
小説 本好きゆめの冒険譚 第十五頁
ゆめの突然の言葉に2人は、目を丸くした。
パパは、読んでいた新聞をテーブルに置き、少し焦ったように聞いてきた。
「ゆめ、ゼウスって人にあったの?どこで?」
「うん。夢の中であったの。」
「何か言ってた?」
「私がゼウスって人、知らないって言ったら、パパとママに聞くんじゃと言ってた…。」
「・・・・・!」
「ちょっと僕、役所に休むって、電話入れるわ!」
「私も、学校に今日はゆめを休ませるって、電話入れるわ!」
「あっ、アイツにも仕事が終わったら家に来るように連絡入れなきゃ!」
2人が慌ただしく動いてる。
今日の朝ご飯は、焼き立てのクロワッサンにスクランブルエッグにソーセージ、冷たいコーンスープ、シーザーサラダ・・・。
私は、そんな2人をよそに、ゆっくりと朝ごはんを楽しんだ。
少しだけ時間が過ぎて…
パパとママが、コーヒーを啜っている。
静かな時間だけが流れていて・・・
パパが顔を強張らせながら、
「ゆめ、本当にゼウスって人にあったんだね?」
「うん…。」
「他には、どんな事を言ってたのかな?」
「儂等を元に戻してくれって、言ってた…。」
・・・ゆめが会ったというのが本当ならば、とんでもない人物だぞ。
全知全能の神「ゼウス」。誰もが知ってる名前。
あっそうか、まだ、ゆめにはまだ教えてなかったっけ…。
・・・確かにゆめには、ギリシャ神話は教えてない。だから、ゆめの口からゼウスの名が出るはずもない。
それにしても「神話」って、事実を書いたものなのか?単なる物語に過ぎないと思っていたが・・・。
しかし、その神様が「儂等を元に戻してくれ!」と、何故、ゆめにお願いする?彼は全知全能の神だぞ!
そう、思いながらも、ゆめの話を聞くことにした。
「他に、何か言ってたかい?」
「あのね、私に「桃太郎」の噺をしろって言うの。それで話したら、「違〜う!」って、言われて…」
あの、「カスタム桃太郎」の噺の事かしら?と、コーヒーを持つ手を止めて、ママが聞いてきたから、そう。と答えた。
「桃太郎?どういう事?何の事?」パパは「?」と首を傾げる。
昔から桃太郎の噺をする度に、おかしなリクエストが入って来て、それに合わせて噺を変えていったら、桃太郎と言う名前以外は全部違う噺になってしまったと言う事、昨日、久しぶりに桃太郎の噺をした事を、ママがパパに伝える。
「桃太郎とゼウス、どういう関係なんだ?」
腕を組んで考えるも、まるで接点がない…。
「僕、図書館に行って調べてくるよ!」
と言い残すと同時位に、エンジンの音がした。