Organize my thoughts
私は小さい頃、とても痩せていた。ガリガリというレベルではなかったが、ひょろりとしていた。しかも外で遊んでばかりいたので、真っ黒に日に焼けており、ごぼうというあだ名もつけられたこともあった。
私の食欲にはとてもムラがあり、一口食べてごちそうさまの時もあったし、夕飯の前に大きなおにぎりを食べて、夕飯もしっかり食べるという時もあった。母親は私の食欲のムラにあまり注意を払っていなかった。それより、いくらでも食べる兄と弟に追われるように食事を作るのが精一杯だったんだろうと思う。
小学生低学年の時、私は扁桃腺がよく腫れ、しょっちゅう熱を出して学校を休んでいた。そのため扁桃腺を摘出する手術を勧められ、夏休みに入院して手術を受ける事になった。手術自体は問題なかったのだが、入院中私は病院のご飯をほとんど食べなかった。ご飯が美味しくなかったのか、喉の手術後で食べ物を飲み込むのが不快だったのか、理由は覚えていない。
看護師さんには毎回食べなさいと言われ続けていたけれど、とにかく要らないと思ったら絶対口を開けない子だったので、困り果てた病院から親に連絡が入ったらしく、病院の近くで働いていた父親がお昼と夕飯の時間になるとふらっと病室に現れて、私に食事を与え始めた。
スプーンで一口ずつ食事を私の口に入れていく父。仕方なくもぐもぐする私。今振り返れば父も仕事で忙しかっただろうに、早く食べろとは言われなかった。
一度だけデザートにキウイがでた。皮を剥かれ四分の一に切られたキウイを、父は、これなら一口でいけるだろ、とそのまま私の口に放り込んだ。よく熟れていたキウイはつるんと私の口に入ると、噛むまもなく喉に流れていった。喉を詰まらせることはなかったが、術後の傷跡にはしっかり当たってしまい、しかもキウイの酸味がばっちりしみた。
その夜は何とも言えない鈍痛に悩まされ、眠れなかった。
父にこのことは、話していない。何でだろう。話しても父なら、そうか、すまんかったなと言ったはずだ。
父が他界し、16年がたつ。
今でもキウイを食べる度に、このことを思い出す。