世界の壁~KCGT決勝ステージを終えて
こんにちは。もけもけです。
先日のKCGT決勝ステージはベスト16という成績でした。月も変わり世界大会の熱も冷めてきた頃ではありますが、備忘録がてら自分の決勝ステージを振り返りたいと思います。
個人的な話を先にすると、私にはトッププレイヤーを名乗れるほどの実績はなく、決勝ステージへの進出も運に恵まれた部分が大きかったです。ただ、世界大会に出る以上は頂点を目指して準備し、それなりに勝算をもって臨んでいました。予選を終えてからの約2か月間はとても濃厚な期間でしたので、自分の視点からの振り返りを通じて少しでも参考になる部分があればと思います。
まとまりもなく長くなってしまいましたが、全編無料ですので最後までお付き合いいただければ幸いです。
本戦1stステージ
予選を終えてから
私はKCGT予選を109位の成績で通過しました。予選の模様はこちらにまとめているので、本当に暇な人は併せて読んでいただけると嬉しいです。
KCGTは同じ予選通過でもその内容に差があると勝手に思っており、大まかに分ければ金アイコンを争うような最上位層、順当に銀アイコンを確保した中間層、銅アイコンでもなんとか128位圏内にしがみついた下位層の3グループが存在します。予選最終日の13時半まで128位前後を反復横跳びしていた私は通過者の中では下位のグループでした。
これは本戦に向けての調整で気付いたことですが、毎回のように金アイコンを争う人と銀アイコンに届くかどうかの人ではプレイングの精度が明らかに違います。伏せ読みの技術を例にとっても、そもそもラグから正確な伏せ読みができているか、伏せを読んだ上で攻めるのか守りを固めるのかの判断など、様々なところでプレイングの差が出ます(私は1位や金アイコンを争ったことがないので上手く言語化できませんが、なんとなくニュアンスは伝わるかと思います)。
さて、個人的にKCGTの本戦出場は今年の大きな目標の一つだったので、それを達成した喜びはそれなりにありました。ですが、予選の結果発表の画面を見ているうちに、世界で128位以内に入れている今はさらに上を目指す最大のチャンスであることに思い至ります。元より年に1回しかない世界大会、目標は高く持った方が楽しいに決まっています。
とはいえ109位で通過した自分が今のまま本戦突破を目指すのは至難の業です。私はチームへの所属経験がなかったので、今の自分に必要なのはハイレベルな調整の場だと考えました。そこで、本選進出が決まった日にチームの募集をかけ、連絡をいただいたチームにその日のうちに体験入団しました。
本戦を勝ち抜くプラン
※この節は本戦が行われた7月上旬の環境の話ですので現在と異なる点があります。ご了承ください。
KCGT本戦の突破には基本的に5勝1敗以上の成績が必要です。先ほど予選通過者の中でも実力に差があると書きましたが、そうは言ってもカードゲームである以上、対面の有利不利や引きなどの運要素は絡みます。どんなにプレイングの上手い人でも手札事故や相手のゴリハンを食らえば敗退します。
そんな中で本戦を勝ち抜くためには、「相手の上振れを割り切るか、自分の事故を割り切るか」の選択が必要でした。そして私は、相手の上振れを割り切って安定性で勝負するプランを選びました。
もう少し具体的に言うと、私は予選でずっと使っていた彼岸を本戦でも使おうと決めていました。彼岸というデッキは、DDやファリスHEROのような爆発力はない代わりに、構築さえ寄せれば高い確率でベアトリーチェを成立させることができます。特に先攻のベアトリーチェは環境随一の高い制圧力を誇っていました。
そして、5勝1敗の成績を収めるためのプランとして、「先攻で3勝、後攻で2勝1敗」というイメージを描きました。そのために、先攻ならベアト成立で確実に勝ち、後攻でも平均的な盤面なら捲りを狙えるように構築を寄せました。DDの「ジャイトレ+アビス+テムジン+月+戦乙女」のような最強展開は割り切って、1妨害くらいなら乗り越えられる初手を目指すという感じです。
実際に本戦で使った構築がこちらです。
不純物を7枚に抑えることで先攻ベアト率を最大化し、後攻用にサイクロン・供物・クレーン・デスガイドという月の書1枚を踏み越えられるカードを合計7枚採用しています。
たった2か月前のデッキですがかなり懐かしく感じますね。
結果的にこのプランが功を奏して、本戦を5勝1敗で勝ち抜くことが出来ました。本番では相手の事故に助けられるなど、運に味方された面もありましたが、上記のリストは本戦の環境における一つの「答え構築」だったと思っています。
決勝ステージに向けての準備
本戦1st直後~セレボ登場
本戦1stステージの直後、当時2トップだったDDと彼岸にリミットがかかりました。決勝進出者の大半がこの2デッキを使用していたので妥当だと思います。
また、【シューティング・スター・ロード】【デモンズ・レゾナンス】【薔薇の魔法】の3スキルが上方修正されました。
特にローズは今回の世界大会で猛威を振るうことになります。
これらのリミットの結果、強めに規制されたDDと彼岸が少し立ち位置を下げ、代わりにローズやファリスHEROが台頭し、どのテーマが強いのか掴めない手探りの環境になりました。
7月の間は、今まであまり触っていなかったメタルフォーゼやオッドアイズ、ファリスHEROなどのテーマをランクマで回しつつ、のんびり調整していました。
8月1日にセレクションボックスが登場し、強制脱出装置や次元の裂け目といった汎用カード、さらに邪竜星ガイザーや機皇神龍トリスケリアなど既存テーマを強化するカードが実装されます。
個人的には前者の汎用カード2枚の使い道に注目しており、ガイザーとトリスケリアのことはそこまで考えていませんでした。ところが実際には後者のガイザーとトリスケリアが、今期の環境を占う大きな要因でした。ここからは自分の使用したテーマを中心に考察を述べます。
機皇
8月1日、チームメイトのあしゅさんから、機皇が強すぎて一瞬でキングになったという知らせを受けました。
どうやらトリスケリアが最強らしいです。
もともと機皇というデッキは【機皇精製】のスキルによって抜群の安定感を誇っていました。ただ、安定してオブリガード展開ができるのは良いものの、その後にできるのはせいぜい4エクとワイゼルを着地させて妨害しながらゆっくり戦うか、ドレッドノイドからのグレートマグナス(以下「アーゼウス」)を狙うくらいでした。
それが、トリスケリアという実質ノーコストで出てくる超強力フィニッシャーが加わったことで、従来の安定性に加えて環境随一の爆発力を獲得します。
こちらが実際に使用した構築です。
スキルによって任意の機皇モンスターが1枚初動になる関係で、デッキを厚くして不純物を大量に投入することができます。もちろんどんなデッキでも不純物を多くすること自体はできますが、環境で勝ち抜くためには動きに再現性がなければなりません。機皇の最大の強みは、高い初動率(約95%)を担保しながら、強力な妨害札やバック干渉を引き込める点にあります。
このデッキは先攻に強く、とりわけギアギガントX+2伏せという構えがかなり強いです。この構えは見かけ上は単なる2妨害ですが、turn3にはトリスケリア+ドレッドアーゼウス+αという殺傷能力の高い盤面に変貌します。
バックを剝がすことやギアギガントを処理することまではできても、その上でturn3の猛攻を凌いで捲ることは、よほど上振れなければどの環境デッキでも基本的に不可能です。
また、後攻でオブリガード展開を妨害されるのは厄介ですが、それでも持ち前の不純物の多さを生かして耐えれば、パワーの低いデッキに対しては容易に逆転できます。もちろんローズの先攻ガイザー3伏せのような最強の盤面を捲ることは困難ですが、それは機皇の弱さというより、現環境がおおむね先攻有利であることに起因するものだと思います。
チームでも早い段階で、機皇がかなり強く、かつローズにも高い勝率を期待できるという認識が共有されていました。上記の構築は、ダブルサイクロンや蠱惑など微調整した部分はありますが、ほとんど8月初めにチーム内で完成したリストそのままです。また、9月の今現在でも通用する機皇の最強構築だと思っています。
ローズドラゴン
スキルの上方修正やガイザーの実装によって、既存のローズに竜星ギミックを加えた竜星ローズが台頭してきます。8月初旬から多くの大会でローズが結果を残し、間違いなく今期のtier1ないしtier0といえるテーマでした。
ローズも機皇と同じように任意のローズドラゴンが1枚初動になるため、安定感と不純物のスロットを両立できるのが強みです。
シンクロテーマは後攻で踏む月の書に弱いという共通の難点を抱えていますが、ローズの場合は薫り貴き薔薇の芽吹き(以下「ベーサル」)というアドを稼ぎながら耐久性能を上げるカードの影響で、月の書で動きを止められても耐えながらアドが伸びていきます。その結果、相手からすると月の書などで妨害した返しのターンに致命傷を与えるだけのパワーがなければ、結局リソース勝負で負けてしまいます。
これがローズの基本的な強みで、竜星ギミックはこれに更なる爆発力を付与します。
竜星ローズの基本的な勝ち筋として、先攻で成立したガイザーを相手が処理できなかった場合、高確率でturn3のワンショットキルが成立します。
例:turn2のエンドフェイズにベーサルでロクス蘇生→turn3ガイザー効果で①除去→ガイザー破壊時の効果でトウテツ特殊召喚→トウテツ+ロクスでショウフクをシンクロ召喚、ショウフク効果で①除去→ショウフク効果でベーサルを割りながら下級ローズを蘇生、ベーサル破壊時の効果でロクス蘇生→妖神シンクロ召喚で①除去
上記は、召喚権を使わずに3除去しながら盤面に2300打点と2100打点を並べるルートです。
実際には展開の途中で妨害を受けることが多いですが、召喚権が余るため、妨害を受けてもホワイト通常召喚などから容易に手数を増やすことができます。
8月初め頃にこのルートを知って、すぐに竜星ローズを握ることを決めました。単なる安定感だけでなく、turn3のキルルートまで含めた再現性の高さが評価に値すると思っています。ガイザー自体は対象耐性を持つ2600打点で場持ちの良いモンスターですが、単に場持ちが良いのか、処理しなければ即死レベルの後続を備えているかでそのパワーも変わってきます。
また、ローズの構築は大きく4つの候補がありました。①にんじん型、②竜星(トウテツ+リフン)型、③竜星(トウテツ)+黒薔薇型、④にんじん+竜星型です。
①はガイザー実装前に流行っていた構築です。ホワイトの効果でにんじんを墓地に落とし、ブラロ+にんじんの4300打点でキルを取るのが基本的な勝ち筋です。
これも強いですが、やはり竜星ギミックが大きな強みだと考えていたこと、上で述べたように竜星ギミックを兼ね備えたガイザーとそうでないガイザーではパワーが違うと感じたこと(実際、竜星ギミックがないために耐えられて逆転されるというゲームが調整段階でかなり出現しました)から、採用を断念しました。
②は竜星出張のスタンダードです。スキルの制約でローズドラゴンの他に1枚はチューナーが必要な都合上、竜星チューナーのリフンを採用しています。トウテツが8シンクロに繋がるほか、ガイザー+リフンでショウフクを立てれば②除去が可能です。
素引きしたくないカードを2枚に抑えた上でパワーも高く、かなり強力な構築だと思います。デッキ提出までの期間はこの型を一番長く調整していました。
③は竜星ギミックを組み込んだ上で、初動を兼ねて黒薔薇を採用(スキルのトリガーになります)している型です。普通の竜星出張に比べて安定感が高く、リフン込みの8シンクロの筋がない他は手数でも引けを取りません。
②と同じく竜星ローズの一つの理想形だと思います。
④は竜星ギミックに加えてにんじんも入れた欲張り構築です。②と③の難点として、ショウフク経由のキルルートを妨害される際に、ショウフク+下級ローズでギリギリ4000打点に届かない(2300+1600)という問題がありました。これににんじんギミックを加えることで、2300+1900=4200打点の盤面を作る筋が生まれます。一方で、サブギミックに4枚のモンスターを投入している都合上、不純物の枠は他の型より狭くなります。
決勝ステージではこの型を採用しました。初めはギミックを詰め込みすぎて事故率が上がることを懸念していましたが、にんじんは初動でホワイトさえ絡めば無条件で手数が増やせる点、竜星2枚+にんじんのうち1枚までなら素引きも許容できる点を考慮し、長所の方が大きいと評価しました。
にんじんギミックが生きる例として、ブラロの②の効果込みでフォトンロードを突破するルートがある、ブラロ効果に墓地のホワイト効果を絡めることで相手の竜星にタイミングを逃させる(ホワイトがチェーン1、ブラロがチェーン2になります)など、地味な強みが色々とあります。
また、KCGTのルール(東海ルール)の性質上、月の書などの強力な汎用札を散らす必要があり、不純物の枠を多くしてもデッキパワーをあまり上げられないという事情もありました。
機皇とローズが現環境の2トップだという認識は変わらなかったため、この2デッキの採用はさほど迷わずに確定しました。
銀河
機皇、ローズに次ぐ3番手デッキとしては、当初から銀河が第一候補でした。
最初に考えていた構築は、以下のように次元の裂け目を投入した型です。
先攻有利の現環境において、銀河は先攻ではフォトンロード、後攻では大型エクシーズの連打によるワンキルという明確なプランがあります。また、不純物についても他のデッキに入れづらい狡猾な落とし穴を無理なく採用できる点が魅力的でした。
一方で、銀河はDDクロウに弱いという致命的な弱点を抱えています。ウィザードや遠征を絡めて墓地を経由しないルートなど、ケアする方法もあるにはありますが、クロウをまともに食らえば一気に致命傷を受けることになります。そこで、先に次元の裂け目を貼ってから展開することでクロウを封じれば最強なのでは?ということで、次元銀河を調整していました。
(ちなみに、スキルで落ちるモンスターやX素材から墓地へ送られるカードは裂け目の影響を受けないので、意外と銀河側の展開には支障が出ません)
ただ、機皇の台頭でDDクロウが評価を下げつつあった点、全デッキに3枚しか入らないクロウよりも魔法罠による妨害の踏み越えが重要である点、先攻で立てたフォトンロードを月や聖杯から守る意味で聖槍がかなり優秀である点などを総合的に加味した結果、最終的には狡猾と聖槍を入れた20枚構築に落ち着きました。
流行りの構築と異なる点としては、ドラゴンを1枚に抑え、ナイトを2枚採用しています。ドラゴンの素引きは基本的に事故ですが、ナイトは通常召喚で手数になるため素引きも許容できます。また、スキルでナイトを落としてナイト蘇生から遠征でドラゴンをリクルートする筋など、DDクロウの被害を最小限に抑える展開ルートなどもあります。特に事故率を下げられる点がナイト2枚型の強みだと思います。
他のテーマ
・彼岸
予選から頼ってきたテーマなので決勝ステージでも使いたい気持ちはありました。ただ残念なことに、彼岸はメインギミックでガイザーを突破できないという致命的な弱点があります。
泣きながら絆彼岸を煮詰めましたが、シュンゲイ込みの3100ガイザーや銀河から押し寄せる4000オーバーの大群を見て心が折れました。今までありがとうございました。
・ファリスHERO
決勝ステージでも採用者のいた強力なデッキです。流行のきざしを見せていたフェイバリットHEROに強く、回ればどのデッキも圧倒できる爆発力があります。
ただ、調整段階では強さが未知数で、他に安定感の高いデッキを候補にしていたこともあり、採用は見送りました。
・フェイバリットHERO
銀河とどちらにするか最後まで迷った4番手デッキでした。ネオスナイトの打点でフォトンロードを容易に突破できる点、リキッドマンのドローでDDクロウや因果切断、奈落の落とし穴といった除外系の不純物を探しに行ける点から、銀河には特に強いです。
また、不純物の寄せ方次第でローズや機皇とも渡り合えるので、フルパワー構築のフェイバリットHEROを握るのも一つの答えだったと思います。
調整段階では上記の26枚構築を回していました。巷では30枚構築が主流ですが、このデッキの強みであるリキッドマンを引き込むために少し削った方が良いと思っています。ちなみにパラドックス・フュージョンはチームメイトのあしゅさんに教えてもらいました。
難点として、月の書や奈落など強力な汎用札は機皇とローズに割く予定だったため、残った不純物では少しパワーが落ちるという問題がありました。例えば、ローズに先攻で鬼動武者を立てられた場合、月の書の有無によって突破の容易さがかなり変わってきます。また、高いシェア率が予想されるファリスHEROに対しても、クロウ1枚では展開を止められず、苦しい戦いを強いられます。
以上のような検討結果から、最終的に「機皇・ローズ・銀河」の3デッキを提出しました。
調整の日々
決勝ステージ10日前にデッキを提出してからはひたすら調整に次ぐ調整の日々でした。
何としても勝ちたい。そのためにはデッキを回し続けてプレイングを向上させるしかありません。
22時に始めた調整が気付けば朝5時過ぎまで続いていました。
6時を回った頃に「最後にマッチやって終わりましょう」となるのが恒例でした。
眠くなったら目薬を差し、コーヒーを飲み、気持ちを奮い立たせて調整を続けました。
(健康が第一なので皆さんは真似しないでください)
毎日の呼び出しに快く応じ、丁寧にプレイングを検証してくれたチームメイトたちには本当に感謝しています。
デッキ提出から本番までの調整は間違いなく今までで一番リンクスのことを考えた時間であり、最も充実した期間でした。
ゲームの勝敗に対してここまで本気でこだわることができる、全力で一喜一憂できる、そんな舞台が用意されている。それがどれほど幸せなことか、ひたすら噛み締めていました。
自分なりにできる準備は尽くした、あとは本番で全てをぶつけるだけだと決意し、ついに決勝ステージ当日を迎えます。
ちなみに前の日は本番前夜ということで、調整を早めに切り上げて3時頃に寝ました。
決勝ステージ
1回戦
1回戦の相手はツバサさん、直近のKCで金アイコンを獲得している強敵です。
初戦のデッキは銀河を選択しました。
最大の理由は、使用カードが重要な情報になるこのルールの特性上、汎用札はなるべく見せないに越したことはないためです。また、トップシェアのローズに対する尖ったメタ札(デビリアンソングなど)を相手が用意している場合、相手目線では初戦が狙い目と考えられるため、相手の読み筋を外す狙いもありました。
もちろんその結果としてクロウ3積みのデッキを踏む可能性をあるため、全ては机上の空論です。
結果的に初戦は有利対面のファリスHEROと当たることができ、運良く聖槍を引いてワンキルすることができました。
2戦目は機皇を投入しました。そこまで深い選択理由はありませんが、3デッキの中で機皇に最も信頼を置いていたため、あわよくば2タテを狙う気持ちで投げました。
1分後、相手のガイザー3伏せに対し、なけなしのサイクロンをベーサルに当ててスマホを投げました。
気を取り直して3戦目です。こちらのローズに対して相手は銀河、先攻を取られましたが幸運にもここで相手が事故ります。
相手の初動はドラゴン+2伏せでした。
こちらはロクス切りホワイトの理想展開。ロクス効果で20秒ほど悩んだ末に2枚目のベーサルをサーチします。
相手の伏せカードは聖槍×2だったので、結果的にここでウィッチをサーチすればブラロ+にんじんでワンキルでした。
ただ、光っている2伏せが何かわからず、狡猾か蠱惑かあるいは思いもよらない隠蔽カードか…と考えた末、万が一とんでもない妨害の踏み方をしても立て直しが効きそうなベーサル2枚目を選びました。
ブラロ+3伏せで2400のダイレクトアタック。手札2枚では3伏せを越えられないので安心してターンを返します。
相手のリソースは続かず、何とか勝つことができました。
これで1回戦突破です。
2回戦
2回戦の相手はACTさん。KCで1位を取ったシード選手で、優勝者予想でも人気の筆頭だったと思います。
相手からはこちらの使用デッキは全て割れており、何枚かの汎用札も判明しています。
試合が始まるまでの30分ほどの時間で作戦を必死に考えました。
相手目線、こちらが2回連続で銀河を初戦で投げることは心理的にしづらいと考えれば、銀河を苦手とするデッキ(ファリスHEROなど)を初戦に持ってくるのではないか。
その裏をかいて銀河で行くか。
いや、その思考に至ることも相手の想定内か?
これ以上考えても仕方ないので予定通り銀河を初戦に投入しました。
読みが当たったのか外れたのか、なんと銀河ミラーになりました。しかも幸運なことに先攻でサンダルフォンが成立します。
銀河ミラーで先攻サンダルフォンが成立すれば、かなりの確率で優位に立てます。
相手はスキルでドラゴンを落とし、3伏せでターンを返してきます。
こちらのドローはシャッフル・リボーン。
相手の砂時計は光っていません。
死者蘇生で相手のドラゴンを蘇生し、攻撃が通れば勝ちです。
急に手汗が出始め、心臓の鼓動が自分でも聞こえるようになりました。
落ち着け。
あれがブラフ3枚だった場合、こちらがモンスターを並べずサンダルフォン単騎で攻めれば、次のターンも相手は動けずに負ける可能性が高い。相手もそのことは承知の上だろう。それならブラフだけを3枚伏せてくることは考えにくい。
つまり・・・
あの中に狡猾がある。
待てよ。
ブラフだとしても遠征を伏せて、上からウィザードを引くことに賭けているんじゃないか。もしくは1枚がギャラサイの可能性もある。3伏せだから狡猾が含まれているとも限らない。
冷静ではいられないまま、めまぐるしく色々な可能性が頭をよぎり、手が震えました。実際に考えていたのは30秒程度ですが、5分ほど時間が止まったように感じました。
蘇生を打つか?打っていいんじゃないか?いや、こちらが優勢なのだから慎重になれ。
慎重に・・・
頭が真っ白だったので、どんな理由で結論を出したかは覚えていません。
気付けば私は負けていました。
途中で降参ボタンを押そうとして、「そういえばKCGTではサレンダーが出来ない仕様だったな」とぼんやり思ったことだけを覚えています。
しばらくは状況を飲み込めませんでした。
落ち着け。まだ立て直せる。ここから2勝することを考えるんだ。
少しでも悪いイメージを払拭するため、1回戦で勝利を収めているローズを投入します。
何の皮肉か、2戦目もミラーになりました。
先攻を取られ、ロクス+3伏せでターンを渡されます。
1回戦から数えて2連続で銀河対面。1回は相手の事故、次はこちらが先攻サンダルフォンを成立させる幸運が続いています。
なんとなく、良い流れはもう続かない予感がしました。
サイクロンが相手のベーサルに当たった時、予感が正しかったことを悟ります。
こちらは防御札を引けておらず、ベーサル1枚だけでは相手のガイザー展開を受け切れません。
スキルでサーチしたホワイトを召喚し、ホワイト効果で特殊召喚したロクスに月の書を打たれた瞬間、勝敗は決まりました。
それは私のKCGTが、長かった2か月半の戦いがこのゲームで終わるということを意味していました。
何もできずターンを返した後は、淡々と手続きを進めるように、相手の展開をただ見守る時間でした。
世界の壁を超えることは叶いませんでした。
「マッチに敗北しました 対戦お疲れさまでした」の無機質な文字列を見ると自然に涙がこぼれました。
あとがき~世界大会を終えて
私のKCGTは決勝ステージ2回戦敗退、世界ベスト16という結果でした。
決勝ステージに進出できたことは嬉しかった一方、正直に言えば自分のような実績の乏しいプレーヤー(銀アイコン1個のみ)がこの大舞台に出てしまっていいのかという思いは常にありました。本戦1stを10回やれば9回は落ちていたと思うので、幸運な1回を本番でたまたま引けたとしか言えません。
ただ、世界大会に出る以上は最低限、みっともないプレーだけは絶対に見せられないという思いで調整を頑張ってきました。
1年に1回の世界大会は注目度も高く、トッププレーヤーがどんな戦いぶりを見せるのかと期待の高まる舞台です。
敗退して悔しいのは自分だけですが、無名プレーヤーが世界大会で下手な試合を晒し、「こんなやつでも出られる大会なのか」と思わせることだけは避けたかったからです。
その意味では3デッキのプレイングとも、100点満点ではないにせよ一定の状態に仕上げることはできていたと思います。
もちろん、「悔しい」という思いが一番強く残っているので、世界大会に相応しいだけの実績を挙げて来年また戻ってきたいです。
当面は銀アイコンの数を増やすこと、あわよくば金アイコンの獲得を目標に、引き続き練習していくつもりです。
今回の決勝ステージを通じて、調整相手になってくれたチームメイトやTwitterで応援してくれた皆様、無事に大会を運営してくれた関係者の方々、多くの方にお世話になりました。
改めてこの場で感謝を伝えさせてください。本当にありがとうございました。
途中にも書きましたが、大の大人がゲームの勝敗に対して本気で熱くなれるというのは、本当に幸せなことだと思います。
そんな数少ない機会を与えてくれるデュエルリンクスは本当に素晴らしいゲームです。
デュエルリンクスのサービスがなるべく長く続き、今後も1回でも多くKCカップの熱狂を味わえることを心から願って、あとがきに代えたいと思います。
また、この記事を読んでリンクスに興味を持った人が将来KCカップを走り、上位を競い合うライバルになるとしたら、これ以上の喜びはありません。
でも銀アイコンを賭けて私と対戦するときはあまり強くない手札でお願いします。
それでは!
もけもけ