焼畑は〇〇〇農法
こちらの更新は久々になってしまいました。
今回は、地理における重要項目の一つ。農業の、特に「焼畑」に関する記事をお届けします。
世界農業遺産 高千穂郷・椎葉山地域ホームページから、
こちらの記事を。
まずは焼畑農業について。
焼畑農業は、
①森林や原野を刈り払い、倒した樹木や草本などを燃やしてから、灰を肥料する。
②数年で耕作地を放棄する。放棄された耕作地は、長期間をかけて植生が復活する。
③陸稲、イモ類、雑穀類などを栽培する。
などの特徴を持つ農業手法です。
焼畑と野焼き
①について。
伝統的な焼畑農業はいわゆる「草木灰」を肥料として用いるのですが、草木灰は人類が農業で用いてきた肥料としては最も原始的なものの一つです。
また、灰はアルカリ性のため、酸性土壌には中和剤として働き、土壌の改良に役立ちます。
そして焼畑の場合は、雑草の種子も根絶したいと考えており、乾季のうちに樹木を倒しておき、雨季に入る直前に火を入れます。
乾燥した樹木は高温で燃え上がり、土中の雑草の種をも焼き尽くすことになります。
これにより、焼畑を行った初年は、多くの肥料に恵まれ、雑草も生えづらいことから良好な収穫が見込めます。
しかし、数年もすると土地はやせ、雑草の種が侵入して収量はどんどん低下していきます。
そのため、耕作地を使えるのは1~5年程度と短くなるのです。
ちなみに、「野焼き」と混同されがちなのですが、両者には違いがあります。
野焼きには害虫防除などの効果以外に、植生の更新(古い枯れ草を除去し、新たな種が芽吹く)という効果もあります。
この点が焼畑と野焼きの大きな差になります。
記事中では、焼畑を行った休閑地に野生動物の餌になるような植物を植えたりと、野焼きの植生管理の発想も取り入れていらっしゃいますね。
特に草原の野焼きは、新たに生えてくる植生の栄養価が高まったり、家畜の採食嗜好性が上がる(つまりよく食べる)ため、そういった意味でも有効です。
放牧地が多いアフリカの草原地などで野焼きが行われるのはこういった要因がありますが、「焼畑」とは目的が異なることがお分かりいただけると思います。
さらにもう一つ。
常畑(伝統的な焼畑型農法ではなく、プランテーションなど移動しない畑地)開墾のための野焼きは、上記の焼畑とは根本的に発想が異なります。
例えばアマゾンの熱帯雨林(セルバ)の破壊の原因は、伝統的な焼畑農業ではなく野焼きであると言えます。
セルバの破壊の現状についてはこちらがわかりやすいです。
この野焼きが伝統的な焼畑と混同され、「焼畑は森林破壊の要因である」と、白眼視されることがあるのです。つ
まり、「伝統的な焼畑と野焼きは根本的な発想が異なる」と言えます。
循環農法としての焼畑
②について。草木灰の効果は数年(1年~5年程度と言われています)なので、その後は耕作地は放棄され、休閑期に入ります。
通常は10年以上の期間を取り、十分に植生を回復させます。
なぜ長期間の休閑期を取るかと言うと、植生の回復が不十分な状態で再度焼畑を行うと、
・草木灰の量が不足し、肥料不足に陥る
・樹木が少ないと燃焼時の温度が十分に上がらないため、初年から雑草に悩まされ、収量が上がらない
などの要因があるとされています。
循環サイクルを守れば伝統的な焼畑は「持続可能な農業」と言えます。しかし、人口の増加や焼畑を行える土地の減少などでこのサイクルが短くなり、過耕作状態に陥って本来のメリットを生かせない事態も発生しています。また、焼畑による大量の煙や二酸化炭素の発生は、環境問題として取り上げられることがあります。
焼畑農業の栽培作物
③について。
焼畑を行っている地域は、そもそも
・土壌の肥沃度が低い→草木灰を肥料に
・土壌が酸性に偏っている→草木灰で中和
・植生の回復が早い→熱帯林は比較的成長が早い
のですが、熱帯で肥沃度が低い酸性土…というと、地理の土壌の定番「ラトソル」が連想できてほしいところです。
そして、この地域で何を栽培しているかというと、「イモ類」。
熱帯など温暖な地域の作物と言うと米(水稲)のイメージがありますが、水稲は栽培に大量の水と肥沃な土壌が必要で、焼畑の農地には不向きなのです。
特徴的なイモとしては「タロイモ」「ヤムイモ」「キャッサバ」がありますが、タロイモはサトイモの仲間、ヤムイモはヤマトイモの仲間で、日本を含む各地に分布しています。
また、キャッサバはアマゾンが原産とされており、毒を持つ品種もあるため、主にでんぷんを取り出して食用とします。日本では「タピオカ」の原料としてお馴染みですね。
というわけで、今回は伝統的焼畑農法についての記事の紹介でした。