社を利用することが多く(他の形態もあります)、それでいて、株主の利益よりも社会的利益を重視するというものですから、どちらの側からもこれを捉えることができるのは当然と言えば当然です。
さて、このコミュニティの自助というと、最近、菅新首相が、公助、共助、自助というのを打ち上げると、新自由主義という批判が左翼・リベラル(リベラルという語の使い方も適切ではないと思っています)の一部から吹き上がったようです。大変、残念に思います。そもそも、マルクス自身が社会的企業を提唱しています(拙著参照)。社会主義を実現する過程でEBO(エンプロイー・バイ・アウト―従業員の株主取得による会社支配)のような方法を用いることを唱えているのです。実際、公助、共助、自助をどのようにミックスするのか、というのはスウェーデンのような福祉国家でも議論が続けられています。
私が注目している英国では、公共部門の目が行き届かない分野において、社会的企業を活用しようとしています。このような社会的企業のあり方について、できるだけ実例なども踏まえながら、書いていきたいと思います。
まったりとお付き合いいただければ幸いです。