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小説 本好きゆめの冒険譚 第五十二頁
ゆめの部屋。
「帰ってきたものの、何からすれば…。」
「お父さんは、万能本を出す所から始めろって、言ってたけど、本当に出来るのかな〜?」
「でも、お父さんは「神様」だもんね。嘘は言わないよね。」
ゆめが帰る時に、お父さんがまた、槍のハシッコを、私の頭にコツンと当てたけど、何のことやら…。
とりあえず、「万能本」をイメージしてみる。
何の変化もない…。
そう言えば、最近「万能本」の姿を見てなかった。身体の中にしまったままでも出来るようになってから、出す必要なくなったんだっけ…。
とりあえず、「北風と太陽」の本の中へ・・・
「荒野」に降り立った。
「万能本」を召喚するには…何かを写す時に出てきたのよね…。
そこで、「いつものサボテン」の登場。
「ごめんね、いつも練習に付き合わせて。」
サボテンに謝りながら、練習を始める。
一瞬でサボテンが消えた。
「今は、サボテンの前に「万能本」を出したいの!」
一瞬でサボテンが現れた。
「やっぱりここは、魔法少女っぽくやってみよ!」
色々なポーズ、呪文をキメてみるも、何の変化もない。
「召喚の時の呪文を唱えればいいのかしら?」
定番は「いでよ!○○!」。は、恥ずかしい。
でも、やってみるしかない。
ゆめは、全開の恥ずかしさを抑え、唱えた。
「いでよ!万能本!」
すると、「万能本」が、フワリと現れた。・・・恥ずかしい!
天空から、お父さんの声がする。
「万能本の召喚に成功したみたいじゃな?」
「うん。でも、恥ずかしい…」
「そりゃ、そうじゃろう、いでよ!万能本!ププッ」
「お父さん、今、笑ったよね?」
「笑っとらん。」
「その本に「名前」を付けとらんのじゃろう?」
「名前って、付けるものなの?」
「ああ、その方がやりやすいし、いでよ!って言葉も不要じゃから、名前を呼ぶだけでよいぞ。」
「名前はなんでもいいの?」
「あぁ、ポチでもタマでも、何でもよい。」
「お父さん、私、私ね…!」
「良い名前が浮かんだのじゃな?」
「お父さんの名前がいい。」
「わ、儂の名前?」
「うん。」
「この、全知全能の神の名前を本にか?」お父さんは、何故だが嫌そうな声をだす。
「だって、この力は、お父さんがくれたものだし、ある意味全能だし…。」
ゆめは、ぽつりと言った。
「いつも、お父さんと一緒に居たいから…。」
この言葉に、全知全能の神ゼウスはK.O!ゴングの音がカンカンカーンと天空に響く!
「そういう事なら、許してやろう。」
「本当?お父さん、大好き!」
「ゆめちゃん、私は!?」
ヘーラーの声が天空に響いた。
フワフワ浮いている「万能本」に、
「あなたに名前を授けます。あなたの名前はゼウス。」
すると、万能本から、強い光が溢れ、ゆめの手の上に降り立った。