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いいことも悪いことも重なる

When it rains, it pours. 降ればどしゃぶり   

英語の格言

高校生の時ひたすら暗記した「基本英文○○選」という本にあった、謎の例文(当時の自分にとって)である。格言といっても、どういう教訓があるのかさっぱりわからない。友人に聞いても皆首をひねるばかりである。

わかったのは、働くようになってからのことだ。難儀な仕事を抱えている時に限って、トラブルが起きたり、家に帰れば冷蔵庫が壊れていたりする。二つならともかく、三つとなるとお手上げだ。なんでいつも重なってくるんだ、これがばらばらに来てくれたら・・・と考えていた時、「降ればどしゃぶり」が浮かんだのである。

悪いことばかりではない。今日帰ったらあれを食べないと、というような時に限って、職場で「今日中に食べてね」という珍しいお菓子をもらう。そこに突然、賞味期限の短かい大好物が届いたりするのである。これがせめて一日でもずらしてきてくれたら、と痛切に思う。要は、いいことも悪いことも、来るときは一度に来る、という教えであった。

いいことは一度に来るとうれしさが増幅されるが、悪いこと、特に対応を迫られるような出来事が集中すると、しんどさが膨れ上がる。個人の能力や持ち時間には限りがあるので、一つ一つなら十分対処できるような問題にも満足な対応ができなくなる。あるいは無理をして消耗する。それを学習しているが故に、それなりの労力を要することが一時に起こると、頭の中で警報が鳴り始めるのである。

そこで「なんでこんな時に! 」と逆上すると、処理能力はさらに低下する。判断を誤ってさらなるトラブルを招くこともある。そう言いたくなった時、あるいはつぶやいた後ででも、「降ればどしゃぶりやな」と唱えてみる。すると、ちょっと人ごとのような気分になって、多少なりとも冷静になれる。「なんで」ではない。世の中そんなものなのである。そこで「なんで」にとりつかれると、見えるものも見えなくなる。それを当事者にぶつけるのもお勧めしない。私はよく病気をする子供で、熱が出た時などに母から、「あんたはなんでこの忙しい時に!」と罵られるのが本当に悲しかった。

先般その母が入院し、大きな仕事が暗礁に乗り上げ、そんな時に限って。(2021.3→2024改)

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