各国紹介(アフリカ) ジンバブエ
地理に関心がある皆さんへ。各国地誌を見ると、地理の要素や要因、系統地理を理解する助けになります。
地理の学びは物事を見る解像度を引き上げてくれます。
本日の一国は「ジンバブエ」。
アフリカ南部の内陸国。9世紀~15世紀まで「グレート・ジンバブエ」と呼ばれた偉大な王国があった地域。
では、参りましょう。
ジンバブエ共和国は、アフリカ大陸南東部に位置する内陸国。
東はモザンビーク、西はボツワナ、南は南アフリカ共和国、北はザンビアに接しています。
南緯16~22度付近に位置し、面積はおよそ39万㎢。国土の大半は高原地帯で、中央に丘陵地が走ります。
人口はおよそ1500万人です。
旧イギリス植民地、イギリス領南ローデシアとして植民地支配を受け、1965年、白人主体のローデシア共和国が成立。人種差別政策を押し進めました。
南アフリカ共和国と並ぶ、もう一つのアパルトヘイトと言えます。
それに対して黒人側が激しく反発。1980年まで内戦状態が続きましたが、1980年にジンバブエ共和国と改称。黒人主体の政権が成立しました。
さらにその後、1987年~2017年まで、ロバート・ムガベ大統領による統治が続きました。
ジンバブエという国名は、現地語(ショナ語)で「石の家」という意味だとされています。実際、同地で金や象牙、銅の貿易を盛んに行い、15世紀まで栄えた「グレート・ジンバブエ」と呼ばれるジンバブエ王国の遺跡群は石造りの巨大建築物。
現在でもショナ族は人口のおよそ7割を占める多数派で、ショナ語も公用語です。
地形は先述の通り多くが台地。そして、主要河川の流路を見ると、中央付近に分水界(河川の流域を分けるエリア)があることが見て取れます。
これと地形図を重ねると、標高が高い地域が中央部付近を北東から南西に走り、分水嶺になっていることがわかります。
分水嶺から北のザンベジ川、南のリンポポ川に向かってそれぞれ緩やかに標高が下がるような地形になっています。
最高点は中央の山地の、北東端に位置するンヤンガニ山(2592m)です。
この写真は西側から見たもので、西側は乾燥し草原地帯が広がっていますが、東側は年降水量が2000㎜を超え、森林地帯を形成しています。
気候は北部と南部でかなり異なります。
北部は温帯冬季少雨気候(Cw)で、南部は南回帰線に近い地域ですので、乾燥が強くなり、乾燥気候(BS)が優勢です。南西部に国境を接するボツワナは、その7割がカラハリ砂漠で占められていることからも、南西部は乾燥が強くなるであろうことは想像できます。
北東部にはサバナ気候が見られ、最も高温多雨な地域になっています。
北東に位置する首都ハラレの1月平均気温は20.7℃、7月が13.1℃、年降水量は830㎜ほど。
5月~9月は乾季、11月~3月が雨季となります。
また、河川について追記。北のザンベジ川には貯水容量世界3位を誇るカリバダムがあり、ザンビアとの国境にはヴィクトリアの滝があります。
ちなみにカリバダムのダム湖であるカリバ湖には、水没した森林由来の栄養分が多く堆積、タンガニーカ湖から移入された魚類などが生息し、漁業が盛んにおこなわれています。
また、タイガーフィッシュと呼ばれる、南米のピラニアのような獰猛な肉食魚も生息しています。
ジンバブエの種類は比較的小型なようですが、大型種の生息するコンゴ川水系では記録上、重さ70㎏に達した個体もあり、度々人が襲われているそうです。
経済ですが、豊かな土地と気候に恵まれ、農産物生産が盛ん。「アフリカの穀倉」とも称された時期もありました。
独立後は、白人経営者による大規模農業や、世界有数の埋蔵量を誇る鉱産資源、そして加工貿易主体の工業を背景に順調な経済成長を遂げていました。
ちなみに、ジンバブエの鉱産資源は、埋蔵量で言えばプラチナ(世界生産3位)やダイヤモンドの埋蔵量は世界トップクラス、その他、石炭、銅、ニッケル、クロム、コバルト、パラジウム(世界5位)、リチウム(6位)、パラジウム(5位)など、非常に豊かです。
しかし、2000年以降、ロバート・ムガベ大統領(当時)による白人の土地の強制収用(白人農場主の追い出し)の結果、農業技術のノウハウが喪失、作付面積が激減し、農業生産力が急速に落ち込みました。
そこから経済サイクルが崩壊。加工貿易を行っていた工業がも外貨不足により壊滅、経済は大混乱に陥りました。
そこに加え、ロバート・ムガベ氏の独裁的な強権政治に対する経済制裁が行われ、同国経済はハイパーインフレの波にのまれていくことになります。
2000~2007年の間にGDPは40%も縮小。資源の輸出も経済制裁の影響でままならなかったため、凄まじいインフレが継続。
2009年にはインフレ率が2憶3000万%に達し「100兆ジンバブエドル」が発行される事態となりました。
2015年にはついに法定通貨が廃止され、アメリカドルが事実上の公式通貨となりました。
2019年に法定通貨が再導入されましたが、またインフレに見舞われています。
国民一人当たりGNIは1140ドル。
かつてアフリカ屈指の豊かさを誇った頃の面影はありません。
民族はショナ人が7割、公用語は英語、その他、ショナ語など各民族の言語が使われています。
宗教はキリスト教が6割程度と多数派(独立派とプロテスタント)、その他、伝統信仰も多く見られます。
豊かな資源と国土、そして水力と火力のバランス良い電力供給(およそ半々)など、発展のための材料は揃っているのですが、現状、先述のインフレや巨額の対外債務にも苦しんでおり、その道のりは遠そうです。
それにしても、植民地支配(イギリス)の遺物(白人支配)を排斥しようとしたら国が混乱する、というのは何とも皮肉な現象でもあります。
今日はこれくらいで。
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