各国紹介(ヨーロッパ) アンドラ
地理に関心がある皆さんへ。
各国地誌を見ると、地理の要素や要因、系統地理を理解する助けになります。地理の学びは物事を見る解像度を引き上げてくれます。
本日の一国は「アンドラ」。
ピレネーの山中に位置する内陸国。9世紀に起源を持ちますが、独立は1993年と最近のことです。
では、参りましょう。
アンドラ公国は、スペインとフランスの国境、ピレネー山脈の東部に位置します。
国名の由来にはいくつかの説がありますが、アラビア語の「アルダーラ(الدارة)=木が生い茂る場所)」がその一説。
アラブ人がこの地を征服した際、この地域が深い森林地帯であったことから名づけられたと言われています。
この地域には1万年以上前から人々が定住しており、峡谷地帯で狩猟を行っていたと考えられています。
紀元前2世紀頃のポエニ戦争にて、カルタゴ軍がこの地域の先住民に遭遇、彼らを「アンドシンス」と呼んでおり、こちらを語源と取れば、国名は古代ギリシア語由来であるとも考えられます。
国土面積は468㎢、人口もおよそ8万人という、マイクロステートの一つです。
国の起原は、9世紀に成立したウルヘル伯爵領(スペイン辺境領)。
大国フランスとスペインに挟まれているため、度々存亡の危機に瀕しながらも両国の緩衝地ともなっており、命脈を保ってきました。
正式な独立は1993年で、比較的新しい国。
「公国」となっていますが、現在の国家元首はフランス大統領とスペインのウルヘル司教が共同で務めています。
地形はピレネーの険しい山地と深い峡谷、盆地で構成されていて、平均標高はおよそ2,000mに達します。
最高峰は西部にあるコマ・ペドローザの2,946m。
しかし、ピレネー山脈の最高峰が3,400mほどあることから見ると、ピレネー山脈の中で取り立てて標高が低い地域というわけではありません。
首都アンドララベリャには、主要河川ヴァリラ川が流れており、これはエブロ川の支流にあたります。
エブロ川は地中海にそそぎ、河口部に形が特徴的で(鳥趾状三角州の一種)肥沃なデルタ(三角州)を持ちます。
いずれにしても、同国は山岳と河谷、そして盆地で構成されており、平地は極めて乏しいと言えます。
気候は、基本的には西岸海洋性気候(Cfb)に近い気候ですが標高が高いため冬はかなり冷え込みます。
盆地性のため寒暖差が大きく、夏の最高気温は40℃近くに達することもあり、体感としての寒暖差はかなり大きいと言えます。
標高およそ1000mにある首都アンドラ・ラ・ベリャの1月平均気温は2.1℃、7月は18.8℃、年降水量は900㎜ほどです。
産業は主に観光業。
空港も鉄道もないため交通の便が良い国とは言えないのですが、風光明媚な土地柄はリゾート地としての魅力があり、さらに免税店が多く、「買い物天国」として有名。
ちなみに、農業でタバコの葉の生産があるため(品質も良い)、タバコが非常に安いのだそうです。
かつてはフランスとスペインの貿易の中継地として重要な役割を担いましたが、交通網の発達などによりその役割は低下しつつあります。
2011年まではタックスヘイブン(租税回避地)の一角でしたが、2012年以降各種の課税が始まり、金融業は産業の一角ではあるものの、タックスヘイブンとは言われなくなっています。
国民一人当たりGNIはおよそ37,000ドルと高いのですが、輸出できる品目が乏しいため貿易収支は大幅な赤字(輸出2億ドル、輸入13億ドル)。その赤字を観光収入で補っています。
観光客は2020年のデータでおよそ190万人、観光収入は19億ドルくらいです。
民族は、カタルーニャ系のアンドラ人が4割、スペイン系が3割、ポルトガル系が2割、フランス系が1割など。
言語はカタルーニャ語が公用語ですが、スペイン語やフランス語も広く使われています。
宗教はやはりカトリックが圧倒的に優勢です。
ちなみに欧州連合(EU)には加盟していませんが、フランスが加盟している関係上、国内ではユーロが流通しています。
というわけで、フランスとスペインの強い影響を受けながら、独自の道を歩み続け、独立国となったアンドラ。
日本ではまだマイナーですが、なかなか面白い国ですので、ヨーロッパ観光の際にルートの一つに入れてみては如何でしょうか。
今日はこれくらいで。
地理に関する動画を投稿しています。
各国紹介、一問一答、世界の奇妙な国境線、地図の歴史、国当てクイズ(ショート)などのシリーズを進めています。
また、地理系の偉人の業績についても取り上げていく予定です。
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