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小説 本好きゆめの冒険譚 第四十六頁
暗い部屋の中から小さな光が出てきた…
その光は大きくなり、やがて部屋全体が光に照らされる。
光は人型に変形し、静かに消えて行った…。
そして、少女の姿がそこにある…。
「久しぶりに帰って来たような感じがするわ。」
時計を見ると止まったまま
あっ、何かを思い出したかのように
少女は、パンッ、柏手のように手を叩く。
時計が動き出した…。
「これで、止まってた時間も、元通り!」
ゆめは、ベッドに潜り込んだ。
「何もない空間。」では、「睡眠」と言う概念はない。
「久しぶりのベッド〜♡」
ゆめは、ゆっくりと眠りについた。
朝、目を覚ますと、いつものようにリビングへ。
そこには、いつものパパとママの笑顔があった。
ゆめは、ほっとした。
分かっていても、「何もない空間。」に1年もいたので、気になっていたのである。
「おはよう、パパ、ママ。」
「おはよう、ゆめ。」
いつも通りである。
ゆめは久しぶりにパパとママに会えたのが、嬉しかったのか、
「ねぇ、パパ」
「ないだい?ゆめ。」
「ううん、なんでもない。」
「はは、変なゆめだな〜」
と、ゆめの頭を撫でる。
そんな事を繰り返した。
「さぁ!朝ごはんを食べて元気になりましよう!」
ママが、朝ごはんを出してきてくれた。
「ママ、今日の朝ごはんは何?」
「今日はね、朝からハンバーグです!」
「「え?」」っと、驚いていると、ママがクスッと笑って
「安心して。豆腐のハンバーグだから!」
お皿に、少し小さ目のハンバーグ。マッシュポテトに枝豆サラダ、コーンスープ。フランスパンがテーブルに並べられる。
3人での、「久しぶりの」食事。
笑いながらの食事。
今のゆめには、幸せな時間と思えてならない。
「あのね、」
「どうしたの?」
「今日、皆でお出かけしたいの。」
「どういうことかな?」
ゆめは、昨日の夜から1年間、神様の所にいた事、私にはこんな力がある事、ポセイドンと言う人に会った事を話す。
「だからね、今日、パパとママに会えて、私、とってもうれしいの。だから今日は、ずっと一緒にいたいの!お願い!」
パパとママからすれば、時間など経っていないのだから、何も変わらないのだが、ゼウスに会ってしまった以上、納得をせざるを得ないし、今度は、「ポセイドン」?また、大物と会ったんだなと言う事にも、興味もあったので・・・。
「わかった。ゆめの言う通りにしようね。」
と、パパはゆめを抱っこしながら応える。
泣きそうだったゆめの顔は嬉しそうな笑顔に戻っていた。
「じゃあ、今日はドライブにでも行こう!」
「やったー!久しぶりのドライブ!」
「早く、ご飯を食べよう!ゆめ!」
「うん!」
「ご飯は、ゆっくりと食べるもんです!」
ママが注意した。
「お弁当、作らないとね!」
ママは、張り切ってキッチンに戻る。
「それで、ゆめは何処に行きたい?」
「海!」
「よーし、行くぞ!」
「オー!」
ふたりは拳を突き上げた。