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UXリサーチモメンタムを止めない“Working Out Loud”を意識した取り組み

この記事は Research Advent Calendar 2023 の14日目の記事です。



こんにちは!NewsPicks プロダクトデザイナーのつづくです!

2023年ももう年の瀬。1年間って本当にあっという間ですね。とはいえこの1年間は自分にとってかなり大きなキャリアの分岐点になりました。

というのも、2016年に新卒入社して以来、「プロダクトデザイナー」や「UI/UXデザイナー」など、デザイナーとしてキャリアを築いてきましたが、今年から新たに、UXリサーチをメインに取り組む立場にシフトしていきました。

また、組織の建付けとしてもUX Research Unitという、プロダクト開発におけるUXリサーチフェーズを併走する横断組織が2023年に爆誕しました。
組織といっても、メンバーはリーダーと私のみの2人体制で、2人ともProduct Design Unitとの兼務(リーダーは他業務も兼任)なので、まだまだスモールチームではありますが、組織として立ち上がったことは、NewsPicksのプロダクト開発においても1つのターニングポイントになっているのではないかと、手前味噌ながら1年間の活動を経て実感しています。

組織的にもUXリサーチモメンタムが高まるなか、その灯を消さぬために、“Working Out Loud"を意識して行動していた1年間でした。


“Working Out Loud”とは

「Working Out Loud」(ワーキング・アウト・ラウド)とは、自分の仕事や学習のプロセスを他人と共有し、オープンにすることを指します。
この概念は、仕事や学習を進める上での透明性を高め、協力やフィードバックを促すことを目的としています。

Chat GPT 4より

もしかしたらこの記事を読んでくださっている方の中には
「UXリサーチを実践した(しようとした)けど、何を目的にどんなことをしているのか理解してもらえずに、モメンタムを醸成できなかった」
という経験をお持ちの方もいるかもしれません。

私自身も、そして組織全体としてもそういった経験をする中で、UXリサーチモメンタムを止めないためには、実践者側がその取り組みを主体的に他メンバーに共有し、積極的にフィードバックを得ることがとても重要だと認識しました。

この記事では組織立ち上げから約1年間で「プロダクト開発におけるUXリサーチフェーズの併走する」という主業務以外に行った、”Working Out Loud”的取り組みを以下3つの観点に分けて共有していきます。

1. 透明性を高める
2. ナレッジをオープンにする
3. 活動に対してフィードバックを得る


1. 透明性を高める

💬「ユーザーインタビューの結果、こんな気付きがありました。」
💬「ユーザビリティテストでこんな課題が見つかりました。」

こういった報告を受けたことがあっても、

🤔 実際にユーザーの顔を見たことがない
🤔 ユーザーの声を直接聞いたことがない

という人は、プロダクト開発に関わるメンバーであっても多いのではないでしょうか。

折角ユーザーインタビューを頻繁に行っているのだから、そのアセットをもっとオープンにすることで、どんなメンバーであっても、ユーザーの理解が捗るよう、「透明性を高める」一貫として、以下3つの取り組みを実践しています。

🎤  ユーザーインタビューのリアルタイム中継
🌲  User Interview Thursdayの実施
📣「ユーザーインタビューの取り組み」ダイジェスト動画の作成


🎤 ユーザーインタビューのリアルタイム中継

ユーザーインタビューを実施する際に、プロジェクトのステークホルダーが多い場合、全員がインタビューの現場に同席することは避け、プロダクトマネージャーやデザイナーのみが同席することが多いのではないでしょうか。
この配慮はインタビュイーの心理的安全を確保するためには適切ですが、反面、インタビューに同席できなかったステークホルダーは、ユーザーインタビューの結果を一次情報として受け取れない状態になってしまいます。

その状況を打開するべく、NewsPicksではユーザーインタビューの際にSlackのハドル機能を利用して、ユーザーインタビューのリアルタイム中継を実施しています。

詳細な実施方法に関しては以前私がnoteで紹介した記事を参照してください。


🌲 User Interview Thursdayの実施

プロジェクトのステークホルダーには「Slackのハドル機能を利用したインタビューのリアルタイム中継」でユーザーの声を一次情報として受け取れるような仕組みを構築していましたが、プロジェクト外のデザイナーメンバーから「ユーザーインタビューをたくさん実施しているのであれば、その内容や気付きをもっとオープンにしてほしい」というフィードバックがあり、新たな取り組みとして、過去のインタビュー録画を共有し、意見交換をする「User Interview Thursday 🌲」という場を定期的に開催するようにしました。

なぜ"Thursday(木曜日)"かというと、NewsPicksのプロダクト開発部署では毎週木曜日がNo Meeting 推奨日なため、「他ミーティングとの被りで参加出来ない」という状況が発生しずらく、誰でも参加しやすいので木曜日に定期開催することにしました。

さらに、昼休み帯に開催しているので、ランチタイム時に気軽に耳だけ参加することもできます。

開催はオンラインで実施し、「Slackのハドル機能を利用したインタビューのリアルタイム中継」と同じ方法で、過去のインタビュー録画を再生しています。
ハドルに参加しているメンバーはSlackのスレッド上で自由にコメントを交換します。

Slackのハドル機能で中継しているインタビュー録画をみんなで見ながらSlackでワイワイ会話

この取り組みを実施するメリットは、やはり"百聞は一見にしかず"で、人から「こういうユーザーがいました」と言われるよりも、インタビューしている様子を直接見てもらうことで、ユーザーに対する意識を強める機会を提供出来ることだと思います。


📣 「ユーザーインタビューの取り組み」ダイジェスト動画の作成

2023年下半期からトップダウンのリサーチプロジェクトとして、よりロイヤルユーザーの理解を深めるような取り組みが始動し、その半期の取り組み内容やインサイトを、"NPALL"というNewsPicksの全社会で発表する機会がありました。

ただ「こんな調査をしました」「こんなインサイトがありました」という報告をするだけでなく、よりユーザーひとりひとりの声をリアルに体感してほしいという思いで、「ユーザーインタビューの取り組み」ダイジェスト動画を作成しました。

❓ なぜNewsPicksを利用しようと思ったのか
❓ NewsPicksのコメントに感じる価値は
❓ NewsPicksの記事はどんなところがおもしろい
❓ どんな時にNewsPicksの番組を視聴している

などの質問に対してユーザーが回答してくれている様子をダイジェスト動画にすることで、クイックに、且つ、実感を持ってユーザーへの解像度を高めてもらうことができました。

見やすいように質問内容とその回答をテロップで入れました
zoomのチャットでもコメントが飛び交っていました

2. ナレッジをオープンにする

UXリサーチを実践したい!と思っても、

🤔 その過程で必要な手続きがわからない
🤔 なにから始めたらいいかわからない
🤔 適切なリサーチ手法を選択できない

など…着手するハードルが高いのも事実。
実践の際にはUX Research Unitメンバーである私や、リーダーが一緒に伴走するようなプロジェクトもありましたが、とはいえ2人(しかも兼務)体制なので、すべてのプロジェクトに関与することは難しい。

そこで、過去のリサーチナレッジを溜めていく場所としてNotionにリサーチリポジトリを構築し、ナレッジをオープンにする取り組みを実施しました。


🗂️ Notion上でのリサーチリポジトリ構築

近年?リサーチ界隈ではよく聞く「リサーチリポジトリ」をNotionで構築しました。

以下の方向性でドキュメントを整備&拡充していきました。

① リサーチ企画〜実行の際に使用できるドキュメントテンプレート
② リサーチ企画〜実行の際に必要なサポートが記載されているwikiページ
③ 過去のリサーチ企画やインタビュー議事録が一元化されているデータベース

wikiページとドキュメントテンプレート
過去のリサーチ企画やインタビュー議事録が一元化されているデータベース

リサーチリポジトリ構築に関する詳細は別途note記事を執筆中で、12/24(日)に公開予定です!


3. 活動に対してフィードバックを得る

「プロダクト開発におけるUXリサーチフェーズの併走をする」という主業務や「2. ナレッジをオープンにする」でご紹介してきたナレッジ共有の取り組みを経て、UXリサーチ実践における課題は払拭できているのか、フィードバックを得るために「インナーリサーチ」を下期に行いました。


👥 インナーリサーチの実施

インナーリサーチとは、主に社内メンバーを対象に、自組織理解を深めることを目的としてインタビュー等を実施する取り組みです。

今回はプロダクトマネージャーやグロース領域を先導するビズメンバーを対象に、UXリサーチを実践する上での課題や必要としているサポートはないかなどをインタビューしました。

UXリサーチを実践する上での課題としては主に以下4つの観点に関するインサイトが抽出されました。

😵 リクルーティングの難易度
例:インタビューしたいセグメントにリーチできない

😵 時間や人などのコスト面での課題
例:定性リサーチを実施するとデリバリーまでに時間がかかってしまう

😵 組織・権限委譲面での課題
例:UXリサーチの実施目的やインサイトの共有を他ステークホルダーに正しく共有出来ていない

😵 リサーチ手法の知識不足
例:なんとなく実践しているけど、これで正しいのか自信がない

必要としているサポートとしては特に「リサーチリポジトリで提供して欲しい情報はあるか」という観点でヒアリングしたところ、以下のようなフィードバックを得られました。

💡 過去のリサーチ企画の概要を一覧で知りたい
💡 リサーチ企画のオーナーは誰なのか知りたい
💡 過去のインタビュー議事録から会員ステータスや閲覧コンテンツの種別が知りたい

解決難易度が高い課題も多いですが、「リサーチ手法の知識不足」や「リサーチリポジトリで提供して欲しい情報」に関しては、得られたフィードバックを元に早速リサーチリポジトリ構築のカイゼンに繋げることができました。


UXリサーチモメンタムが"当たり前のこと"になるその日まで…

組織におけるリサーチモメンタム向上のミッションを背負っているUX Research Unitですが、「ユーザーのなぜを紐解く」ことが息を吸うように出来ていれば、極論、不要な組織なのかもしれません。

UX Research Unit 立ち上げ時の紹介スライドにも「なぜを紐解く」の言葉が

私自身、「ユーザー体験(UX)をデザインの力で変えたい!」という思いで、UI/UXデザイナーの道を選びましたが、とはいえ、日々のデザイン業務で着手すべきタッチポイントの幅が広がるにつれ、ユーザーのなぜに向き合うことからどんどん遠のいてしまう感覚がありました。

その感覚はデザイナーだけに限らず、プロダクトマネージャーやエンジニアであっても同様に感じている人はいるのではないでしょうか。

「そこに向き合いたいけど出来てない…。」という現状を打破するためにも、UX Research Unitがリサーチの取り組みに併走し、”Working Out Loud”の姿勢でUXリサーチモメンタムを先導し続けることで、「ユーザーのなぜを紐解く」ことが当たり前の組織を築いていきたいと思います。


🙋‍♀️ 採用募集中です

最後まで目を通していただきありがとうございました!

最後にお知らせです。
現在プロダクトデザイナーの中途採用がオープンしております!
NewsPicksのアプリを中心に、プロダクトデザイン全般に関わっていただけるようなデザイナーの仲間を鋭意募集中ですので、ちょっとでも「気になる👀」と思っていただけた方はぜひともカジュアル面談へのエントリーをお待ちしております🙌


明日はジーラムさんの投稿!
関わりを描いて醸すインタビュー×ファシグラ的な話」を投稿いただけるとのことで楽しみです👀

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