努力よりも工夫
不思議なタイトルのこの本、帯には「最初の会社をパワハラで退社した芥川賞作家と、150社以上就職活動と転職活動をした経験をもつコラムニストが、世間知らず・不器用・KYなままでも、なんとか社会で生き延びていくための技術を語り尽くす。世の中をすいすい渡っていけないことに悩む、すべての女性に捧ぐ。」とある。目次を見ると、
「わかりやすい恩人」「わかりにくい恩人」
他人を使ってガス抜きするやつから逃げろ
「メンタルから変えていく!」じゃなく、ペンを変える
等々、ちょっとした名言集である。
「適性」「工夫」「風向き」でなんとかしのいでるだけ という章では、工夫は大事だ、という話になる。
深澤氏によると、工夫して失敗するのは使うアプリを間違えたようなもので、「このアプリではうまくいかなかった」と思えるが、努力して失敗すると自分の本体自体がダメな感じに思えるということらしい。「女性ってあんまり工夫マニアにならなくて、がんばり屋さんとか努力家さんに向かいがちなんですけどね」ともいう。たしかにその通りだ。もっとも自分は、「楽をするための努力は苦にならない」工夫マニアである。日常の生活に創意工夫が見られ云々という調査書の一文を、そんなことが評価されるのか、という驚きとともにいまだに覚えている。
それにしても、努力と工夫の違いなど考えたこともなかった。努力が「報われる」という言い方は、評価してくれる誰か、あるいは得られる何かの存在を暗示している。つまり自分以外のものが成功か失敗かを判断するのである。しかし工夫は「自分だけのための」改良であるから、成否を判断するのも自分自身になる。
かように努力と工夫は似て非なるものであるが、努力と「やる気」には通じるものがあるらしい。
努力したがためにはしごを外されてはたまらない。工夫は裏切らない(努力は裏切ることも!)、とは言い得て妙である。 (2020.8→2024改)
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