各国紹介(アジア) モンゴル
地理に関心がある皆さんへ。
各国地誌を見ると、地理の要素や要因、系統地理を理解する助けになります。地理の学びは物事を見る解像度を引き上げてくれます。
本日の一国は「モンゴル」。
かつて世界を制覇したモンゴル帝国の末裔。人口密度最小の内陸国。遊牧民の国のイメージは変わりつつあります。
では、参りましょう。
モンゴル国は、東アジア、ロシアと中国に南北を挟まれた内陸国。
国土の8割は草原地帯、南部にはゴビ砂漠が広がり、海隔度が高いこともあり気温の年較差の大きい大陸性気候です。
降水量は少ないものの、緯度が高い(北緯41度から52度なので、北海道よりも北にある)ため蒸発量も少なく、大半の地域は砂漠にはならずに済んでいます。
国名の由来はよくわかっていません。
4世紀、この地域で活躍した英雄「ムグル」の名から来たとも、現地の山、河川などの自然環境の名前から来ているとも言われています。
国土面積は156.4万㎢。人口は334.8万人で、人口密度は2人/㎢と世界最小です。
一方で都市人口率がおよそ7割、しかも首都のウランバートルに人口の半分近くが集住しています。
しかし、地形図を見ると、平坦な草原ばかりではないこともわかります。
西と北には全く様相の異なる山岳地帯が走っています。
西側にはアルタイ山脈があり、最高峰のベルーハ山の標高は4,506m(モンゴル最高峰はホイテン峰(4,374m)。平均標高1,500mを超える険しい山地です。
アルタイ山脈は、アルプス=ヒマラヤ造山帯からは外れていますが、南にあるインド半島の圧力で隆起し、標高が高くなっています。
また、アルタイ山脈の東には遊牧民族の故郷とも言われるなだらかな丘陵地、ハンガイ山脈があり、2つの山脈に挟まれた地域は湖沼地帯になっています。
火山地帯も存在しており、観光名所として名高いテルヒーン・ツァガーン湖は火山から噴出した溶岩による堰止湖です。
現在は目立った火山活動はないものの、温泉が湧出することが火山地帯であることを示唆しています。
また、ハンガイ山脈はバイカル湖への流入河川、セレンゲ川の源流。 その豊富な水量は、同地に大量の雪が降っていることを伺わせます。
さらに北東部にはチンギス・ハーンの墓があるとされるヘンティー山脈が横たわります。
こう見ると、モンゴルの地形は平坦な草原地帯というイメージとは異なり、非常に起伏に富んでいることがわかります。
大半の地域はステップ気候(BS)や砂漠気候(BW)に属していますが、北部のロシア国境地帯には冷帯冬季少雨気候(DW)の地域が見られ、針葉樹林(タイガ)が広がっています。
全域で共通しているのは晴天が多いことで、年間で晴れる日数は250日以上。モンゴルの異名は「永遠の青空の国」。
モンゴル国旗の青は、その青空を象徴しています。
一方、冬になるとシベリア気団にすっぽりと覆われ、特に北部は極寒となり、-60℃に達することもあります。
北東部にある首都ウランバートルの1月平均気温は―21.7℃、7月は18.5℃、年降水量280㎜ほど。
冬の極寒が際立ちますが、これでも、シベリア気団の中心からは少し離れているため、冬の冷え込みは穏やかな方です。
基幹産業は伝統的に営まれる畜産業、そして近年存在感を増している鉱業。
まずは伝統ある畜産業について。
330万人の人口に対して、5種の家畜、すなわち羊、ヤギ、馬、牛、ラクダの数が圧倒的に多く、5種全て合わせると人口のおよそ9倍、2,900万頭近くに達します。
中でも羊とヤギはそれぞれ約1200万頭と圧倒的で、次に馬と牛が約200万頭、ラクダが最も少なく20万頭ほど飼育されています。
近年成長が著しい鉱業。
資源埋蔵量は世界屈指。特に金、銅、モリブデンなどが有名。現在でもすず(世界3位)、アンチモン(7位)、レアアース(希土類)2位など世界上位にある品目もあり、将来性の高さが期待されています。
ちなみに「アルタイ」とはモンゴル語で「金の山」という意味。
この地域、実は古くから金を産出する資源地帯として有名だったことが伺えます。
また、エネルギー資源としては石炭を産出。わずかながら原油も産出します。
内陸という立地の不利さはあるものの、未開発の資源が多く、今後の開発次第では経済発展に大きく貢献する可能性があります。
一方で、資源依存の経済は国内の政治・経済を脆弱にする危うさもあり、その影響は必ずしもポジティブなものばかりではありません。
また、便宜置籍船国の一つで、内陸国にも関わらずモンゴル船籍を持つ船が多くあります。
首都ウランバートルには人口の半分近くが住み、一極集中状態です。
ウランバートルは政治や経済、文化の中心でもあると同時に、宗教都市でもあります。
その起源はチベット仏教の活仏、ジェブツンダンパ・ホトクトの坐する門前町。
現在は整然とした旧ソ連式の街並みと市場経済導入後に乱立した建築物、近年になって建設されている高級マンション、外縁には元遊牧民が住む「ゲル地区」が見られるなど、同国の歴史の変遷を積み重ねたような街並みが広がっています。
民族はモンゴル系の諸民族がおり、ハルハ人が多数派ですが、他にカザフ人など周辺諸国の民族も少数。
公用語はモンゴル語(公用語)で、西部ではカザフ語の話者が多くなっています。
宗教は、チベット仏教の信者が人口の5割ほど。
無宗教が4割程度です。社会主義政権時代に禁止された伝統信仰(シャーマニズム)の復活もみられます。
このように、大草原を駆ける遊牧民族の国というイメージはかなり変わりつつあるモンゴル。
今後は資源国としてますます存在感を高めていくことが予想されます。
日本とも友好・交流の歴史は深く、相撲でのモンゴル人力士の活躍も有名です。
一方で中国やロシアに囲まれているという事実もあり、今後、どのような舵取りをしていくか注目されます。
今日はこれくらいで。
モンゴルに関する動画はこちらに投稿しています。
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各国紹介、一問一答、世界の奇妙な国境線、地図の歴史、国当てクイズ(ショート)などのシリーズを進めています。
また、地理系の偉人の業績についても取り上げていく予定です。
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