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行動を変えることで伝える

「いつか、ある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。たとえば、こんな星空や泣けてくるような夕陽を一人で見ていたとするだろ。もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどんなふうに伝えるかって?」(中略)
「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって・・・その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって」

星野道夫「もうひとつの時間」

星野さんが友人とアラスカで満天の星を見ていると、その友人が「これだけの星が毎晩東京で見られたらすごいだろうなあ・・・(中略)一日の終わりに、どんな奴だって、何かを考えるだろうな」と言い、星の美しさを人に伝える方法を尋ねた。上にあげたのはその答えである。

これはおそらく美しさだけの話ではない。伝えたいことは感動とは限らない。たとえば自分の気持ちにしても、言葉で伝えるよりも自分の行動を変えることの方が相手に響いたりする。言葉で表す方が簡単だとか安直だとかいうことではない。行動は、借りてくることも誰かに代わりにしてもらうこともできないし、それなりに自分のこととして消化されていなければできない。

何かを相談されて、実行可能な解決策を提案したとする。「いい提案だったよ」という気持ちが伝わってくるのは、お礼を言ったが何もしない人ではなく、大した反応がなくてもその通りに行動した人の方だろう。

伝えたいことがあれば、行動を変えてみる。今までと違うやり方をするとか、それまでしなかったことをするとか。そもそも、目的は言葉を伝えることではなく、こちらの思いを相手の心に届けることである。

伝えられる側にしても、言葉だけで判断する、あるいは言葉に注目するあまり行動が目に入らない、というのは間違っている。若い頃はそのことに気づかず、教えてもらっても聞く耳を持たなかった。身近な人の言葉に落ち込んで、うんと年下の男の子に「言葉にいちいち反応するんですか?」とたしなめられたこともある。その時は「だって心にもないことは言わんやろ」などと反論したが・・・Nくん、あなたの言った通りでした。(2020.11→2024改)

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