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小説 本好きゆめの冒険譚 第五十四頁
ゼウス召喚から、人間の世界で半年が過ぎた。
この半年で、色々な事が出来るようになった。
ゆめはゼウスに、色々な物を「吸収」させた。
先ずはこの世界で吸収し、同じ世界で場所を移しての「召喚」。
それが出来るようになれば、本の世界で召喚。
「吸収・召喚」は、初めは生命の無い物(コップとか)から始め、生命の有るものへと、レベルアップしていった。
勿論、「何もない空間。」にも、召喚が出来るようになった。
そして現在…。
「何もない空間。」が、物で溢れかえってる!
植物、家具、食料品…
ヘーラーの頭の上でカエルが鳴いている。
最初に、良いよって許したものだから、文句は言えない。しかし、物が多すぎる!
ゼウスの能力を持ってすれば、消す事は簡単なのだが、ゆめの泣く顔は見たくないし、なにしろヘーラーが怖い…。
流石に、動物園のトラを持ってきた時は、返してきなさいと諭したのだが…
ゆめが、やって来た。
すぐに抱きつくヘーラー。
儂は、恐る恐るゆめへ言ってみた。
「この空間を片付けてはくれんかの?」
ゆめの顔をチラッと見ると、意外にゆめは、にっこり笑って許してくれた。
「ゼウス、お願い!」
「畏まりました!ゆめ様!」
「ゼウス」が本を開くと同時に、この空間にある全ての物がゼウスの中へと吸収されていった…。
ゆめの住む世界、ゆめの家にて…。
「パパぁ〜ママぁ〜!」
「どうしたの?ゆめ。」
「お父さん、お母さんに会いに行こう!」
「出来るようになったのか?ゆめ。」
「うん!」
土曜日。「神々に会う当日」
おじさんも連れて行って良いとのことなので、呼ぶことにした。
「それで、どうやって、いくんだい?」
「簡単だよ!」
「神様に会うということは、死んだ時しかないと思うのだけど…。」
「大丈夫。ちゃんと生きたままで会えるから。」
ゆめが「ゼウス来て!」と言うと、ゆめの中から一冊の本が現れた。
その本は、中を浮き、フワフワと飛んでいる…。
「パパ、ママ、そして、おじさん!」
「紹介するね、この子の名前は、ゼウスって言うの。」
「皆様、初めまして。私の名はゼウスと申します。」
流暢に、「ゼウスと言う名の本」が喋った。
「みんな、準備はいい?」
「ああ、ゆめのタイミングでいいからね。」
「分かった。ゼウス、お願い!」
「はい、ゆめ様!」
一瞬で、3人はゼウスの中に吸収された…。