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非鉄非金属。

どうでもいい言葉が意外と好きだったりする。
例えばつまり「絆」だとか「愛」だとか「友情」だとかじゃなしに、例えばつまり「不可逆」とか「穂状花序」とか「一回性」だとか。ちなみに「穂状花序」は井伏鱒二の「屋根の上のサワン」で知ったことば。

「非鉄金属」とかも、好き。なんだろう? 子どもの頃、初めて磁石を手に持って、「あ、これはくっ付く!」「これは付かない!」などとやっていた頃の記憶がよみがえるからだろうか。
私たちの世代は(おそらく)鉄に対する愛着というか執着というかが、ある。
「あ、これはくっ付かないんだ。鉄じゃないんだ。アルミなんだ。」
といったときの「落胆」に似た感覚を、今も覚えている。

近頃ではプラスティックさえ金属のような顔をし始めるときがあり、「非鉄金属」どころか、「非鉄非金属」すら世間には蔓延っているように思える。

「でもさぁ、『非鉄非金属』ってさぁ、それって結局は『鉄』ってことなんじゃないの?」
あつをはゲームのコントローラーを弄りながら、私のひとりごとに勝手に加わって来た。
「は? なんでそうなるの?」
「だってさぁ、バカボンのパパが『賛成の反対なのだ』とか言ってたやん」
と言ってあつをは、こっちを振り返り、ご丁寧にコントローラーも置いて、自らの鼻の下に右手の人差し指と中指、2本をあてがって言う。
「いやいや、『賛成の反対』はただの反対やんか。そして、あんたのそのポーズはバカボンのパパじゃなくて、『カトちゃん、ペッ』やから…!」
「あっ、そっかぁ…」
と言って彼の取った「反省」ポーズ、
「ごめん。それはレレレのおじさんのポーズ。あなた、何ひとつ反省できてないからね…。」

「一回性」という性質を持つ私の貴重な人生を、こんなあつをに捧げてしまって良いものか、私は内心頭を抱えた。