#1 なにか上手いことを言っているようで、そんな大したことを言ってない人
朝のニュース番組を観る。
芸人が神妙な面持ちで、スポーツ選手に話題を振る。スポーツ選手は、自信を持った表情でハキハキとアバウトなことを言う。それを聞いた芸人は、「うんうん」と頷きながら、スポーツ選手の隣にいる俳優にも意見を求める。
俳優は、当たり障りのない言葉を数個並べ、悪気もなく話題を120度くらいそらした。一通りの発言を終え、やり切った表情の俳優は、普段かけたこともないような銀縁の丸メガネの位置を人差し指でクイッと上げた。
しかし、なぜこの俳優は普段かけないようなメガネをわざわざかけているのだろうか。
朝だからコンタクトがうまく入らなかったのだろうか?
いや、違う。恐らくこのメガネは、少しでも知性があるように見せ、発言の説得力を高めようという意図があるのだ。
メガネは本来、視力を矯正するためのものでしかない。それが、このように「知性の象徴」のようなものになってしまっているのだ。
伊達メガネもその最たる例ではないだろうか?オシャレの意味合いも勿論あるだろうが、メガネが発明された当初には、レンズを入れないなど、車輪のない車同然と考えられていたはずである。
このように、物事は時間と共に意味合いを変化させていく。100年後くらいには、私たちの良く知っている道具が、良く知らない形で使われているのかもしれない。